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2-8 同族殺し

なんだかんだ言いながら色々やってると12月が近くなりました

言ってる間に正月ですね


「今日は…休みだー! やったぜぇ!!!」



ここにきて初めての休みをゲットしたのよ。

私、神前瑠香は休みがもらえてすごくハッピーです!

今まで、まあ耐えたなって沖田専任助教には嫌味っぽく言われたけどね!

まぁ、休みだけどまだ外に行くのは禁止されてる。





『いつお前を狙う者達が来るかわからん』

 



という理由で田中3佐に外出NOを言われてしまった。

それでも訓練のことを忘れることが出来るからいいのだ!

だけどなんでこうも…



「私のことを監視するように沖田専任助教がいるんですか?」



女性隊舎の入り口の壁に寄りかかる不機嫌そうな顔をした沖田専任助教がいた。

迷彩の上着を着て下はジャージにスニーカー

迷彩帽も被って素敵ですね

自衛隊名物ファッションのジャー戦。

神前もジャー戦なうなんだけど…


それよりなんでここにいるのですか?





「訓練がいやで脱柵するかも知れんだろ?

わざわざ来て見に来てやってんだこの野郎。」


「すいません、ありがとうございます。」





めちゃんこ嫌なこと言ってくるな沖田専任助教。

脱柵なんて…脱走なんてしないのに。

確かに訓練はきつい。

この前を背嚢っていうでかいリュック背負ってハイポートをした。

息ができなくなるくらいキツくてたまらなかった。

でも逃げたら弱い自分に負ける気がして逃げなかった。

それが当たり前なんだろうな。






瑠香、あなたは特別すごい子よ。

レンジャーとしての素質も何もかもあるわ。

それが危険なのよ。

きついことを言うけど許してちょうだいね。

あいつに魅入られた…

あたしの可愛い教え子に悲しい思いはさせたくないの!







え?

またこの感覚だ!

沖田専任助教の声や想いが私の心に流れ込んでくるように聞こえる!

なんだこれ?

それにあいつに魅入られたってどう言うこと!





「何か顔についてんのか?」


「何もないです…すいません」


「だったらぼーっと見るなよ」




ごめんなさい。

本当にすいません、とまぁ言えたら最高なんだけど

これ以上は沖田専任助教の圧が怖いからやめ…

何この感じ…

ずっと嫌な感じがする

見られてる、それならまだいい!

値踏みされてる?

値踏みじゃない、どちらかというと取り込もうとする感覚に似てる。

その中に殺気のようなのも混ざってる

私に対して殺気を立てていない…

まさか沖田専任助教?





「何をやってるんだ、売店に行くんだろう?」


「…レンジャ…」



フンって笑った沖田専任助教の顔を見た瞬間に私の背筋はぞくりとした。

普段は怖くて表情も変えずに淡々と訓練中に暴言をは

くあの沖田専任助教ですらこめかみに脂汗を浮かべている。

殺気を立てている主に警戒してる?

一体何を沖田専任助教は知ってるの?!

待って、これって前に食堂で言われた言葉が…







『なぁ、聞いたか。3中隊がやられたそうだ』


『エリート揃いだって聞いたんだがダメか』


『あの噂は本当だったんだ』


『次に狙われるのは俺たち1特科か?』


『いや、田中のじぃちゃん若いやつって噂だ。』


『最近入ってきたあの子か!? 可哀想に』



神前だったか?

同族殺しに気を付けろ。

やられた時は…諦めろ。





ようやくわかった

沖田専任助教が何を恐れて何に警戒しているのか。

嫌な脂汗をかいたのも。

素っ気ない態度をとっているのかも…

やたらときつい監視のようなことをしてくるのかも

ここから立ち去るように催促するのも




私のすぐ近くに同族殺しがいるからだ!

なんでこんな簡単な事に気がつかなかったんだ!




心なしか沖田専任助教の血色が悪くなっている気がして仕方がない。

女性隊舎から離れて売店に向かって歩き出した。

心なしか歩くスピードが速い。

今にも逃げたい証拠なのかも…




「着いたぞ…とっとと買いに行けよ。」


「レンジャ」



売店に着く頃には嫌な感じは消えていた。

沖田専任助教の顔色も元に戻っていつもの鬼教官みたいな顔して…ないわ。

売店に入ってチョコレート菓子を二つ買って外に出よう。

でもこの駐屯地の売店はとても大きくて品揃えがいいのよ!

