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2-7 訪問者

もう十一月の中旬です

いやー速いなぁ

あったかい部屋でのんびりしまそ

その日、神前瑠香は走っておりました。



89式小銃を持ってハイポート



きついけど慣れたんだよ。

頭おかしくなりつつあるね!

完全に理解した(全く理解していない)!

まぁ走るのはいいんだけど…

なんだか…私を囲む先輩の数がやたら多いんだよなぁ

朝に特科の人が話していた事と関係大アリかな






今日の朝、食堂の空気が変に悪いところから始まる

なんか変だなーって思ったのは入ってすぐに感じた。



『朝ごはんだぜ、ヒャッハー!』



と思った私の前にいた人たちの顔が暗かった。

前の日、飲みすぎたのかなって思ったらずっとやばいって口々にいう始末。

盗み聞きしたら大変なのはこの人たちじゃなくてこの駐屯地全体がそうらしい。





『なぁ、聞いたか。3中隊がやられたそうだ』


『エリート揃いだって聞いたんだがダメか』


『あの噂は本当だったんだ』


『次に狙われるのは俺たち1特科か?』


『いや、田中のじぃちゃんの所の若いやつって噂だ。』


『最近入ってきたあの子か!? 可哀想に』




なんかすごいなーって思いながらテーブルに置かれているひじきの佃煮をお皿に盛ろうとした時だっけ

私に気がついた陸曹が辛そうな顔をしてこう言った。





神前だったか?

同族殺しに気を付けろ。

やられた時は…諦めろ。






ドウゾクゴロシ?

何すかそれ、美味しいんですか?

本気でそう返答したらそれだと良いんだけどなって言われたよ。

早速私の大好きな村上3曹に話したら血相変えて向井一尉のところに行って何かを話していた。

そして今のハイポートの現状に通じる。




ピィィィィィィィィィ!!!!!




一番聴きたくない号的が響いた。

レンジャー名物次の号的がなるまで永遠と全力疾走。

最初に銃なしでハイポートをやったところ今は違う。

確かに銃の重さで腕の感覚は麻痺してる。

だけど少しほんの少しでも酸素が入ってくる。

もつれそうになっていた足も少し前に行く

それでも毎日やって休みがない分きつい!




「それでも走ってるって言えんのか!?

お前の足はちょっとしか出ないんですかー?」


「怠けんじゃねえよ、船橋に返すぞぼけ!」


「そんなにトロいと戦闘隊が負けんだぞ!

死ぬんだぞ!!」





レンジャー!




前言撤回

自衛隊名物、声出して走る!

レンジャーレンジャー言いながら

たまに罵声が飛んでくるよ。

メンタルゴリゴリ!




「最近、自主トレしてるからって調子乗んなよ!」


「できること増えてきたって言ってもクソほどだからな!」




小野、佐藤陸士長コンビがギャアギャア言う。

不思議とこいつも慣れてきた。

やっぱり頭おかしくなったな。



ピーーーーー。



長い号的が、鳴り響き先頭を走っていた田中3佐がゆっくりと歩き始めた。

それにあわせて伴奏していたレンジャー隊員たちも歩き始める。

長い戦いが終わった…



「と思ったか神前よ? 今から結索及び救助法の訓練だぞ?」





うわぁぁぁぁぁぁ!!(実際は叫んでいません)



救助法

簡単に言ってしまえば救助するやり方

この前身投げした高台ことレンジャー塔で行う訓練の一つ。

やり方は担架に要救助者や負傷した仲間を乗せてロープでくくりつけて地べたに下ろす訓練。

チームワークがないとできない。

今回、救助者役は向井一尉。

ロープで固縛したり地面に下ろすのは私1人でする。

佐藤・小野陸士長コンビがサポートしてくれる。

プラスして罵詈雑言浴びせてくれるって!

手厚いね!




「頭爆発案件だなーこりゃ。」




レンジャー塔で訓練の準備を始めていた時だ。

要救助者役の向井一尉が時間になってもこない。

それどころか今まで罵詈雑言浴びせていた監視役の沖田二曹がいない。

間違えた、沖田専任助教だ。

一番新隊員を指導する人のことを専任助教って言うんだけど。

いないんだよ、その沖田専任助教。




「あの、神前さんはここにいますよね?」


「あのどちらさんですか? ここに入る許可は取ってますか?」


「それは…取ってません。 でも彼女に会いたいんです!」





聞き覚えのある声がレンジャー塔の方まで聞こえてきていた。

駐屯地にいる広報官の人と向井一尉と一緒に見覚えのある姿が見えてくる。

知り合いか?と佐藤陸士長が聞いてきて首を縦に振った。




「化け物に襲われて動けなくなった子です」



私がここに来るきっかけとなった空飛ぶ化け物が襲ってきた事件で私と一緒に教室でうずくまって逃げ遅れた子。

噛み砕いて言うと、私が助けた?同級生だ

確か名前は…牧野えみりさんだったかな?

