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13-8 もう一つのあの日の事

ほんの少し過去編です





今日、私はお兄ちゃんと一緒に練馬区立病院にきている。

そうして欲しいと麦田先生に言われた。

警察官が病室のドアを開けると、薄いクリーム色で小さな花柄の部屋着を着て椅子に座ってうたた寝している麦田先生がいた。

また今度と帰ろうとした時に先生は顔を赤くして笑いながら手招きをして迎え入れてくれた。



「二人とも来てくれてありがとう…ございます」


「めっちゃかわいいやんか」


「瑠香、一回空を飛んでドウゾ」




私たちの言い合いをまじまじと見つめる麦田先生。

またフルフルと震えて泣き始めってやめてよ!

わたし達、いじめたみたいになってるじゃぁないか!

いじめてませんよ。

警察官の人こっちを怪しそうにみてるじゃんか!



「ごめんなさい

二人のことを見ていると真奈美さんを思い出したの

貴方のお父さんも知らない、あの日の事を話すね」




「あの日の事…麦田先生、もしかして」


「真奈美さんが誰に殺されたのか…という事」





(十二年前 船橋市某所 アパート)



「さぁ、香苗

今からユダの家に行きますからね!

司祭様を裏切った罰を今から与えるのですからね!」


「うっ…うん、お母さん」




当時の私は13歳の小学生だったの。

でも、学校の友達とは遊べないでずっと親と一緒に宗教の集会みたいなのに参加していた。

もちろん友達もいなかったし、そもそも母親がどっぷり宗教にのめり込んで行ったせいでいじめも受けた。

父親が不倫して蒸発して、気を病んだ母親は病院に行ったのが原因だったの。





『その先が、桐谷総合病院だったのですか?』


『そうです…財前さんのお兄さん』




その日は、司祭から命令って言う名の特別な課題を与えられたの。

二人のお母さんを司祭の元に連れ戻すって言う。

家の場所は特定していたから乗り込んだの。

そしたら真奈美さんがすごいのよ!

玄関開けて乗り込んだ瞬間に怪鳥蹴りを食らわしたのよ!

そしたら、勢いにやられて失神したのよ!




『『うちのかぁちゃんだったらやりそう』』




そう言ってくれると思った。

怪鳥蹴りをお見舞いした後に、私に気がついて頭を撫でてくれたのよ。

怪鳥蹴りをくらわせた相手が私の母親だって気がついたのだと思うけど、とても悲しそうな顔してた。




「あなたのお母さんを蹴ってごめんなさい

ここにいるのは嫌だと思うから、お父さんに電話して迎えにきてもらおう?」


「…お父さん、いないの」


「そうか…おじいちゃんかおばあちゃんは?」


「お母さんのおじいちゃんは北海道

お父さんのおじいちゃんは東京なの」


「わかった…じゃあお父さんの方のおじいちゃんを呼ぼうね

おうちに入って待っていようか」




部屋の中に入ろうとした時、あいつが現れたの。

今でも覚えているし、集会でもあいつは笑いながら話しかけてくるもの。

黒い霧…翼者になりかけの人間が纏っている黒い霧のような羽を漂わせてナイフを持って真奈美さんに突進して行ったのも。




「お前…翼者…やってやろうじゃあ!」



って言った瞬間だった。

口元抑えて、一撃で胸を…心臓のあたりをついたの。

そこからは滅多刺し…子供だった私の目にはそういうふうに映った。

ピクリとも動かなくなった後、そいつは私の母親を玄関まで引きずって出して私を見てこう言ったの。



「かわいい子だね

可哀想に、親のせいでこんな事間に合うとは

今見たことはみんなに内緒だよ

でも…あの人になら話してもいいかな?

悪いのは君の親と、ここにいる死にかけさ

自己紹介が遅くなった、俺の名前は坂口安吾

習志野空挺団の…まぁいっか」



そう言って私とその人は手を繋いで光の楽園の本部に帰っていった。

失神した私の母親を引きずって…まるで物を引きずるようにして車に乗せたのは覚えている。





「事件から一ヶ月開けた頃に私は、北海道のおじいちゃんとおばあちゃんの家に行ったの

親が私の面倒を見ないから、児相に行ってそこから…

その場所で被災して、二人のお父さん

レンジャーさんにあったの」


「そんなことが…」


「でもこれで終わらなかった

私は無理矢理、母親のところに連れ戻された

そして今に至るの

ごめんなさい…恨まれても構わない

あの時、もっと叫んでいたら!」


「麦田先生、教えてくれありがとうございます

私…母の死の真実が知れてよかった

本当にありがとうございま」



なんて言ってる矢先、私の携帯に電話がかかってきた。

画面に表示されているのは、千春ねぇ…じゃなくて村上三曹。

緊急性が高いのかと失礼ながら、応答ボタンを押してスピーカーにあったのは大音量でバジリスクタイムを示すあの曲だった。



「ねぇ、瑠香…修三曹

師団長(ヒグマ)が暴れて…バジリスクタイム踊ってるんだけど」


「射殺してどうぞ」


「修三曹です、屠殺しておなしゃすせんせんしゃす!」







麦田先生のひきつった笑みが事を表している。

放っておこう。

わかったのは最初、お母さんを殺す予定は光の楽園側にはなかった。

でも坂口空挺団長は私の母を殺す予定があった。

連れ戻す頃合いを見計らって殺害した。

でも理由がわからない。

瑠香の母親、真奈美の死の真相です。

というよりもう一つの視点だと思ってください。

助けられなかった苦しさがきっと麦田の中にあったと思います。


殺したのは…ですね。


次回もお願いします

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