15-10 陽は昇る
もうすぐ春になりますね。
というか春になりました!
「武器、弾薬はもうない
狙うは俺たちか!」
殺意の塊がむせ返るくらいにこっちにやってくる!
追い落としたはずの翼者まで海から登ってきたってのか!
今はもう逃げるしかないのか。
いや、ここで逃げたらもっと悲惨なことが起きる。
逃げるな…戦え!
『遅くなって許してくだっしょ!
もう1人にはしねぇからな!
前方の敵…撃ち方始め!』
私は何か夢を見ているのか?
田中2佐の声が空から聞こえてきたと思ったら、悠々と空を飛ぶUH-1からの機銃攻撃が目の前の敵を潰している?
海から競り上がってきている奴らも、全部駆逐されていっているし。
ヘリが一機だけホバリングして…目の前に降下ロープが垂れてきたってことはもしかして?!
「遅くなって許してくだっしょ!
ほら、みんな来たぞ…上を見てみなさい」
空から赤い蒸気のようなものを濛々と立てて、1人また1人と降りてくる。
こんな芸当ができるのは、即応強襲のみんなしかいない!
いや…他にもどこかの部隊まで来ている?
なんか全体的にむさ苦しい。
即応のみんなと違ったむさ苦しさがある。
待てよ、こんな筋肉すごすぎて頭おかしくてむさ苦しいの集まりって。
完璧ですね、空挺団です!
「久しぶりだな、遅くなってすまんな
それにしても、ここまでよく持ち堪えてくれたよ
…お久しぶりです、財前大隊長!
いや…ボス!」
「大林教官…小島助教…みんな!
「大林か…見ないうちにいい顔をするようになったな
まぁ役者は揃った
掃討開始とする、迷わず撃て!」
身体が振動で包まれて、目の前に見えるのは幾万もの閃光とけたたましくなる銃声。
周りの全てを潰して消すまでの圧倒的な力。
一つの力では到底消せなかった翼者も、力が集まればチリになる。
私が握っていた銃も…改めて気付かされた。
でも翼者に組み込まれた人が助かる方法は、この人たちを殺すことになるとは皮肉だな…。
「瑠香よ、忘れるな
人を撃つ…人であったものを撃つ辛さを
だが、お前は皆を守ったのだ
変異した坂口団長の事も忘れるな
ほら…もうすぐ夜が明けるぞ」
「はい…」
最後に抵抗してきた翼者が動かなくなったところで何も聞こえなくなった。
シーンと静まりかえる空間に荒く仲間たちの息が聞こえる。
空挺団のみんなが団長に集まっている。
けど団長の息が弱くなっているからなのか、ヒューヒューって音がする
けど真相が明るみになるまでは、死なないでください。
日が昇る…どうか被害者の無念が晴れてほしい。
今は…ここで…
「怪我だらけでよくここまで持ち堪えたものだ
さすが…俺の娘だ
失神させるくらいみんな疲弊させてしまった
帰ろうか、練馬に」
煮え切らない最後になります。
最後に救援が来た事で残りを全て殲滅することができたのです。
瑠香の母親を殺した坂口が生きていた事で闇の一部が明らかになってくれると思います。
そして後日談になっていきます