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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十話 氷河の国
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失恋


 さて、話は変わりイルザ達のヴェンデによる鍛錬の成果について。結論を先に述べると、現段階で能力取得に至った者はいない。理由として各々の能力は発展途上そのものであり、完璧とは言い難いのである。


 最も、能力の片鱗を見せているのはダークエルフの姉妹、イルザとエルザである。特にエルザは基礎魔術を網羅し、以前に奇跡的に生み出した幻獣を任意で召喚できるようになった。しかし、属性付与、幻獣の種類に制限があり、能力開発はこれからも続けなければならない。


 そしてイルザ。彼女の系統は異術に属していることが判明した。ヴェンデの判断によると『斬る』ことに特化した能力になり得るとの事だ。"妖精の輝剣(アロンダイト)"で大木をバターのように斬り倒していたのも能力の片鱗ともいえる。


 ヴェンデが初めに行った魔力炉の活性化によって『斬る』能力がより顕著になった。その後の鍛錬は普通の刀剣で"真空斬"を繰り出せるようにすることだった。"妖精の輝剣(アロンダイト)"であれば容易に空を斬ることが出来るが、ただの剣では不可能だった。様々な方法を試しに試した結果、刀と呼ばれる片刃の剣が最もイルザの能力に適合していた。


 そして北国を歩むイルザの腰にはヴェンデから譲り受けた太刀と小太刀を帯刀している。


 人間の二人、グレンとスミレは下級魔術、物体に魔力を込めるなど、アウラとコルテから基礎中の基礎を教わった。そして能力判断では、グレンは強術、スミレは幻術という結果になった。アウラ曰く、「能力はその時になればノリで発動するっスよ〜。ボクもコルテも実際そうだったんっス」というびっくり適当具合だった。


 グレンの理想では仕掛ける罠に何かしらの強化が出来ると幅が広がって様々な戦術を組めるようになればと考えている。


 スミレは、自身の能力の系統が幻術ということもあり、元の主ブランの面影を自身に写していた。現状、"極光の月弓(アルテミス)"はまだ主無しの状態である。






 北国ジュデッカ、巨氷壁クレバスの洞窟内部。リグと名乗る獣人族(ビースト)の女性の案内の元、洞窟を軽快に進んでいく。洞窟内部は全て氷で構成されており、足裏に魔力を込めていなければまともに歩くこともままならない。


 「君たち凄いねー! お姉さんが代わりに魔力を込めよう思っていたけど、自分たちでやっちゃうんだもん。お姉さんびっくりだ!」


 「い、いえ、まさかジュデッカまでの道のりがこんなに辛いものとは思いませんでした」


 イルザは息を切らしながら歩みを進める。


 天然の洞窟ということもあり、坂や石段など物理的にも体力を消耗していく。


 「大丈夫かイルザ、ほら、掴まれ」


 体力面ではグレンのほうが余裕があった。段差を登ろうとするイルザに手を差し出し、引っ張りあげる。


 (・・・。)


 リグはそれを横目に見ていた。


 (あの二人・・・。どういう関係なのかしら。なんだか物凄く親しげにしてるし、というか子供とはいえ思春期ぐらいの子、それも男の子一人に対して女の子が三人ってどういうことなの? ああ! もう! いつもの私なら平常心を保てるのに物凄くやきもきするわッ!)


 「ええっと・・・、リグさん。俺、またなんかやらかしました?」


 リグの視線は無意識に鋭くグレンを貫いていた。


 「ななななんでもないわ、と、ところで二人は・・・じゃなくて、皆さんはどう言った関係なのかしら?」


 誤魔化しきれたか一抹の不安を抱えるが、話題を変えてみる。


 「関係か、そう言われてみるとどうなんだろうな。なぁイルザ?」


 「そこで私に振るの?」


 「一応、年長者だし」


 「そうだけど、まぁいいわ。一応は余計だけれど」


 エルザを段差から引き上げ、一息つく。


 (神界器(デュ・レザムス)のことは悟られない方がいいわよね・・・)


 「私達は家族みたいなものですよ。私たち姉妹含めて皆、孤児なんです。ですので、グレンもスミレも弟や妹みたいな感じです」


 嘘はついていないから、なにか突っ込まれてもどうとでも言えるだろう。咄嗟の判断としては中々の出来だと少し鼻を高くするイルザだった。


 「そう・・・失礼なことを聞いてしまったみたいね。ごめんね」


 「いえ、いいんです。結構楽しく暮らしていますし」


 「なら良かったわ。でも、どうしてジュデッカに? 豊かとはいえない国だし、観光できそうなものも特にないわよ?」


 聞かれるだろうと思っていたが、実際聞かれると困ったものだ。孤児の、旅人で、子供の集まり。理由を考える材料をフル回転の脳内で考える。


 「おとぎ話とかが大好きで、特に千年戦争が。北の国にその遺跡があると噂で聞いたので皆で観に行こうっていうことでジュデッカに訪れたんです」


 これも真実。なんとかそれっぽい理由に繋がっただろうと確信する。


 「そっかー! それならお姉さんが遺跡に近い王都まで案内しちゃおうかなっ!」


 「本当ですか!? 助かります」


 「いいのいいの。お姉さんも王都に帰るつもりだし、ついでのついでよ」


 リグは今の会話の中で確信を得た。この四人は神界器(デュ・レザムス)に関係している者達だと。千年戦争の遺跡は騎士魔王と側近であるリグ、配下の五人の騎士しか知らない情報である。それが外部に漏れるということは、神界器の所有者か、関係者であることは確実。


 確かに、おとぎ話などでは北の地に封印されたなどの描写が多いが、ジュデッカにあるとはおとぎ話どころか歴史文献にも記載されていない。それが子供の好奇心だけで突き止めるのは不可能だ。


 リグはイルザ達を王都へ招き、拘束する必要があると踏んだ。


 (・・・、私の初恋。終わりそう・・・。)


 ほんのちょっぴり、いや、かなり落ち込むリグだった。


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