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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十一話 輝く星の魂
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鮮血の焔姫

ブルーマウンテンのコーヒーが飲みたいです。


 暴徒で溢れている街。イルザ達は屋根を伝って王城へと向かう。


 闇属性初級魔術”ロビスクリッド”。対象の身体を魔力によって強化させる魔術である。これによって基礎体術は飛躍的に上昇し、身の丈を超える高さの壁であろうとひとっ飛びできる。


 もちろん移動だけでなく対人戦でも必須ともいえる魔術である。体術は格闘技術だけでなく”ロビスクリット”の練度も勝負に影響が出る。


 イルザ達はジュデッカで戦い方を老スヴィニナ師範に、まず初めに叩き込まれたのがいかに長く、いかに効率よく、いかに練度の高い”ロビスクリット”を使用し続けられるか。


 戦闘の達人である傲鬼スヴィニナの域でおよそ二十四時間、質を落とすことなく”ロビスクリット”を使用できる。


 それに対してイルザは長くて三十分、人間族のグレンに至っては五分も保たなかった。


 こうして今現在、移動手段として”ロビスクリット”を惜しみなく使用できるのはジュデッカでの厳しい修行———、という名の”ロビスクリット”を起きている間は使い続ける日常を送ったおかげである。


 理性を失った暴徒となってしまったラ・ヴィレスの民は見境なく街中を荒らしに荒らしている。街路樹を焼き、ゴミ箱をひっくり返し、建物のガラスを破る。全ては神界器の所有者を探すため。


 中には己が野心に萌える者も存在した。他の暴徒とは違い、理性は働いているので屋根を跳ぶイルザ達を状況から判断して見つけることができる。


 その度に足止めを食らうが、グレンの煙玉などの機転によって無傷で王城までたどり着くことができた。


 「城の警備どころか誰もいないわね」


 イルザは城門から離れた草陰に身を隠し、城の状況を確認していた。


 「この国の魔王は”幻葬の鐘セクステッド”と繋がっていますから、ロウの魔王を捕らえたというのはデマでしょう。だとしても警備が薄すぎる・・・。警戒は怠らないように進みましょう」


 訝しげな表情を浮かべるリスティア。


 城というのは住居でありながらも防衛機能を備えた軍事的な施設でもある。城塞都市であるラ・ヴィレスの城は戦闘に特化した要塞である。


 そんな施設に警備が薄い状況がある、という時点で異常なのだ。城門、中庭、エントランス。警戒強く慎重にかつ素早く中へと足を進めるが、兵という兵はいない。


 エントランスにたどり着いた三人は息を呑む。玉座の間へと続く長い階段にまだ新しいのか、ぬめりけのある赤黒い痕がこびりついていた。


 「ひでぇな・・・」


 グレンは漂う腐臭に思わず鼻を塞ぐ。階段を見上げると腑を引き出された者、骨の隙間をなぞるように肉を裂かれた者、皮膚だけを剥がされ悲痛な表情を浮かべて絶命している者。様々な死が転がっていた。


