13-2 満ちた憎悪
暑いのか寒いのか…
これもうわっかんねぇなあ!
何度も…何度も…祈りを捧げてきた。
何度も、何度もお布施をした…でも私の夢は叶わないじゃない。
ユリア様の血を飲んだし、司祭様の洗礼も受けたはずなのに私の美貌は保たれることがない。
羨ましい、綺麗な声と美しい姿。
マリア様を楽園に戻せば願いが叶うと思ったのに!
あんな罵詈雑言を…それにサタンが、よりにもよっているだなんて!
生徒達が憎い…若さが…全てが憎い!
マリア様の同級生の速水の血を舐めたけどダメ…。
あぁ生徒達の中に一際、目を引くのが同じ二年の時任小春だっけ?
モデルを目指してるなら、綺麗なはず。
だったら私の美しさのために…犠牲になってちょうだい!
「願いが叶わないというなら…手に入れればいいのよ!
まだミスコンは終わってないなら…行くしかないわ!
その後にマリアを迎えに行きましょう!」
(学校内 校庭)
「あかん!
あちこちから殺気が漂っとるわ
こんなんは、沖ちゃん二曹でも対応できへんで!」
「ただでさえこの学校は大きいです!
人数も学園祭のせいで、いつもより増えているなら捜索はきついだに!」
「ターゲットの人相は分かりましたけど、今の今までこんな所には出てきていません!」
「佐藤のわったが言うこともわからんでもない
千春の不可能と感じる真意をな!
でも練馬がやられた時に起きた嫌な感覚が、沖ちゃんの胸の中をぐるぐる動いちゃる」
それにしても何や。
さっき田中2佐からの電話で味方に首をかかれてゆりあは死んだって言ってた。
ユリア…いや、光の楽園ってインチキ宗教の狙いはうちの瑠香で連れ去ろうとするのはおかしない。
でも仲間の首をかいて逃げようとする理由が分からん。
造反でもしたってわけちゃうならなにがある?
それに女と言え首をかくなら、相当力がいるはずや。
ガリガリに痩せてたって言うのも妙な話。
…なんや俺らの200メートル先を歩いてる女。
あかん、あいつや…野放しにしたらあかんえ!
でも人が…どないすればええんや!
(セントラルホール ミスコン会場)
「時任さんの圧勝だったね
誰よりも準備に時間とか練習とかしてきたんだろうね」
「瑠香が帰ってきたらみんなで屋台回ろうよ
えみりちゃん、お腹すいたんじゃ?」
「それはさやか氏もでしょ?
葵もお腹すいたし…あっ、時任さん」
「あら、皆さまごきげんよう
財前さん、あんな風に飛び出していったらねぇ
まぁどうでもいいわ…佐伯さん、今なら私達のグループに入っても許してあげる」
今のその一言が腹が立つと言うか、本当に何様のつもり?!
確かに時任さんには輝くものがたくさんあったけど。どうしよう百年に一度の佐伯の噴火の日…。
あれ、なんで音楽の村井先生がこんな所にいるの?
村井先生はコーラス部の顧問だし、ここじゃなくて体育館で出し物をするってコーラス部の子達が言っていたのに。
先生の服…なんで赤黒いシミみたいなのが着いてるの?
手に持ってるそれって…。
「時任に佐伯ぃ…お前達がいたのか!
ちょうどいいわぁ、あんたの血を…血をよこせ
そしたら私は美しく…そして強くなれる!
血をよこせぇぇぇぇ!」
なんで…どうして…村井先生?
やばい、今の村井先生は正気じゃない!
ナイフ持って振り回しながらこっちに来た!
警察を呼鼻たいけどそんな時間がない!
こっちに笑いながら近づいてきてる!
どうしよう…どうしよう、瑠香ぁ助けて!
白石さんだっけ?
なんで目の前に立って…まさか一人で止める気なの!?
危ないからやめた方が!
「いただけませんねぇ
血濡れのナイフに血痕だらけの服
なかなか猟奇的ですねぇ
この前の文京区での火災事件
お前がいたのは裏が取れています
人の心あらずと言うなら、司法という名の毒を持って悪を制すだけ
帝国陸軍憲兵少尉、白石富治が…!」
なんでしょう…私の心を全て晴れやかにしてくれるこの感覚は?
何人にも触れられない存在でありながら全てを包む。
まさしく自然…そして猛威だが、福音ともとれる存在。
それが高速で近づいてくる。
そうか、この存在は瑠香なのか。
希望を見出した空の子…この感覚は快晴の中を進む空の子である瑠香の足音だったのか。
「村井ぃぃ!
ダチに手ェ出してんじゃねぇぞ!
あんたに朝日を拝まさせはしねぇ!
習志野パンチの時間だゴラァ!」
と言いながら振り返った彼女の顔面に左ストレート
が入ったのです。
おかげで村井は5メートルほど吹っ飛んでいました。
僕の右真横を掠めてって習志野パンチの威力が強すぎだ、この脳筋陸自ブァカ瑠香。
やっていいことと悪い事があるのですよ!
って、気絶するんじゃありません!
いえ、財前誠…お前が気絶させたのですか?
「無理をしすぎだ、財前瑠香士長
さて…そこで伸び切っている村井は、警察の方で頼むとしますか」
「財前誠…お前」
「後はよろしくお願いします」
こいつ…いつの間に瑠香の背後をとった?
それと一瞬だが、笑っていなかったか?
まさか…行かれた親父だ。
娘を…いや、やめておこう。
自己満足の満ちた憎悪を溜め込んでいた固めの行動なのか、膨らんだ憎悪とカルトの考えに組み合わさった思考の末の行動なのか。
人間が1番怖いです。
いくら意地悪をされたからと言われても守ろうとした瑠香の行動はやりすぎですが、これも重要なことです。
まぁこの中で膨らんだ憎悪を溜め込んでいたのは…。
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