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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第八話 新たな足音
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ブラン・レポート1


 グレンも素早く入浴を終えて、イルザ達はブランの第一研究所へやって来た。建物は半壊しており、戦いの傷跡ははっきりと残っている。


 「資料室はこっちです」


 スミレが研究所を先導し、瓦礫とヒビだらけの通路を歩く。持ち主を失った館はどこか氷のような寂しい冷たさを感じる。


 「この部屋と、隣の部屋がそうです」


 小さい体で重厚な扉を開ける。その中は床から天井までびっしりと詰まった本棚で埋め尽くされていた。


 「すっげぇ量だなこりゃあ」


 予想以上の書物の量に驚きの声を漏らすグレン。


 「確かにしらみつぶしに読んでいったらキリが無いわね。ねぇスミレ、神界器(デュ・レザムス)関連の棚ってどの辺りにあるか分かる?」


 「えっと、魔界文字は読めないので正確には分からないですが・・・」


 そう呟きながら狭い資料室を進んで行くスミレ。


 「恐らくこの辺りの棚にあると思うです」


 イルザはスミレが指をさした棚に目をやる。ずらりと並ぶ濃紺の背表紙には魔界文字で『レポート・神界器』と綴ってあった。


 「あったわ。私は資料に目を通していくから、エルザはグレンとスミレと一緒にそれっぽい資料を探してきて」


 「・・・わかった」


 二人を引き連れて隣の資料室へ移動するエルザ。


 イルザは資料室の片隅にある閲覧用のテーブルに着き、資料を開く。



 『~神界器(デュ・レザムス)

 私は愛を求め続け、魔界を旅していた。

 魔界の月光に導かれるように荒れ地を進んでいた私は、今まで見たことのない祭壇へ迷い込んだ。その祭壇には黄金に輝く宝玉があり、私は自然と宝玉に触れていた。』



 (まるで日記みたいね・・・。それに、まるでグレンとの出会い方と同じ)


 資料の内容は日記形式で綴られていた。前半部分はスミレとの出会い、そして隷属化したスミレを連れて情報収集を行いつつ魔界を巡ったと記されている。


 これといって欲しい情報が無かったので、要所要所を読みながら次から次へとページをめくっていく。すると、千年戦争の遺跡に関する記述を見つけ、イルザは読み進める。



 『極光の月弓(アルテミス)を手に入れて半月ほど経った。私は宛てもなく、ただひたすら北へ進んでいた。


 そして私は雪渓を歩いていると、巨大な氷山、いや、氷漬けになった遺跡に辿り着いた。極北の地は千年戦争とゆかりがあるとは知っていたが、興味が無かったので実際に足を運ぶのは初めてだった。


 クレバス状の入口に入り、奥へと進んで行く。地面が踏み固められていたので、少し前に誰かが来ていたのだろう。


 遺跡の奥は氷の壁に囲まれた人工的な造りとなっていた。壁一面には、恐らく人間界か天界文字が書かれていた。そして氷柱が十二本。その内の一本が黄金に輝きだし、それに連動するかのように左腕の百合の紋章が強く光った。


 輝く氷柱は激しく振動し、地面の中へと沈んでいく。そして天井から石板が下りてきた。その石板は少々崩れているが魔界文字で書かれている。


  其は月の女神宿■し弓

  月光をもって幻想を射る

  月の女神■■を喰らう

  精神を乱すこと勿れ

  ■の幻想 主に依存す

  絶えず幻想を創造せよ

  神の器統べし時 ■の再来

  魔の王により封印す


 この先の文字は全て読むことが出来なかった。


 私が手にした極光の月弓(アルテミス)というのは、神が宿る武器なのだろう。そして、他にも存在する。柱の数は十二本、つまり残り十一の武器を統べることで、何かが起こる。


 一度、情報を整理する必要があるだろう。


 私の研究所はそう遠くない、一度戻るとしよう』



 (北に遺跡があるのね。それにしても、また謎が増えてしまったわ。千年戦争・・・ただのおとぎ話じゃ済まなさそうね)


 そしてパラパラとページをめくっていく、神の器を神界器(デュ・レザムス)と名付けたことなど記述されていたが後半部分はそれらしい情報は無かった。


 本を棚に戻し、隣にある二冊目のレポートを手に取った。


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