表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第三話 鷲と蛇
12/125

合流・鼓動


 「きゃあああぁぁっ!」


 力と力のぶつかり合いに負けたのはイルザだった。魔力で強化した“真空斬”だったが、“音翼の極光ソニック・オブ・アルテミス”とぶつかったのは衝撃波の部分だけだった。


 万全の態勢で矢を放つことのできたホルグの方が一枚上手で、爆風に巻き込まれたイルザは湖に向かって吹き飛んだ。


 「・・・姉さん!」


 「待て、ここから出るな」


 落ちていくイルザを助けに、隠れていた場所から飛び出そうとしたエルザを男の声が止めた。


 「・・・グレン! 無事だったのね」


 フードで顔が隠れていたが、声でグレンだとすぐに分かった。走ってきたのか息を切らしている。


 「ああ、足止めをくらったが何とか追いついた」


 「・・・でも無事でよかった。・・・姉さんが湖に、助けに行こう」


 グレンの手を強く握り懇願(こんがん)するエルザ。だが、グレンは真剣な表情でそれを拒否した。


 「いや、イルザはまだ無事だ。さっきの戦いを見ていたからな。エルザにはやってほしいことがある」


 「・・・だけど」


 今すぐにでも助けに行きたいのだろう。声が弱々しく、震えている。さっきまで強く握っていた手は力が抜けていた。


 「大丈夫だ、今からいう作戦は結果的にイルザを助けることになる」


 グレンは強く手を握り直し、エルザを勇気づける。どこか納得していないようだったが、しばらく考えて口を開く。


 「・・・・・・。わかったわ。グレンを信じる」


 「ありがとう、それでエルザにやってもらいたいのは陽動だ」


 「・・・陽動?」


 陽動の意味は分かっているが、なぜこのタイミングで陽動する必要があるのか理解できなかった。


 「いいか、あいつはまだ俺に気づいていない。恐らくあいつは目が凄くいいか、透視が出来るか、あるいはその両方の能力を持っている可能性がある」


 確かに、見えない場所からの狙撃は目がよくないと出来ない。グレンの言っていることが正しいと感じ頷く。


 「だから、気づかれる前に俺があいつを仕留める。そのための陽動だ。エルザは目をくらませる強い光を放つ魔術を使えるか?」


 「・・・うん。光属性魔術でそういうのはある」


 「なら合図と同時にあいつの目の前でぶっ放してくれ」


 「・・・わかった」


 グレンは腰の麻袋の中に手を入れる、エルザはいつでも魔術を使えるように杖を構える。そして二人はその時が来るまで煙を見つめて様子をみる。





 爆風によって吹き飛ばされたイルザ。体は湖へ墜とされる。


 水面が体を勢いよく叩きつけ、全身に激痛が走った。意識はまだ保っていたが、激しい魔力の消費と身体へのダメージで体を動かすことが出来ない。


 (ああ・・・体動かないや)


 底が深い湖、体はどんどん闇に沈んでいく。


 (あの攻撃が今できる私の全力だったのに・・・。やっぱり戦い慣れていないから辛いな・・・)


 自分の戦闘経験の無さを痛感する。戦ったことがあるのは知性の無い魔獣程度。知性をもって理知的に戦う相手は初めてだった。


 (だけど・・・このままだと、あの子たちを守れない。守りたい。強くなりたい)


 自分を悔やみながらもなお、守ること、戦うこと、強くなること願う。


 (力を・・・力を貸して“妖精の輝剣(アロンダイト)”)

 イルザの呼びかけに答えるように手の中に“妖精の輝剣(アロンダイト)”は現れ、蒼白に強く、神々しく輝きだす。


 (守る力を貸して・・・! あいつを、倒す力を!)


 深い闇に染まった水中に、一点の光が闇を打ち消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