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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第三話 鷲と蛇
15/125

鍵穴

 (意識が遠のく・・・)

 

 命からがらでイルザから逃げたホルグ。“極光の月弓(アルテミス)”手元からなくなっていた。


 “蛇咬閃(じゃこうせん)”で拘束・爆破された後、“極光の月弓(アルテミス)”を湖へ落としてしまったのである。


 毒に侵されもう飛ぶ力を失ってしまった。地上へ降りどこへ行くということでもなく、ただひたすら森を歩む。


 音も風の気配もわからない。唯一分かることは、このまま毒によって衰弱死する運命にあるということだけだった。


 (くそ・・・なんて・・・毒を・・・仕込みやがるんだ)


 歩く力ももうない。木陰に腰を下ろすと幾分か楽だったが、全身を駆け巡る焼けるような激痛は治まらない。


 誰かが近づいてきている。足音が地面を伝ってくる。


 視力ももうない。視界は霞み、輪郭はぼやけ、色でしか判断がつかない。


 顔をあげて近づいてきたものを確認する。


 サファイアのような美しい青色をした人間。見覚えがある。


 “極光の月弓(アルテミス)”をホルグに託した少女。


 「ああ・・・お前か、悪・・・い。弓・・・失くし・・・ちまった」


 「・・・・・・。 ・・・・・・。」


 何か話しているのは分かる。だが、聴力もほぼ残っていない。


 「・・・・・・。 ・・・・・・。」


 (心配・・・。してくれているのだろうか。ほんの少しの間の付き合いだったのにな・・・)


 ホルグは今にも力尽きそうだった。しかし、心は温かい気持ちに包まれていた。


 「・・・」


 (なにを言っているんだろうか)


 少女がポツリと何かを呟いた。その呟きは黄金の光となり少女の周囲を包む。


 するとホルグの首筋に鍵穴の形をした模様が浮かぶ。


 「・・・」


 (なにか・・・光って・・・っ!?)


 鍵穴を中心に輪が構成され、ホルグの首を締め付ける。


 (なんだ!? なんなんだこの輪っかは!?)


 「・・・です」


 温かい気持で包まれていた心は冷たい恐怖に支配される。


 首を締め付ける輪は、少女に纏う同じ黄金の光を放つ。


 (ぐっ・・・!)


 ホルグは音もなく爆発した。遺体は跡形もなく消え去っていた。


 「お疲れ様・・・です」


 巫女装束の少女は氷のように冷たい声と虚ろな瞳でそう言い残し、その場を去った。




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