爆買いするわけにはいかないし、誘惑が沢山あるのよね。




「あ…アイス食べたいぃぃ!」

 


売店は広いしお菓子もたくさん。

そして新作のアイスがまぁあるんだよなぁ

たまらんぜ!

だけど今はダメだ…

必要最低限だけにしよう。

半長靴に入れる中敷と靴クリーム、チョコレートを買って私は売店横のフリースペースに入る。

ここでは飲み食いが普通にできるから沖田専任助教が

いない間に食べよー






「神前、お前菓子食ってたのか?」


「レンジャ!?!?!?」


「いいよ…今は休みだし…ほらよ。」


「これって、さっき私が見ていた新作のソルティキャラメルアイス!!!?」


「まぁあれだ、お前がいつも頑張ってるからな…

やるよ。」





テーブルの前にアイスが置かれて嬉しくて顔を何度も見てしまう。

いつもの鬼教官の顔は消えて節目がちになって私から目線を外す。

心なしか照れているというかすこし恥ずかしそうにしてる。

え、可愛いんだけど。

今ので沖田専任助教に対するキュンキュンレベルがブッチ切って好きになりそう。

まぁ結婚してるんだよなー

左手の薬指に指輪してるし…




「神前…

俺はお前に期待していないと何度も言っているよな…」


「レンジャ」


「だが、俺や小野・佐藤。

いや練馬にいる人間ほとんどと言っていい。

神前を注目している」


「レンジャ」


「お前なら、何かを変えてくれるんじゃないかと」


「え?」


「どんな固定概念でも潰してくれるとな」


「それって…?」


「このレンジャー教育が終わってから言うつもりだったんだが。」






俺たちの世界に入ってきてくれてありがとう

俺たちはお前を歓迎している。

今後もきつくて苦しい訓練があるが一緒に頑張って行こう。

俺たちの大切な可愛い瑠香(いもうと)だからな…

絶対に俺たちはお前を見放さない

嫌なことがあればいつでも言って欲しい

本当はとても期待している。

仲間としてお前を愛している






なんだろう

すーっとの心の中にある何かが溶けていく感じ

心の中にあるよくわからない黒くて冷たい何か

ずっと小さい頃からある何かが今の言葉で溶けていくような感じがした。

沖田専任助教もいつも鉄仮面なのに優しい笑顔がすごく暖かいよ!







「泣くな神前。

レンジャーはどんな状況でも泣くことは許されないんだぞ」


「レン…ジャァ」


「アイス食え。

じゃないと俺が食うぞ?」


「いただき…ます!」




ちょうどいい加減にとろけたアイスが美味しくてたまらなかった。

隣で同じ味のアイスを食べる沖田専任助教の笑顔を相待ってかな。

優しいキャラメルとバニラの風味がさらに包み込む甘さになって私の心を包み込んでくれた。

そんな優しさに包まれていたかった





「お疲れ様です沖田二曹です。

おじいちゃんどうした?」



沖田専任助教は携帯を片手に誰かと電話をし始めた。

遠くから聞こえてくる声の主は田中3佐?



「本当ですか!?

まずい…

わかりました、今すぐに」



沖田専任助教が私の顔を見た時背筋が凍りついた。

凍てついている

恐怖と焦燥で目が血走っていた。

身体中の血液がストンと落ちていった。




「神前悪いが女性隊舎に今すぐ戻れ!

俺はいかなくてはならないところができた」


「へ? れ…レンジャ?」


「ゴミは俺がやっておくから急かすようで悪いが行け!」




訳のわからないまま外に放り出された。

入り口を見ていたときに売店にいた隊員がわらわらと出てきて沖田専任助教と何かを話している。

何かあったのだと思っていたが一斉に私のいた入り口と反対の入り口を抜けてどこかに消えていった。




「一体なんだってばよー」



走って隊舎に戻っている最中だ。

いつも見えているグラウンドの入り口が目の前に見え始めた。

グラウンドの周りには桜の木とちょっとした生垣みたなものがある。

その生垣がいつも見ているグラウンドの目印みたいなものだ

だからいつも見ている風景と変わらな…





「あれ?こんな丸太あったかな?」




入り口から入ってすぐのところにポツンと丸太があった。

でもいつ丸太が設置されたんだ?

なんで縦向きにおいてある…

叩いたのかよくわからない跡が付いている

しかもつい最近着いた様なものじゃない!





ぎゃあ!


ぐぁ!