なんで駐屯地にいるんだろう?

むっさ苦しい所になんで?






「お礼を言いたくて…助けてくれたお礼を…」




向井一尉がレンジャー塔の真下まで案内したためか。

牧野さんの声が聞こえた。

真下を覗き込んで牧野さんを見た。

少し大きめの紺のパーカーにチェック柄の膝丈くらいのスカートにスニーカー。




お洒落してんなー




「降りて会いに行ってこい…」


節目がちに佐藤陸士長は私にGOサインを出した。

階段から降りて行けって言うのかと思ったけど指差したのは地面にまで伸びたロープだ。



「レンジャー」



要するに降下して行けってことだ。

これも訓練の一環だよな?って隣にいる小野陸士長の顔にバッチリ書いてます。

腰にロープで座席と言うハーネスを作って降下した。


降下できたことを合図するとメンチを切ってあっち行けと追い払った。

鼻で笑ってるように見えたけど…

あれ?

何をそんなに驚いて?

なんで逃げた?




「何か…あったのかな?」



不思議に思っていたら背中をちょんと触られた。

振り返ったら今にも泣きそうな牧野さんが…




「神前さーん!」


「泣かないで!

ちょっと私が悪者になるから!

なんかごめん!

許してくださいお願いします

なんでもしますから!(なんでもするとは言っていない)

ちょっと!待ってください!

待ってァァァァァァ!」








少し落ち着いてから話を聞いたらこうだ。


化け物が教室に飛び込んだきた。

みんなは逃げたけど足がすくんで動けなかった。

逃げようとした瞬間に転んで足にガラスが刺さった。

痛くて動けない

どうしようもなくて泣いていたら私が椅子をぶん投げて戦っていた。

そして牧野さんは気絶した。

学校が休校になってここら辺を車で通っていると

神前さんじゃね?ってなる

お礼を言いたくなった…らしい





「あの時、どうしようもなくて…神前さんが…あの時助けてくれなかったら…私いない。」


「それでずっと…。お礼なんていらないよー」


「ずっと…ずっと、ありがとうを言いたくて…」




スッゲーいい子じゃね!

惚れる惚れる


「だから…あの…ありがとう」


「あの…うん。 どう…いたしまして?…っふ」


「「ふふふ…あははは!!」」



なんでたか急に笑いがこみ上げてきた。

こんなにいい感情なのは初めてかもしれない。

なんだろう

とっても暖かいな。



「でもどうして自衛隊にいるの?」


「話すと一年くらいかかるよ?」





「それはかかりすぎだぞ?」





声のする方を見ると田中3佐が笑ってレンジャー塔から歩いてきた。

反町○史さん!?って驚く牧野さんによく言われるって3佐が返した。

迷彩服にヘルメットかぶった反町○史だよな。



「はじめまして、神前さんの上司の田中源一郎です。

ようこそ、練馬駐屯地へ。」


「はじめまして、牧野えみりと言います。

神前さんの同級生です」


「ところで神前? お前」



座席の結び目が甘いぞ?

レンジャー塔のまで走って行って最初から降下してこいゴルァ!

腕立て20回プラスじゃぁ!





レンジャァァァァァァァァァァァァ!













「あの…田中さん?」


「いやぁ、すいません。これも教育なんで。」


「足速いですね…すごいです」


「話を変えますが…同級生でしたよね?」


「そう…ですが。それが何か?」


「彼女の姿を見てどう見えますか?」


「大変そうに見えます…」


「そう、訓練は辛く苦しい。大変…です」


「はい…」


「それだけではないのです」


「え?」


「今あんな風に訓練をしているのは彼女1人だけです」


「え! あそこの塔にいる人たちは?!」


「全員が監督官であり先生みたいなことをしています

今、孤独とも戦っているのです。

もし彼女があなたのところに助けてほしい。

苦しい、辛いと言ってきたら…」


「……はい?」


「そのときは少し聞いてあげてください。

我々も聞いているですが…拾えない事があります

その時はどうか…お願いします」


「頭を下げないでください!

私はいつも彼女に助けられてばかりなんで…そんな!

…あっ、神前さん。」


「ぜぇー。ゼェ〜。 戻りましたぁ!」


「…結ばさってるな。 まぁいいか。」




((結ばさってるって何?))




「あの神前さん! 私、よくわからないけど訓練応援するね!」


「ありがとう! 後さ、神前さんじゃなくて瑠香でいいよ」


「私も、牧野さんじゃなくてえみりでいい。」




そう笑いあっていた。

3佐や向井一尉もニコニコと微笑んで見守ってくれている。

ちなみにこの時の姿が広報官の人に写真で撮られていたのは気がつかなかった。

不覚!


今回は訓練もそうですが友情が芽生えた瞬間です。

主人公の瑠香にとって同年代の友人が駐屯地にはいないので今回登場したえみりの存在は大きくなると思います。


ただし、えみり意外にも訪問者はいたようですね

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