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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十話 氷河の国
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堕ちました。


 「風はしのげるけれど、やっぱり寒いのは変わらないわね。それに、予想通り天然の洞窟迷路だわ」


 寒さをしのぐためにクレバス内に侵入したのはいいものの、奥は光の入らない洞窟になっており進むか否かでイルザ達は困惑していた。


 「・・・どちらにしても進まないと全滅しちゃう」


 「おいおいエルザ、あんまり物騒なこと言うな・・・。誰かが近づいてくる」


 何者のかが近づいてくる気配を感じとったグレンは腰のナイフの柄を握る。それに連なり、イルザ達も各々の武器を手にする。


 クレバスの外から現れたのは女性だった。フードを深くかぶり、白髪のセミロング、右目に眼帯、恐らくフードとマントの膨らみ方から獣人族だろうと予測する。


 「こんにちは、別に怪しいものじゃないですよ。旅の帰りでたまたま皆さんが間違えた道に入っていくのをお見掛けしたので声をかけさせていただきました」


 特に敵意などを発する気配はない。突如と現れた女性は両手をあげて自分は無害だと主張する。


 「旅の帰りって、ジュデッカの出身の人ですか?」


 イルザは警戒を解いて、女性に問いかける。


 「ええ、だから正しい道を教えてあげようと思って。この先を進んじゃうと抜け出せない迷宮になっているからね。あっ、そういえば名乗ってなかったね、私はリグっていうの、よろしくね」


 もちろん偽名である。過去に使用した偽名の中から適当に選んだ。今の偽名と似ているのでうっかり別の名前で返事することもないだろう、とリグレットは思案しながら挨拶のため右手をダークエルフの少女に出した。


 イルザは特に悪い人ではなさそうと感じたので躊躇い無くリグと名乗る女性と握手を交わした。


 「よろしくリグさん。私はイルザ。だけどいいのかしら、私達特にお礼できそうな物もお金も無いのですが」


 「構わないわよ、旅は道連れってね。それに大の大人が死の迷宮に直行する子供たちを見て見ぬふりするは出来ない性格なの、だから気にしないで」


 「ありがとうございますリグさん。ほら、皆も自己紹介して」


 感謝を述べ、イルザは妹達に自己紹介して行くように促す。


 「・・・エルザ。イルザ姉さんの妹。よろしくお願いします」


 「エルザちゃんね、お姉さんに似て美人さんだ」


 「スミレというです。よ、よろしくお願いします、です」


 「何この子すっごく可愛い! よろしくねスミレちゃん!」


 挨拶を握手ではなくハグをしてしまった。可愛いし、女性同士なので問題は無いだろう。しかし、イルザとエルザはダークエルフというのは確定的だが、このスミレという少女の種族はなんだろうか。鬼族にしては角が見当たらないし、悪魔族かなにかだろうか。初対面で直接聞くのはマナーがよくないから機会があればどこかのタイミングで聞いてみよう。


 「最後は俺だな、俺はグレンってんだ、よろしく頼むぜ」


 その時、リグレットに電撃が走った。


 黒髪黒目の少年。顔はそれなりに整っている。笑顔が眩しい。何より声が、聞くだけで耳や脳が蕩けてしまいそうだ。


 (えっ、なに、なんなの、この感じ、やだ、顔が熱い)


 「お、おい、大丈夫か?」


 顔を真っ赤に染めあげて人形のように虚空を見つめているリグの肩をゆするグレン。


 「はっ! 大丈夫・・・って、わわわわわわわわ! 触れないで触らないで近づかないで!!」


 肩に触れていたグレンの手を振り払い大きく後退するリグレット。


 「ええ・・・。その反応されるとかなり傷つくんだが、俺何かしたか?」


 「・・・初対面の女性に触れた」


 「いやいや、ぼーっとしてたんだから仕方が無いだろ!?」


 「あんたのせいで案内してもらえなくなったらどう責任とってくれるのかしら?」


 「ちょっとイルザさん? 笑顔が怖いんですけど? というか理不尽だよなぁ?」


 騒ぎ立てるグレンをよそに、スミレは息を整えているリグレットの側につく。


 「リグさん? 大丈夫です?」


 「え、ええ。ごめんなさい、取り乱してしまったわ。もう大丈夫」


 大きく深呼吸。溶岩のようグツグツの頭も元通り。普段の偽の自分に戻る。


 「失礼、グレン君。お姉さんちょっとびっくりしちゃったから気にしないで」


 「お、おう。でもなぜ目を合わせない」


 「さ、さーって! とにかく日が暮れる前に移動を終わらせましょう! お姉さんについてきてね!」


 グレンの指摘を聞かなかったことにし、リグレットは誤魔化すように移動を開始した。


 (なに、なんなのこの気持ち。いつもの私じゃないみたい。・・・。もしかして、これが恋ってやつなの!?)


 初めて抱いた恋心を自覚したリグレット。素性を探るつもりが特大の爆弾を背負ってしまった。完璧に諜報活動をこなしてきた彼女は恋の感覚など無知に等しかった。果たして一目惚れの初恋は成就するのだろうか。



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