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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十一話 輝く星の魂
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神の傀儡

好きなポケモンのタイプははがねです。



 「へぇ〜、結構ヤるじゃない? あたし、あんたみたいな中途半端に強い子好きよ? 楽に死ねないもの、もっと苦しんだ表情を見せて!」


 レインの変則的な動きと息を一切乱さない連続攻撃にイルザは苦戦していた。


 空、地中、建物、全てがレインにとっての大地なのだ。


 “美勝の穿脚(パラディオン)“の能力は選択した万物を踏むことができる。選択されなかった物は通り抜け、選択したものだけが触れることができる。イルザはそう推察するが対策が思いつかない。


 例外として神界器だけは選択することが出来ないようだ。突破口の材料ではあるが、イルザは防戦一方だった。


 レインは地中に身を落とし、姿を隠す。


 どのようにして地上のイルザの位置を察知しているのかは不明だが、せめてもの足掻きとして凡庸魔術である“カデージ“で宙に足場を作り、地上から距離を取る。


 「空に逃げたって無駄よ、無駄! あたしから逃げられると思ったら大間違いなのよ!」


 地中からの跳躍。音速を超える速さを乗せた蹴りは、イルザを空中から叩き落とした。


 「そろそろ遊びも終わりにしようかしら? 焔魔族(スルト)の炎、じっくり味わってよね⭐︎」


 「そう簡単に終わらせてたまるもんですか!」


 イルザの周囲に幾つもの短剣が現出する。今までは二本までしか“妖精の輝剣(アロンダイト)“を現出させることができなかったが、レインに追い詰められた事によりその数を十本まで増やした。


 直接斬れないのなら、直接斬らなければいい。手持ちの“妖精の輝剣“は防御に回し、現出させた短剣を射出することによって遠距離から斬ることができる。


 「叩けば響くものねぇ〜? 面白いじゃない、あんたの剣とあたしの炎、どっちが強いか勝負しようじゃない!」


 レインの“躍進する者(エボブラー)“の能力、“躍り狂う炎舞(フレイム・ダンス)“によって“美勝の穿脚(パラディオン)“に炎が渦巻く。炎が脚と一体となり、深緑の輝きと共に炎の色は緑へと変化する。


 イルザは周囲に浮かぶ短剣をレインの周囲に取り囲むように配置する。そして、交差させるように短剣を射出させた。


 「つまらない攻撃ね!」


 イルザの攻撃を見切ったレインはそのまま飛び上がり、緑の炎を纏った脚を落とす。


 (―――炎を、斬る!)


 イルザは観る。目に映した炎を断ち斬ることをイメージする。


 ”妖精の輝剣(アロンダイト)”は蒼白に輝きイルザの”断斬覗想(ブレイド・ファンタズム)”が発動する。


 一閃、


 ”妖精の輝剣”は緑炎を裂いた。


 しかし、斬ることができたのは炎のみで”美勝の穿脚(パラディオン)”を斬ることは出来なかった。


 「あたしの炎を斬られるとは思わなかったわ~。素人同然の剣術で炎だけを斬るなんてナメた真似してくれるじゃない」


 「その素人にナメられるのは、あんたの恰好以上に不快そうね」


 「あら~? あたしの黄金比の肉体に嫉妬しちゃってるのかしら~? 残念だけどオトコを誘惑する以外でも露出する意味はあるのよね~☆」


 全身の皮膚を露出する意味…?


 情欲的なレインの態度に惑わされていたが、今の言葉でレインの弱点に気が付いた。


 「あなた、肺で呼吸していないようね」


 イルザの言葉に僅かだがレインは表情を乱した。


 「……参考までにどうしてそうだと思ったか聞かせて貰おうかしら?」


 「胴体を見れば分かることよ。あなたの胸に肺呼吸の動きがないもの。それに何度も攻撃していれば嫌でも呼吸は乱れるはずなのに、あなたはその素振りすら見せなかった」


 「へぇ、よく見てるのね。そうよ、正解ついでに教えてあげる。あたしの炎は生まれながらにして強すぎたの、それも自分自身を焦がしてしまうほどにね。力を制御できなかったあたしは肺を焼いたわ。そして肺呼吸を失ったあたしは炎で大気を燃やすことによって皮膚での呼吸手段を得たのよ。それからあたしの炎はあたしに従順になったの」


