12-8 選ばれたのは逆恨みでした
あれれおかしいなぁ。
もう3月の後半だぞー？
( 午前9時 高淳高校 二年A組教室)
心が落ち着かない、とっても心が落ち着かない。
教室の窓側の自分の席に座り込んで窓の外の練馬の景色を見ても、私の心はとてつもなく落ち着かない。
アイフォンのロックを解除して、写真フォルダにある習志野で撮った1大隊の集合写真を見ても。
空挺館の近くにある銅像前で、私を育ててくれた畑口三曹や秋葉三曹とのスリーショットを眺めても。
神様が作ってくれた、カヌレの写真を見ても。
私が初めてFF降下をした時の、GoPro撮影をしたビデオを見ても。
「めちゃくちゃ落ち着かないんですがー」
「大丈夫…神前さん
あっ、今はもう苗字が変わって財前だっけ？」
「速水くん…ありがとない
大丈夫じゃないんだけど大丈夫よ
なしてこうなったんだよぉ」
季節外れの学園祭が行われるまで一週間を切ってしまった。
ずっと訓練・空挺降下・山登り・空挺降下の連続で学園祭をやるだなんて知らなかったし公開処刑要員が勝手に決まってしまっているし。
普通の高校生活を送りたかったのに、そんな夢は永遠に消えてしまってます。
なんでこうなったかと言う理由をつい最近まで知らなかったけど判明したのです。
「逆恨みでこんなこと」
逆恨みが原因だったのです。
理由はとっても簡単で、私を心配してくれたこの速水涼太のファンで学園一のマドンナでお嬢様と言われている時任小春さんがねやってくれたんですよ。
私の王子様の心を奪った女が憎いってなことです。
私がただの高校生の頃は何も感じなかったそうですが、レンジャー行ってから鼻につくようになり空挺行ってからひどくなったと。
私の話が学校新聞で取り上げられるようになってからは、空挺に行った話は全部嘘だと周りに言いふらしているんだってさ！
一部の界隈しか時任さんの話を信じてないし、学校自体は公認してるのにね。
空の神兵をなめるなよ？！
「大丈夫…ばないところ悪いけど瑠香
あんたに客人だよ、時任さんg」
「王子、ご機嫌よろしくてよ
あら財前さん、ここにいたの？
それよりも、ミスコンに出場するのに随分と余裕ね？
まぁあなたなんて所詮は私を引き立てるだけの土台よ
それが嫌なら王子から引きなさい？
そしたら許してあげるわ」
「王子…え…なんのこと？
ミスコン…ばにゃあ！」
「口の聞き方がなってませんわね
私はあなたの醜態を晒してあげるから感謝してって言うことよ？
ミスコンの不参加はもう無理なの！
貴方が王子から手を引いても、もう無理なのよ！
それじゃあさようなら」
えっなんですか？
私が悪いんですか、私が基地外だと言うんですか？！
私は悪いことしてないよ？
おかしくない、ねぇおかしくないよね？
向こうが勝手にあたおか爆裂ピーポーなんだよね？
そもそもミスコンなんてやる気なんてこれっぽっちもないんだが？！
王子から引けって、私は速水君のことよくわかりませんが？
「あんな言いようないわ！
全力で迎えってやればいいじゃない！」
「そうだよ、財前さんならうまくやっていける！
ミスコンで優勝できるよ！
時任さんに負けたらダメだ！」
みんなが興奮してるの悪いけど、私は嫌なんだよ。
だって必須事項が歌とPVと自己PR？
あとは組織票とか必要になるの？！
…。
絶対に無理無理無理無理！
習志野駐屯地が練馬駐屯地に今すぐ返してください！
今すぐ駐屯地に帰りたいよ！
ぴえーん、ぴえーん！
ぴぇ…なんだ、誰かの心の声が聞こえる。
この声は、担任の綾瀬先生と副担の麦田先生？
言い争いではないとすれば、これは一体？
『麦田先生、まさかあいつらと関わりがあったのですね！
信じたくなかったわ！』
『すいません、私はあそこから抜け出せれないんです
親が…家族があそこにいるんです
綾瀬先生のことも聞いています、大変申し訳ありませんでした』
『貴方が悪いわけじゃない
でも貴方にも責任があるの、私たちの生徒をあいつらから守らないと！
助けてくれますよね？
私の夫と子供のようになってほしくないんです』
『分かっています…絶対に守ります』
これは心の声じゃなくて、どこかの空き教室で話している感じがする。
まさか、この前に見た夢は現実だったのか？
内通者は麦田先生と空挺団長だったの？
それじゃあ綾瀬先生は過去に旦那さんと子供のようになってほしくない程の何があった？
選ばれたのは逆恨みでした。
綾○ではありません、逆恨みです。
逆恨みで瑠香は公開処刑に選ばれたのです。
酷い話よね。
