14-10 撃つ手し止やむ
いきなり寒くなりすぎてワロエナイ。
主人公たちの父親の(設定上)出身地でも雪が降り始めたそうな。
「手も足も出せないのよ、あいつに」
あいつの距離は体感で5キロくらい。
ずっとホバリングしてるように巨体をしならせながらこっちをずっと睨みつけている。
あいつの中にはお父さんと坂口空挺団長が体内で暴れ回っているように見える。
私の転輪眼だっけ…遠くのものが見えてくるような。
「私が行きます、副団長
何で私がここに来たのかわかった気がします」
みんなの目線が私の方を見る。
自分が今何を言ったのかわかっているのかなんて言いたげに。
わかっているとも、自分が今何を言ったのか。
私の能力が何を意味していて、そしてこの場所にいるのかも。
「瑠香…今何を言ったのかわかっているの?
それは無謀なのよ!
まだ考えれば策はあるはずなのよ!」
「瑠香、あんた何言ったんかわかってんねやな!?
わかって言ってんねやな!
沖ちゃんを助けてくれたあの日と状況はちゃうねんで!」
わかってる。
千春ねぇ…じゃなかった村上三曹が言いたい事も沖田二曹が言いたい事も。
死ぬかもしれない状況だってわかってるけど、今私が行かないといけないんだ。
あいつらの目的が私だってわかっているし、これ以上みんなを傷つけたくないから!
でもみんなの反対する声が辛くてたまらないんだよ。
「それなら、俺も飛びます
一緒に行けば文句はないですよね?
それに、俺もFF持ちですから」
「修までかばちを言うのか!
わざわざ死にに行くことなんてないんじゃ
ワシは…行こう言うなら殺してでも止めたらけんな!」
「飯島の呉の言葉がきついべ」
「じゃかしいわ!」
それでもダメだって天野副団長は言いそうだな。
ずっとブルブルと震えて、ダメに決まってるって言いたげな顔をしているもの。
でもアレは私たちの方を確実に狙って、今にもまた練馬に飛んできそだし。
どうやって説得すればいいんだべ?
「…祖父は少し勘違いをしていた
お前にしかできないような運命を仕組まれていたとするなら…
修に瑠香よ、行ってきなさい
そして必ず帰ってくるのだよ
責任はジジイが取るよ」
「たっ…田中2佐何を言っているだか?
俺は反対です…瑠香や修三曹が死ぬことなんて俺嫌ですよ!」
『佐藤渉くん、田中2佐の意見はもっともなんだよ
それは…俺がこの子達に力を与えてしまったから
運命を打開する為に力を託した
アレを倒す為には2人が必要なんだよ』
アレを倒すには2人に授けた快晴の空のような色をした転輪の眼と瑠香のみが発現した青い雷がいる。
青い目の固有能力には差があれど、アレを倒す為に必要な急所を狙う力を持ち合わせているんだ。
そこに一気に雷を落とせば?
急所に電気を流せば人間は死ぬ。
生きている人間にAEDを流せばどうなるか、何となくわかると思うんだが理屈はそう。
おそらくアレも元を正せば人間のような者。
ならば急所を見抜く転輪の眼と雷に、陸自の火器を使えば?
「簡単に相手は殺せる
そして伝説は実演されてしまう
ただしたった1人の救世主ではなく、大勢の自衛官のうちの2人が活躍する」
『だが伝説は実演なんてさせないよ
救世だなんて馬鹿孫息子も望んじゃいない
そして吐き違えないでくれ
2人が止めるんじゃない…未来あるみんなで止めるんだ
おっ…小野くん、瑠香に擦り寄って泣いても』
小野にいちゃん…タバコ臭いよ。
でもタバコ臭いから目に染みてくるよ…でもいつも目に染みてくるけど何でずっと涙が止まらないんだよ。
室戸にいちゃん、何で泣いてるんだよ。
いつもみたいに俺特製フラペチーノ作ってよ。
みんな、泣かないでよ。
だから私…私
「絶対に帰ってきますから、うわぅぁぅぷ!」
「いきなり抱きしめてごめんなさい
向井3佐は…お母さんは貴女に何もしてあげれなかった
それは修三曹に対してもよ
無事に帰ってきて…全てを託すことを許して」
「行ってきます…みんな
こんな暴利を止めてくる!」
「これが世の定めなのですか
未成年後見人としても検察官としても…
いえ憲兵だった過去の僕も
神よ、もしそこにいられるのであれば白石富治の寿命を削ってでもいい
僕の兄妹のようなこの子達を、守ってください
嗚呼…死にたまうことなかれ」
瑠香は無理を言って飛ぶことを決意しました。
他の人間たちが嫌がったのは訓練と違ってそこに死があるからです。
ですが、田中2佐含めて忍や修は気がついてしまったのです。
救世主ではなく防人であるからこそ守れる何かがあるのだと。
次回が最終章です。




