2-6 想定訓練
完全に冬ですね!
こんな時にはあったかいものが食べたいです
あれ?
私何してるんだっけ
腕立てして、ねじり腹筋やって、かがみ跳躍やって
走って。
また腕立てしてねじり腹筋やって、かがみ跳躍やって走って。
でも私今泥の中にいる。
必死に腹這いをしてるの?
違う
なんだこれ
身体中が悲鳴を上げ始めてる
平衡感覚がなくなりそうだ
これが戦闘なのか
「そんなところでへばっんじゃねぇぞ!?
帰れそれなら!」
「帰りません!」
「車用意するから帰れ!」
「帰りません!」
一時間前、訓練開始直後
「今から、点検を行う…言われた通りできてんだろなぁ!?」
「レンジャー!」
この日の点検官はまさかの田中3佐。
点検官になった理由はとても簡単。
俺もレンジャー教育の時みたいな初心に戻りたい
だそうだ。
だけどいつになく今日は機嫌が悪い。
その理由も知っている。
私の未成年後見人の白石富治から太鼓の達○で鬼を無理矢理やらされたためだそう。
あまりにも基地外な譜面だったためにご立腹中。
『も○○○やらされたんだ。あの馬鹿者』
らしい
もう一つの理由があるらしいがそれについては教えてくれなかった。
ただ、理由を知っている沖田二曹や小野陸士長も苛立っている。
村上3曹に聞こうとするそぶりを見せた瞬間、周りの目線が強くなるように感じた。
大人の事情なのだろうけど…なんだろうな。
「本日の点検官は田中3佐及び村上3曹。
悪いが優しくやるつもりはない…わかるな?」
「レンジャ!」
「どの程度短期間でできるようになったか見せてもらうぞ。」
「レンジャ!」
なぜか笑って田中3佐は胸ポケットを指差し村上3曹が厳しくチェックを始めた。
もちろんアイロンはできている。
胸を張ってやったと言える!
「できてる…。うらやま死刑。」
「死刑!?」
死刑ってひどくないですか?
うんうんって田中3佐!
ぽんっと叩かれた?
そこには甘いなーって顔の村上3曹がかたを指差していた。
「シワ三箇所」
背中、しわ一個
ズボンの線が甘い
もう少し半長靴を磨くこと
左耳の垢
合計7個のミスが見つかった
「神前、今日の天気はなんだ?」
「晴れです」
「んだ、まぁそういうことだ。
加えて、久しぶりにここに来てワシの顔を見ておる白石よ!」
「やっと僕を見てくれた、お久ぶりです!
源一ろぐぶ?!」
いつの間にいたんだって感じて田中3佐のそばで鼻の下を伸ばすスーツ姿に右の襟に小さなバッチをつけたくそ…富にぃ。
改めて白石富治スーパー検事兼未成年後見人様が田中3佐に蹴りを入れられた。
蹴られた後に3佐にチョークスリーパー決められてるし。
見ててスッキリするのはなんでだろうね
「貴様、どの面下げてきたんだ。あ?」
「プリティな顔で…」
「見苦しい根性を叩き直してやる。神前の服装等の乱れのペナルティは腕立て80回!
この前の復讐を兼ねて白石だけ腕立て130回!」
「僕は一般人ですよ!レンジャーじゃないんですよ!」
「やれよ? お前も元は俺らと同じぞ?」
「切磋琢磨だけは勘弁してください!腕立てするから!」
阿鼻叫喚地獄というか
まじ鬼レンジャーな田中3佐の命令に富にぃはしこたま腕立て伏せをやり続けた。
時々こっちを見ながらうらめしそう呟いている。
その都度田中3佐にメンチを切られてるし。
死んだ顔してへたり込んでいる富にぃを荷台にに乗せ
田中3佐は庁舎に戻って行った。
「…あれなんですかね?」
腕立て伏せを終えた私はカウントを数えていた小野陸士長に目配せをした。
俺も分からないって顔に書いている。
どう対応していいか分からないっていうのだろうな
「いいか、神前」
「レンジャ」
「俺たちはレンジャー隊員としてお前を育てるが一人前の人になってもらうためにも鍛えてるからな」
「レンジャ」
「要するに、白石さんみたいな大人になるなよ」
「………レンジャ」
課業始めのらっぱがなり終わって十分でここまで騒がしくなるのはいかがなものかねー
と余裕ぶっこいてる時期が私にもありました。
そうです、私の嫌いな障害走があるんです!
1,おっきいパイプを匍匐で移動
2,地面に固定されてるハードルを走って飛び越える
3,地面にめちゃくちゃ低く設置されたワイヤーの下を匍匐で移動
4,木製の平均台の上を走る
5雲梯を、腕の力で移動
6, 2で言ったコースを匍匐で移動
失敗することに腕立て伏せ十回のペナルティ
ゲロキツ!
