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13-9 誘拐

暫くぶりです。

実は聖地巡礼行脚をしてまだ行けないところに行こうとしたら、行けませんでした。


[午前9時 練馬駐屯地 即応強襲部隊 執務室]







「…」


「田中2佐、どうしたのですか?

窓から外を睨んで」


「いやぁ、ちと胸の中がざわめくのさ向井一尉

訂正…向井3佐

何か不吉な事が起こりそうでたまらんのだよ」


「ありがとうございます

不吉な事…最近門の前でのお祈りのような行為が頻発してるそうです

相手は、まぁ言わずもがな」



「そのせいで夜間以外で閉めぬ鉄門を閉鎖しているそうだ

稀に門の隙間から腕を伸ばしてくる輩もいると」


「瑠香の何がそんなにいいのでしょう

訳がわかりません」





最近の練馬近傍はおかしな事が続いている。

訓練に出発しようとした他の中隊の車両目掛けて、光の楽園の人間が突進してきたと聞いた。

その時は車両は停止していたから何も起きなかったという。

明くる日の演習反対を求めた市民の方達が、駐屯地に書状を持ってきた時もそうだ。

応対しようとした時に、その時にいた最先任曹長をぶん殴り市民の方達も殴って発狂した。



「何という事が…儂が旧陸軍の時も自衛隊に来てからも一度も起きぬ事が起きた」


「田中2佐、お気持ちはわかりますが今は何も」


「…んだっばい、何もできぬ

おや、久しぶりだなぁ挺進兵

否…神前忍よ」





入口の壁側に立ち、姿勢を伸ばして10度の敬礼をする。

どこか物悲しそうな顔をしているのは承知の上だ。

自分の孫の死を招いた者たちが今度はその息子と娘に手を伸ばそうとしているのだからな。

しぶといのだろう、どれほど恨んできた事か。

だが相手はその力を広げていったのだ。



「守ってやれなかった

すまない、まさかこうなるとは思わなかったのだよ」


『いえ、私もここまで勢力を伸ばすと思いませんでした

ですが起きてしまった事はもう収集がつきません

私なりに,あの子たちを守ります

ですが』


「わかっているよ、わかっているとも」





大きく膨らんだ闇が、熟れすぎた果実のようにいつ破裂してもおかしくないのだ。

練馬だけではなく、東京や千葉…神奈川もか。

黒い霧のような人を見たと報告があったのも。

うむ、電話か…何だか胸騒ぎがするな。







「はい、普通科連隊長の田中です

天城司令どうされましたか?

…よもや、あいわかりました

今すぐにですね!」









ここにきて東京都から、治安出動になる可能性が上がってきたのか!

師団長(ヒグマ)も頭を抱えているとなれば、暴走を止めきれなかったとしか言えない。

警察にいる孫たちも検察で動いてくれた白石にも、儂としても示しが付かぬことになった。

今までの不審事件が、ここまできたか!

そんなに儂らと戦争がしたいのかぇ!?




(午後4時 練馬区内 駐屯地付近)



「ドーキドキドキ…俺のあ…」


「えみはオグちゃんが好き」


「紗香は…ツイン」




自転車に乗って3人縦並びで走る初夏の夕方。

授業が終わった放課後に、いつものクリスピークリームドーナツを崇め奉っていたんだ。

で、そろそろ集会をやめようときた時に麦田先生が携帯を持ってきたんだ。

そしたらさ、みんなでやるよね。

えみりちゃんと、紗香氏に葵たん。

途中から入信した萌きゅんと麦田先生でやったんだ。




「うまうま」





自分達の推しをどう可愛いかを語り合ってたら、下校時刻になったんよ。

でも、練馬駐屯地付近で不審者がいるからって学校側の方針で、みんなまとまって帰りなさいって言われました。

私とえみりちゃんと紗香氏とはそろそろお別れ。

と言いたいんだけど、私のいる駐屯地側の道路の反対側にいつもの光の楽園の人たちがお祈りをしてました。





「あれは…げっ師団長(おとうさん)


「「瑠香ちゃんのお父さん…迷彩服イケおじだ」」


「あの人もトレーナーやってるんだよね」


「「…ぶふぉ!」」





でも何だろう?

お父さん…あんなに切羽詰まった感覚というか。

お父さんの心の中は何もわからないけど、どこか焦っている感じというか。

迷彩服着た人とか他の先輩達が門の中を入っていくのを見ると、まさかなにかあったの?

自衛隊が何かあった時のフェーズは色々あるけど、災派があっただなんて今のところ聞かない。

治安出動か…防衛出動だなんてありえない!




「…!」


「イケおじ様

わたしたちに気がついたけどなんかあったの?

瑠香?」


「そのまま直進しろってこと?

今は正門(ここ)から入るとまずいって言いたいんだ

裏の北門なら問題ないって言いたいんだよ」




正門を無視して時間はかかるけど、直進しようとした。

そこまでは覚えているよ。

発狂した人がこっちに近づいてきたことも覚えている。

狙われたのが、えみりちゃんと紗香氏だったからその人を蹴飛ばそうとしたんだ。

でも向こうは私のことを狙って突っ込んできた。




「瑠夏ァァァァ!!!」



お父さんの大声で我に帰ったら、私を庇ってお父さんが…黒いバンに連れ込まれて無理やり押し込められていた。

暴れているのに…手を伸ばしているのに届かない!

発狂した人はブラフだったのに、何で気が付かなかったんだよ!

逃げろだなんて叫んでいる!

嫌だ…これ以上私の前から家族がいなくなるのを見たくない!


やめて…やめて…






「やめろぉぉおお!!!」





叫んでも…手を伸ばしても無理だった。

ほんの少し手が伸ばせたら助けれたはずなのに。

いや違う、私達を狙ったんじゃない。

最初からお父さんが狙いだったんだ。

お父さんを誘拐すれば私が懐柔すると…どんな理由でもどうでもいい。

私はまた誰かを助けられなかった。

黒いバンが見えなくなって気がつけば、私の両膝は血だらけだった。

日常が非日常になる。

今回は最悪な方向で,終わりました。

何で師団長が,そこにいたのか?

どうして、連れ去られたのか。


それは今後のお楽しみです


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