始まりの死。
「んっ...んん.....」
ゆっくりと片目を開け、片目が完全に開くともう片方の目もゆっくりと開ける。そして体を起こす。
「ふわあぁぁ...」
大きくあくびをして眠たそうにまたゆっくりと目を閉じてしまうが危ないと思い、目を大きく開く。
そして掛け布団を除けてベッドから降りる。
そして目を擦りながらドアを開け、階段を降りていき、リビングに出る。
俺の名前は石原蓮斗。
前は高校生だったが、事件を起こして退学にされ、現在ニート状態。
退学してからはずっと家で引きこもってゲームをしている。
リビングのテーブルをちらりと見ると母の貼り紙があった。
【お早う御座います。今日は遅くなるからね、しっかりとご飯を食べてください。 母 】
と書いてあった。
その貼り紙のすぐ側に晩飯の炒飯が置いてあった。
時間があまり経っていないためまだ少し温かい。
くるりと後ろを向き、袋に入っているパンを取って食べて階段を登る。
あの事件から一体何日経っただろうか。
自分でも分からないが出来事は鮮明に覚えていた。
俺はいつも学校では酷い虐めを受けていた。
その事を誰にも話そうとは思わなかった。
もう誰も信用していなかった。
学校に行って教室に入り、机を見ると暴言が山ほど書かれてあった。
休み時間には殴られ蹴られたりされ、昼食はこっそり弁当に虫なんかを入れられていた事もあった。
それが高校始まってから約1年2ヶ月ー。
もう耐えられなくなった。
俺はいつものように休み時間、格闘ごっこに付き合わされていた。
サンドバッグのようにボコボコに殴られた。
その時頭に血が上ったような気がした。
その時だった。
俺がポケットからナイフを出して2、3人の虐めていた奴らを殺したんだ。
まるでサイコパスのように...いや、サイコパスそのものだ。
相手の顔面を何回も刺した。
とても機嫌よく、楽しそうに。
そいつらの遺体が見つかって俺は刑務所に入れられ、2、3ヶ月の最悪な牢獄での人生を送った。
釈放されたのは5ヶ月前。
俺は高校を退学させられ、今に至るというわけだ。
それからは毎日ゲームばっかして生活した。
親は仕事でいつもいない。
ずっと家で独りぼっちだった。
だけど悲しくなかった。
自分の体は一体何がしたいのか分からない。
そしてたまに夢の中であの事件の記憶が微かに出てくる。
その度に毎回頭痛がした。
ピッとゲーム機の電源をつけてはゲームをし始める。
そして、十一時間位が経ち、時計は真夜中の二時を過ぎていた。
ふと携帯を見ると七時位にメールが来ていた。
ー【材料が無いので買ってきてください。お金は帰ってきたら返します。 母 】
母からのメールだ。
今はまだ誰も帰ってきてない。
メールの最後に材料の内容が書いてあったため、着替えて外に出る。
24時間のコンビニで材料を買って帰ろうとした。
その時、一人の俺と同じくらいの年齢で白い服を着た女の子を見つけた。
(変な子だなぁ...)
そう思いながら帰ろうとした時だった。
向こうから来た女の子に衝突しかけてた。
「危ない!!」
そう言って、コンビニの袋を投げ捨て、急いで全速力で走る。
(やばっ、間に合わねぇ...)
とにかく全力で走って女の子を庇い、助ける。
やっと運転手は気づいたのかクラクションを鳴らし、思いっきりブレーキを踏むが間に合わない。
(あ、俺死ぬんだ...)
そう悟った。
そして俺は弾かれた。
無惨にもトラックと衝突し、その後トラックの下敷きになった。
(どうして...こんな...)
そう思うしかなかった。
ぱっと目を開け、体を起こし、周りを見渡す。
俺の家具、ゲーム、ベット。
どうやら夢だったようだ。
俺の体もちゃんとある。
そして階段を降りてリビングに着く。
そこには無惨に殺された両親の姿があった。
「あれ...嘘だろ?...なぁ、起きてくれよ...」
かなりショックを受け、膝を落とすが、恐怖で手が震えてうまく力が出せない。
母の肩を揺らすが反応がない。
「どうして...どうしてこんな...」
「エヘヘ☆もう一人居たんだね...」
「は?」
後ろに振り返ると血の付いた包丁を持った女の子がいた。
「お前か...俺の両親を殺したのは...」
「そうだよ。私が殺したの。」
「どうしてこんな...」
「決まってるじゃない。私がイライラしているからよ!!」
女の子は包丁を振り被って襲いかかる。
「待て、だからと言って人を殺したらいけないんだぞ」
「何故そんな事言えるの?貴方だって殺してたじゃない。私みたいに満面の笑みでね...」
俺は顔を青ざめてしまった。
「何故知っている..もしかして何処かで会ったか?...」
「いいえ、会ってない。テレビで見たの。貴方が無惨に殺していたっていうニュースを。」
「あれからもう二年も経ってるんだぞ?そんな昔のこと...」
「昔だろうが何だろうが関係ない!!私が愛してたお兄ちゃんの仇は私が取るの!!貴方さえ居なければ家族全員皆殺しにする事なんてなかったのに!!!!」
急に泣きながら怒鳴り声を上げる。
「お兄ちゃん?...もしかしてお前...」
「ええそうよ。私は貴方が殺したクラスの人の妹よ!」
「だからと言ってここまでする必要ないじゃねぇか!」
「いいじゃない。それは私の勝手でしょ?バカなこと言わないでよ。貴方を殺せば私は幸せ者になるの。」
「そんなので幸せになって嬉しいかよ!」
「ふざけないでよ!!私は...私は...辛かったの。お兄ちゃんが殺されたのを聞いたとき、とても苦しかった...自殺したくなった。それで何度もしかけたけど両親に止められた。だけどもうあの日から私の生活は大きく一変した。学校ではあの事件で虐められるようになった。そして貴方みたいに家族を殺した。その時、今までにない感覚だった。とても楽しかったの。人殺しってこんな感じなんだって。それがつい一昨日なの。だから貴方を殺してしまえば私は楽になる。お願い、もうこれ以上私を苦しめさせないでよ!!!」
そう言って女の子は包丁を構えて突進してくる。
俺は何とか避けれたが床に尻餅をついて動けなくなる。
「さて、殺してあげるからね...」
俺は動けずに殺された。
何回も刺され俺は自分の家族のように無惨に殺された。
(あぁ...俺死んだんだ...)
そう思って辛くなる。これが俺が自分自身で招いた事だと。
(あれ、おかしいな...何か光が...)
そう思って目を開ける。
「あれ...夢だったのか?...」
夢の夢。変な怖い夢を見てしまったもんだ。
はぁ...と大きくため息を付くと、ベッドを降りようとする。
「え...どうして...」
俺の上にあの女の子がいた。
俺は無言で殺された。
そしてまた光が見え、目を開ける。
「もしかして...俺って...」
まるで俺はずっと夢の中にいるようだった。
それが○○○○になることを誰も知らない。
-END-