表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第七話 神月は輝き
57/125

百合


 「主様!?」


 イルザ達の戦いをただ見ることしかできなかったスミレは、ブランの異変に気がついた。


 「あれは主様ではないです! 何かが、主様を乗っ取っているです!」


 スミレはイルザに大声で伝える。


 「やっぱりそうだったのね」


 ブランは苦しそうに頭を抱えながら雄叫びをあげる。


 「ウガアアアアッッ・・・ス、スミ、レ、アアアア・・・ニゲロ」


 雄叫びの中ブランはスミレの名を口にする。


 「主様!」


 スミレはブランの元へ駆け寄る。


 「チカ・・付くナッ!」


 しかし、不用心に近づこうとするスミレを牽制した。イルザはスミレの手を掴み近づけさせないよう自分の身に引き寄せた。


 「神界器(デュ・レザムス)ハ・・・キケンだ・・・。今カラ・・・施設ごと・・・私ヲ、破壊する・・・」


 ブランは体を無理やり引きずり、部屋の奥にある壁掛かっている箱を叩いた。


 「いったい何をしたの⁉」


 「今言っタ・・・通り、だ。キミ達も・・・サレ。意識ガ・・・もうモタナイ」


 大声で雄叫びをあげる。顔の半分まで侵食していた百合の紋章は、いつの間にか全身に回っていた。


 「・・・姉さん、急ごう」


 微力ながら魔力を回復させたエルザは、意識を失っているグレンを背負って呼びかける。


 「そんな! 嫌です! 私は、主様を救うのです!」


 「駄目よ! きっともう手遅れだわ、ブランはもう助からないわ!」


 「何か方法があるはずなのです! 何か!」


 イルザはスミレの手を引くが、それを拒絶するようにその場に留まるスミレ。


 「ウガアアアアッッッアアアアアア!!!」


 自我を完全に失ったかのようにその場で暴れだすブラン。だが再び動きを止める。


 「ガガ・・・もう、イイノダ・・・スミレ」


 「主様?」


 振り絞るように失われつつある自我を保ちながら最期の言葉を残す。


 「ワタシは・・・救わレタの・・・だ。アイ・・・をもら・・・タノダ。アリガ・・とう。ス・・・ミレ」


 「そんな・・・私は・・・生きて主様を・・・」


 ブランの言葉を聞き届けたスミレはその場に留まる力を失った。イルザはスミレを抱えて出口へと走った。


 出口手前で一度振り返ったが、そこにはもう化け物しか残っていなかった。


 「・・・空間が振動している。早く脱出しよう」


 純白の部屋を出るとエルザが待っていた。


 「ええ、一気に駆け抜けるわよ!」


 元来た道を全力で、夢中で駆け抜けた。エントランスホールに辿り着いた頃には空間の振動がより激しくなっていた。


 「もうすぐで出口よ!」


 イルザとエルザは転がるように出口へ飛び出した。


 それと同時に背後にあった第二研究所は、捻じれながら圧縮され空間の穴に飲み込まれた。建物は跡形もなく消え去り、平らな地面だけが残った。


 「・・・ギリギリセーフ」


 あと一歩遅れていたと思うとぞっとした。


 「主様・・・」


 スミレは力ない声で呟いた。


 外はすっかり夜である。魔界の赤い月光がイラエフの森を照らす。


 「スミレ・・・」


 イルザは無理やり引き離したことに少しだけ罪悪感を抱いていた。だが、スミレを見捨てることはできなかった。そこに後悔はなかった。


 暫くの沈黙の後、スミレの左腕にある百合の紋章が輝きだした。


 「え・・・っ?」


 スミレの手の平には黄金の宝玉が収まっていた。


 「主様は・・・救われた・・・ですか?」


 宝玉は握りしめ、静かに問いかける。


 「ええ、スミレの言葉は・・・愛は確かに届いたはずよ。届いたから、スミレを生かすために自分を犠牲にしたのだと思うわ」


スミレはイルザの返事を聞いて、静かに涙を零した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