時刻を戻して
あれ?
私何してるんだっけ
腕立てして、ねじり腹筋やって、かがみ跳躍やって
走って。
また腕立てしてねじり腹筋やって、かがみ跳躍やって走って。
でも私今泥の中にいる。
必死に腹這いをしてるの?
違う
なんだこれ
身体中が悲鳴を上げ始めてる
平衡感覚がなくなりそうだ
これが戦闘なのか
「そんなところでへばっんじゃねぇぞ!?
帰れそれなら!」
「帰りません!」
「車用意するから帰れ!」
「帰りません!」
「だったらマシに匍匐前進しろボケがぁ!」
「レンジャァァァァァァ!!」
私は匍匐前進をして土管から抜けようとした。
でも全く前に進めなくて足首掴まれて引きずられた。
何回やったっけ?
でも不思議だ…
短すぎる期間でずっと影で泣いたり走りながら泣いていたのに。
今は涙が流れない。
むしろ負けるもんか、やってやるよ!
っていう気持ちが強くなってる。
「見てろよ…。私はやってやるよ!
レンジャーになってヤルァ!」
いつか、あなたの背を越して見せます
大島一等陸曹!
練馬駐屯地、庁舎内屋上
「バカ瑠香のやつ。すごいですね」
「そうだな、80余年も前には考えられぬことよ。」
そうであろう、名方
「そう言われるのは久しいですな」
「もう、あの時代ような闇はあの子には見せられんな」
「そうですね。 ところで本題ですよ」
手に持っていた鞄から数枚の紙を出した。
わざわざ太鼓の達○をいい歳のじじいがするものか。
太鼓の達○は楽しかったがやった内容はなー
鬼だった。
その時に頼んだ代物が届けられたのだ。
「全く…白石よ。面倒なことになったな。」
「えぇ、私が調べた情報が正しければ…ね。」
極秘と書かれた書類には神前の身を狙う者たちの調査結果が書かれている。
面倒なことと言うのは、相手が相手と言う意味だ。
空飛ぶ化け物にそいつらを使役する人間。
儂も似た意味で物の怪ではあるが、厄介だな。
「源一郎様、相手は私たちが対処できないスレスレにいます。」
「こいつらは…一体何者だ?」
「かつて平成の世に激震を走らせた組織と似ています。」
「…相手はカルト教団と。他には?」
「それくらいしか…一つ言えるならあの子を一人にしないことですね。」
不味いことになりそうだ。
下手に手を出せば何をされるか分からない。
そして向こうが、いつ動き出すのかわからん。
空飛ぶ化け物の強襲。
嫌なことがずっと続くものだな
昔持ち出し禁止の棚の中にあった書類を見たときと、似た状況が起ころうとしている。
書類に書かれていた相手もカルト宗教団体だったのを覚えている。
「あぁそれと、源一郎様が言っていた大島ですが。」
「これは?」
もう一つ一枚の紙が儂の机に置かれた。
だいたいの察しはついていたが、信じたくない。
いつこの事が漏れ出すか不安でしかなかった。
「あなたにいわれた通り色々とやったんですよ。」
「こいつは…真っ黒もいいところだなぁ?」
嫌な脂汗がじっとりと背中を濡らした。
白石も言いたくないと言わんばかりに文章の一部を指差した。
そこには見たくもない内容が書かれている。
「大島なんてやつはこの駐屯地にいない…
あの人は色々とやってくれる!」
「気をつけて…としか言えませんよ」
第一師団団長 財前誠陸将には
同時刻第二グラウンド内
「弱いな? お前たち普通科3中隊は何をしていた。」
「……」
「何も言わないのか、大竹中隊長」
「それは…その。」
「まぁいい。 なんの腹の足しにもならん。
潰し甲斐がなくなった。」
地べたでうずくまる隊員を見て俺はただつまらなくてたまらない。
今まで何をやっていたと言う?
訓練をしていたと言うが、甘いな。
踏み込みもない、ただ弱いだけなんだと
だかもういい。
言い訳など聞くだけ無駄だ。
「格闘分野で精鋭を揃えたと聞いたがウソのようだ」
それよりも今は…
あぁ、あの子の事を考えるだけで体が溶けそうだ
やはりこれも運命か、それとも彼女が送り届けてくれたのか。
「次は…お前のそばに行こう。
悲しいことはもうなしだ。
あぁ、はやく側にいてあげたい。
長く待たせてすまないね、瑠香。」
今行くよ
想定訓練です
その手の漫画やウィキなり動画を見ています。
レンジャーになるためにこの様な訓練をされていると思うと頭が下がります。
本小説の主人公にも同じ状況が次々と、起こるので楽しみにしてください。