オゥェ!




バキ!


ドス!





何このテンプレ的な喧騒

グラウンドの奥に大勢の人間が立つまた一人の隊員に倒されている様子が見えた。

たった一人残されて挑んでもその人も…倒れた。

やばい、沖田専任助教もこれを知って私に戻れって言ったんだ!

遠くから見ていてもわかる

異常だよ!






「弱い…弱すぎる。 

甘ったれるな、それでもお前らは一特科か?

ふざけるな…」




しんと静まり返ったグラウンドに男の人の声が響いた。

どこかで聞いたことのある声。

聞きたくない声だ。

嘘であって欲しい、なにかの冗談だと言って欲しい。

なんで…なんでこんなことになってるの?

どうして?





「あ…あ…あああ。 うっ、ウヘェ!!」




身体中が逃げろと警報を鳴らしているのに動けない。

もうすぐそこにこの光景を作った犯人がいる。

1特科の人たちをたった一人で倒した隊員がいる。

それなのに動けないんだ。




「うぅぅ、俺たちは…1特科。

こんな…ところで、やられてたまるかぁ!!」




一人の隊員が犯人に殴りかかった!

いける!

そう思ったのに…

お腹に蹴りを入れられてまたうずくまって動かなくなった。




「……。 つまらん」




ダメだったんだ。

そう気がついたときには私はグラウンドの入り口まで後退りをして尻餅をついていた。

もうダメだ。

次は私の番だ…






「やめて…こないで…!」



襟首を掴まれた感覚を感じ状況がうまく飲み込めない。

気がついた時には私は地面に伏せられてその上から優しい梅の香水が鼻腔をくすぐった。

顔をあげるとそこにいたのは尋常じゃないほどの汗をかいた田中3佐だ。




馬鹿者(デレスケ)!

ワシがいいというまで顔をあげるな!」



「3佐…痛いです」


「良いから黙ってろ!」




じりじりと音を立てて犯人がグラウンドの入り口まで来ている。

音は止まって静寂だけが流れた。

だけど3佐の心音が激しくなっている。





「邪魔しやがって…だがもう良い。次は…お前だ

神前瑠香二等陸士

お前の自信や誇りそして何もかもを潰してやる

お前なら可愛く踊ってくれるな?」





そう言って犯人はどこかに消えた。

値踏みされていた感覚が不意に蘇ってくる。

一体…今のは?



「行ったか…しかし厄介なことになった」


「今のは…」


「あれが同族殺しだ…

神前よ、自衛官は銃火器がそこを着いたら最後は殴り合いで決着をつける

だから格闘は必要なのだ

だがのあれは、異常よ」



「何もできなかった。

1特科の人たちを守れなかったです

私は…」


「いつもの訓練に続いて格闘訓練を行わないとな…

だがその前にだ。

怖かっただんべい?辛い思いをさせて許してくだっしょ」




ゆっくりと田中3佐に付き添われて私は女性隊舎に戻った。

憔悴しきった私を見て村上3曹は部屋まで運んでくれたみたいだ。

もうそこからは何も覚えていない。

まさか犯人が私の大好きでたまらない…








大島一等陸曹だと思いたくなかった。











数日前

レンジャー塔における訓練にて…



「瑠香のやつ…最近レンジャーらしくなってきたな

お、合図はいいから行ってこいって。」


「やっさしいね、小野っちは」


「うるせー、サト。」


「まぁ、あたし達のしごきについてこれて嬉しいわね。」


「…!?。 沖田二曹、どちらにいたんですか?」


「え? トイレしてタバコ吸ってたわ」


「なるほど」


「まぁ、このまま踏ん張って……。な!」


「どうしたの?…小野ちゃ?」


「まずい…まずいまずい!」


「どうしたんだよ、小野っち?」




瑠香が、魅入られてしまった。

あいつが…あいつが!

同族殺しがこっち見て笑っていやがった。

甘ったるいくらいにねっとりとした。

そして獲物を物欲しそうな顔してみてやがった。

まずい、近いうちに飲み込まれる!

瑠香を守らないと食い殺される!

今回は心温まるかなーって思った瞬間に精神えぐられる話です。

瑠香にとって大島一等陸曹は大切な人でそんな人が誰かを傷つけてその上宣戦布告してるので相当なストレスだと思います


次回はそんな大島一等陸曹と瑠香の絡みを書きます

大島一等陸曹の秘密が少しだけ露呈します

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