 「ハァ・・・・・・ハァ・・・ッ———」


 突如、イルザの呼吸が大きく乱れ始めた。血の気が引き、顔は青々としている。


 「どうしたイルザ!?」


 「わからな・・・い・・・。けど、大丈夫・・・。たぶん、臭いにやられたのかもしれないわ、ごめんなさい」


 イルザの顔色は血の気を帯びていく。呼吸もゆっくり深くできている。


 イルザ自身も何故いきなり精神を乱したのか理解できなかった。鼻を刺す腐ったような生臭い臭い。その臭いが引き金になったのは確信を得ているが、理由がわからない。


 「この死体・・・。まさか———」


 転がる死体を見澄ましていたリスティアが何かに気づいたその時———。


 「はぁ〜い⭐︎ まさかホントに自分たちから来るなんて思わなかったわ〜! でも遅すぎ。遅すぎて退屈凌ぎにオモチャをたくさん壊しちゃったじゃな〜い」


 勢いよく玉座へと続く扉が開かれ、陽気な声と共に現れたのは燃えるような鮮血色の髪をした女性だった。


 ギリギリ局部が見えるか見えない程の露出が広い服装。というかほとんど紐だ。すらりと伸びた両脚には沈丁花の紋章が浮かんでいた。そして手には縄を手にしている。


 リスティアの表情が険しくなる。


 「彼女は”幻葬の鐘セクステッド”のレイン・スカーレットです! でも何故ここに!?」


 「へぇ〜・・・、あたしのこと知ってるんだ。男はともかく女に覚えられているなんて珍しいわ」


 肢体を滑らせるように階段を歩み降りる。その姿は蝶のようだった。


 グレンがゴクリと音を立てたのをイルザは聞き逃さなかった。


 「スケベ・・・!」


 「あんな格好されて反応しねぇほうがおかしいだろ!? いくらなんでも際どすぎんだろあの紐は!!」


 必死のグレンの弁明。確かに胸の部分もそうだが、下———鼠蹊部がかなり際どい。


 「いっや〜ん⭐︎ だけど自分に正直なオトコのコはか・わ・い・い♡ お姉さん、昂ぶっちゃうわ。ねぇ・・・いいコトしない?」


 自らの体を抱きしめて胸の谷間を強調させるレイン。黄金比率ともいえる肉体美に引き寄せられそうになるグレン。


 「し、しねぇよ!! オメェなんか興味のカケラ一つねぇからな!!」


 「ええ〜! ひっどぉ〜い! こう見えてもお姉さん、処・女、なのよ? キャ⭐︎」


 「・・・処・・・女・・・・・・だと!? ———っは!?」


 イルザとリスティアの視線がとても冷たく痛かった。リスティアが特大の嘆息をするとやれやれと口を開く。


 「グレンくん、気をつけてください。彼女の誘惑にかかった男はもれなくミンチにされますよ。ここに転がっている死体のように」


 「あら⭐︎ よくわかったわね? ちょうどいいタイミング⭐︎ ついさっきオモチャが壊れちゃったからここに捨てに来たのよ」


 レインが手にしている縄を引っ張ると、扉の奥から鈍い音をたてて何かが引き摺られている。そして黒い塊がどさり、と階段を転がる。


 「これは・・・」


 一同はその物体を目にして苦い顔をする。


 炭化した肉の塊。もはや原型は留めておらず、死の表情すらわからない。


 「なんでもするから助けてくれー! ってのがそいつの最期のコトバ⭐︎ なんでもするなら死んでね⭐︎ って言った時の表情ときたら・・・ハァァァンッ———堪らないわ!」


 恍惚の笑みを見せるレイン。


 ガンッ———。


 一本のダガーがレインに向かって打たれた。


 「つまらない攻撃ね」


 レインは踵を上から振り下ろしダガーを地面に沈める。その脚には深緑に輝くブーツが装着されていた。


 「やはり貴方は危険な人物です。ここで仕留めさせてもらいます」


 ダガーを拳で打ったのはリスティア。拳を引き、二撃目を打とうとする。


 「もうはじめちゃうの〜? でも仕方ないからいいや⭐︎ 二名サマごあんな〜い!」


 レインは魔法石を取り出して石に込められていた魔術を行使した。


 イルザとグレンの足元に魔法陣が現れ、二人を地面に飲み込もうとする。


 「何!? 強力すぎて防げない!?」


 イルザは魔力を全身に纏い、抵抗してみるも圧倒的な魔力量で魔法陣に飲み込まれる。


 「イルザさん!! グレンくん!!」


 リスティアは攻撃を中断して二人を救おうと手を伸ばすも間に合わなかった。


 「彼女たちを一体どこへやったのです!!」


 「教えるわけないでしょ? あんたはここで死ぬんだからサァ!!!!」


 焔魔族スルトの炎が階段を包み、紅蓮の中に不釣り合いな深緑が輝く。

 


 


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