幻葬の鐘(セクステッド)
時を同じく、イルザ達の暮らすイラエフの森より遥か東。交易都市として機能している土地であり、様々な魔族が自慢の品を持ち寄り交易を行っている。その交易都市から外れた廃墟群に六人の魔族が集結していた。
「は~いリーダぁ☆ あたしたちを招集なんて随分珍しいじゃなぁい? もしかしてあたしに会いたくなってくれたのかしらぁ?」
「遅いぞ、お前が最後だレイン。時間は厳守しろ」
フードを深く被り、白髪セミロングを左前髪と一緒に束ね、右目には眼帯を装着している獣人族の女性が険しい表情で遅れてやって来た者を睨みつける。
「相変わらず根暗なことで安心したわリグレット」
睨みつけられたレインという女。鮮やかな赤色のストレートロングヘア、露出が多めの衣装は全身から満ち溢れる自信を現しているようだった。
「全員揃ったな。早速だが本題に入らせてもらおう。先日、ウナム峡谷の遺跡で神界器と呼ばれる武器と人間を発見した」
リーダーと呼ばれた茶髪の青年は立ち上がり、右手に身の丈を超える槍を出現させた。
「フム、一見出し入れ自由のただの槍のようだね。だけど、ボスがわざわざ僕たちを呼び出したんだ、余程の機能が備わっていると予想するのだがどうなんだい?」
細身の金髪、額には鬼の鋭い角を生やした幼い顔立ちをした青年、ジェラがリーダーに問いかける。
「こいつは千年戦争で実際に使われた武器だ。特筆すべきは既存の武具とは圧倒的に魔力の増幅量が違うところだ。試しに見せてやろう」
リーダーと呼ばれる青年は廃墟の奥から拘束した男を引き摺り出し、枷を解いて剣を与えた。
「一度でも俺の攻撃を防ぐことが出来たら今すぐ解放してやる」
「ほ、本当だな!? 防げばいいんだな? 約束は守れよ!?」
「ああ、守るさ。いくぞ」
槍が桜色の輝きに包まれる。剣を与えられた男は槍の突きを警戒し、薙ぎ払えるように構えを取る。
間合いは既に槍の範囲内。距離では圧倒的に剣が不利であるが、槍の軌道さえ見切ることが出来れば防ぐことは難しくない。
緊張と沈黙が廃墟を支配する。
それ破ったのは桜色に輝く槍の一突き。一直線に男の心臓部へ穿つ。
(見切った!)
男は自分の心臓めがけて迫る槍を剣で地面に穂先を叩き落とす。
「へぇ~誰かは知らないけどリーダーの攻撃を防ぐなんてやるじゃん☆」
その瞬間。
叩き落とされた穂先は地面に打ちつけられると同時に、折れるように穂先が反射して再び心臓へ延びる。
「なっ」
屈折した槍は見事に男の心臓を貫いた。男はそのまま意識を失い命を散らした。
「これまた奇怪な」
黒髪を一本の三つ編みに束ねた男、ロウが閉じていた瞳を見開く。
「このとおり、だ。俺の能力を使用せずともイメージと魔力だけで武器が反応する。神界器は十二種存在するという。今回お前たちを集めたのは、神界器をそれぞれ回収してもらうためだ」
「ねぇリーダぁ、用件は理解したけど、一つ聞いてもいいかしら?」
「ああ、分かる範囲で応えようレイン」
「確か遺跡で見つけたのってぇ、その神界器と人間って言っていたきがするんだけどぉ。その人間ってどこ?」
「その場で殺したよ。必要性を感じなかったからな」
「Hoo! 残酷ぅ~、だけどそういうところが素敵☆」
不敵な笑みを浮かべるレイン。高揚しているのか血だまりに倒れている男の頭蓋を足で踏み砕いた。
「その人間は神界器と共に現れるのかい?」
ジェラはグラスに入っている赤い液体を回しながら訪ねる。
「武器を手にした魔族を守護するために召喚される。生かすも殺すもお前たちに任せる」
「了解したよ」
赤い液体を一気に飲み干し、ジェラは立ち上がり、その場を去った。
「私も一足先に行かせてもらうよ」
続くようにリグレットも廃墟を去る。
「お前たちはどうするんだ」
残りのメンバーにリーダーは問いかける
「オレはこの都市に用があるのでな、しばらくはここに滞在する。今は追われる身で神界器を扱う魔族を見つけたが暴走を起こしてしまったよ。リーダーも気をつけるんだな」
「ああ、ある程度の調査は済んでいる。」
「ふ~ん、ロウも残るんだ。あたしは長旅で疲れちゃったから休んでから出発かなぁ。にしてもオルフェも相変わらず無口ね」
「・・・・・・」
オルフェと呼ばれた男は一言も発さない。その姿は灰色のロングコートに覆われ、フードを深々と被り顔が見えない。
「あんたみたいな無口がリーダーの右腕っていうのが納得いかないわ」
レインは不満を男の死体にぶつける。もはや原型は留まっていない。
「あっちゃぁ~、やりすぎちゃった☆」
魔界の盗賊組織、幻葬の鐘が動き出した。




