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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第三話 鷲と蛇
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武器狩人


 「・・・グレン。どうして、どうして私たちがこんな目に・・・・・・」


 見えない敵の襲撃を受け、闇が広がるイラエフの森で休憩するイルザ達。敵が襲ってくるのは重々承知していたが、いざ直面してみると霧のように(まと)わりつく不安心が拭えない。


 グレンは分かっているであろう言葉を返す。

 

 「・・・その武器、“妖精の輝剣(アロンダイト)”を手にした時からこうなる運命だったんだよ。神がいるなら一発殴ってやりたいね」


 空を見上げてグレンは拳を突き上げる動作をしてみせる。

 平和に、静かに暮らしたかっであろう少女たちを戦いに巻き込んでしまった。そんな罪悪感が彼を責め立てる。


 だからこそ、自分に出来ることをやる。罠は通じないかもしれないが、やれることはやる。守るべき姉妹の為に。


 「イルザたちはここでちょっと休んでろ。簡単なものだけど罠を仕掛けてくる」


 「わかったわ。気を付けて・・・」


 深紅のマントのフードを被り、森の中へ走り去った。


 ここ数日の見回りでイラエフの森を網羅したらしい。グレンに任せても問題はないだろうと、言われた通りエルザと休息をとる。


 「・・・念の為に防御結界を張っておくね」


 エルザは小さいドーム状の結界を張った。地面に足を抱えて座っている姉の隣に腰を下ろす。


 「・・・姉さんは、グレンのことをどう思っているの?」


 当然の妹の問いに戸惑うイルザ。こうして姉妹二人で話すのは久々な気がする。状況的にのんびりと話をしている場合ではないだろうが、自分のグレンに対する思いを素直に打ち明ける。


 「初めて出会った時は当然驚いたわ。手には変な紋章が刻まれるし、人間の男の子は出てくるし、武器を巡る戦いが始まるし。とんでもないくじを引かされたなーって思ったわ」


 苦々しく笑いながら語るイルザ。そんなイルザを憐憫(れんびん)な表情でじっと見つめるエルザ。


 「だけどね、あの子が最初に口を開いたとき、『あなたを守護すべく召喚に応じました』って物凄く堅苦しい言葉遣いをしていたの」


 エルザは家に来てからのグレンしか知らない。砕けた話し方をする今のグレンからは想像がつかず、思わず驚いた表情を見せてしまった。


 そんな表情をみてイルザは微笑みながら話を続ける。


 「それでその後すぐにいつもの話し方になったの。記憶はないわ、行く宛ないわ、でも彼は前向きで明るかった。記憶がないのは私達が思っている以上に不安だと思うの。だから私は主従なんて関係なく彼の、グレンの力になってあげたいって思ったの」


 「・・・そっか、うん、そうだね」


 イルザの言う通りグレンはいつも明るかった。それも彼が記憶喪失だということを忘れるくらいに。


 そして、私達を守るために毎日頑張ってくれていた。そんな人間が裏で何かをしようだなんて考えるはずがない。


 完全に信頼できていなかったことを激しく後悔した。


 「・・・姉さん。私もグレンが私たちを守ってくれているように、私もグレンを守りたい」


 言葉が勝手に出ていた。エルザ自身、こんなことを言ったことに驚いた。


 「ふふっ、そうね! 戦いの時は頼りにしてるわよ?」


 エルザの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。嫌そうな仕草をするが、表情は嬉しそうだった。


 不気味なぐらい赤い月が暗い森を照らす。


 ふと不気味な空を見上げたら、月光とは違う小さな、力強い黄金に輝く光が見えた。


 (あれは何・・・?)


 その光はだんだんと大きくなる。


 「・・・プロテクション」


 いち早く危険に気がついたエルザは防御結界の外に魔法陣で構成された光属性の中級魔術の盾を作り出す。


 黄金の光は魔法陣に激突し、木々を揺らすほどの爆風を起こす。防御結界が無ければ吹き飛ばされていた。


 「やはり視えてはいても、長距離攻撃は精度が悪いな」


 大鷲の翼をはためかせる大男は空から猛々しい声で攻撃が当たらなかったことをぼやく。


 「さっきの攻撃はお前の仕業ね!」


 空に向かってイルザは敵意を剥き出しにして叫ぶ。右手には既に“妖精の輝剣(アロンダイト)”が握られている。


 「はっはっ! 如何にも! 早速だが自己紹介をさせてもらおう! 俺様は武器狩人(ウェポンハンター)、ホルグ・ラチェッサ。貴様の手にしている剣を奪いに来た!」


 ホルグと名乗る大鷲の頭と翼を持った男はイルザの持つ“妖精の輝剣(アロンダイト)”を指さし宣言する。


 「バカなこと言わないで! あんたなんかに渡すものですか」


 「はっはっ! ならば力ずくで奪うまでよ!」


 ホルグは翼で風を起こし、砂埃(すなぼこり)に姿をくらます。


 来るべき戦いの火ぶたは切って落とされた。



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