 レインの炎は意思を持っているかのように自在に大気を燃やし尽くす。


 出会ったときのレインは炎を出していなかった。推察するに激しい動きをするときだけ炎による皮膚呼吸が必要なのだろう。つまり、中庭に立ちのぼる炎を消しさえすれば窒息に追いやることができる。


 だが、現実的にそれは不可能だ。


 イルザの魔術では広大な城の中庭の炎を鎮火することができない。


 「今、ここの炎を全部消したらあたしを倒せると思ったでしょ? 無駄よ、無駄。めんどうだから燃やしてるだけで、こうやって身体の周りだけを燃やせば済むのよ☆」


 レインの周囲に火の粉が舞う。炎を操る技術はイルザの予想の遥か上をいく。


 圧倒的なまでの実力差に成す術がない。リスティアを戦闘不能にまで追いやったレインという女のレベルは80を容易に越しているだろう。現時点のイルザでようやく60。レベルという指数は存外当てになるようだ。


 「消すまでもないわ、あなた自身を斬ればいいだけ」


 「出来るのかしら? 能力は称賛に値するけれど、経験が違うのよ」


 息を呑む。


 数カ月前まで平穏を過ごしていたイルザにはレインほどの戦闘経験は無い。ジュデッカでの鍛錬は決して無駄ではなかったが、訓練と実戦はコインの裏表のように同一であっても交じり合うことはない。


 勝算がない闘い。果たして生きて帰ることは出来るのだろうか。


 突然、イルザ達の周囲が闇に染まる。


 「この闇…まさか!」


 闇に包まれているはずなのに自身や他者の姿ははっきり見える。完全な暗闇ではない不自然な闇、イルザは過去に経験していた。


 『アロ、ン……ダイト…。アロンダイトオオオオォォォォォォォォッッ!!!!!』


 イルザが貫いた地面の底から響く怨嗟の雄叫び。腹を抉るような声は”極光の月弓(アルテミス)”の所持者だったブラン・アルブが神蝕した時のものと同じだった。


 地面の穴から藤紫色の閃光が噴水のように噴き上がる。空高くまで昇ったそれは光の雨となり炎がつつむ中庭に降り注ぐ。


 イルザは即座に複数の短剣を宙に現出させ、光の雨を弾く。細く鋭い雨を全て弾くことはできず、通り抜けた雨は傷を作る。


 光の雨が止む。


 全身の傷が激しく痛む。横やりを入れるには少しばかり加減をしてほしい。


 そして姿をみせた神蝕体は人型であるのにも関わらず、ジェラードの面影は一切残していない。全身が藤紫色の針に覆われた針達磨のような姿をしていた。


 「これがウワサの神蝕ってヤツ? きもちわる~っ☆」


 光の雨を地中で防いでいたレインは地面から飛び出るや否や、仲間であった神蝕体の姿をみて嘲笑う。


 「あんたの仲間だったのでしょう!?」


 「はいはい、定番のセリフありがとうございます~。そいつ、見境なしに攻撃してきたわよ? 自我なんてありゃしない神の傀儡よ」


 「神の傀儡…?」


 レインの言動からして神蝕について何か知っていると感じた。


 「ほ~ら狙われてるわよ☆ モテる女は罪よね~☆」


 レインは”美勝の穿脚(パラディオン)”を使って闇の中へ姿を消す。


 レインの言う通り、神蝕体の全身が脈動し、イルザを見ているようだった。肉体が脈打つたびに全身の針が濃い鉄紺色を帯びていく。


 『ウゴァ――――――ッッ!!」


 体を丸めた神蝕体は、雄叫びを上げるとともに全身の針を全方向に突き伸ばした。


 「しまっ―――」


 針がイルザを貫こうとしたとき、目前で動きが止まった。


 「ウガ、ウゴゴガァ――――――ッッ」


 神蝕体は呻き声をあげながら見えない何かに拘束されているようだった。そして、闇の外から男の声が響く。


 「退けレイン。目的は達成された」




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