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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十一話 輝く星の魂
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長耳の使徒


 軽く食事を済ませたグレンとアウラは図書館へ足を運んだ。


 見た目もさながら、図書館の中も床は赤い絨毯で敷き詰められていたり、観葉植物や良さが分からない奇妙な絵画が飾ってあったりと高級感のある内装となっていた。


 それもそのはず、国立中央図書館が位置するのは治安の悪い港町や下町ではなく、魔王の城が近い上流階級の住う街だ。


 アウラがきっちりと服装を整えていたのは上品な住人が多い街で違和感を出さない為でもあった。


 図書館の入口から奥へと進もうとするとアウラがグレンの肩を軽くたたく。


 「グレンさん、これを渡しておくので、何か聞かれたらこれに書いてある名前を名乗って欲しいっス」


 小声で耳打ちしながら手渡してきたのは、一枚のカードだった。


 「これは?」


 「たぶんこの国の身分証っス。念のためと思ってくすねておいて正解っスね」


 アウラの目線の先には装置で作られた一人が通れる通路があった。どうやらカードをかざすことでゲートが開いて入館できるシステムのようだ。


 「擦られた本人には申し訳ねぇがありがたく使わせてもらうか。にしても、いつの間に手に入れてたんだ?」


 アウラはにししと笑って誤魔化した。こいつ絶対まともな大人にならねぇぞ。


 そんなやりとりを終えいざゲートへ。


 ゲートにカードをかざすと小さな仕切りが開いた。それと同時に自分にしか見えない小さなモニターにこう映し出されていた。


 『閲覧区画B』


 身分によって閲覧できる書物に制限があるようだ。


 この国立中央図書館には三つの区画で閲覧できる権限が分けられている。アウラが手に入れた身分証は中間の閲覧ランクBだったのでそこそこ入り込むことができる。


 無事館内に入ることができた二人は、手当たり次第に区画Bの神に関する書物を読み漁った。





 「あーダメだ! 単語がいちいち難しすぎる! よく辞書も見ないですらすら読めるな」


 グレンはある程度の魔界文字を読むことができるが、学術書となると辞書がなければ意味を解くことができない。


 それに対しアウラは、辞書に頼ることなく素早く必要なところだけに目を通しては本を積み上げていた。


 「慣れっスよ慣れ。でもまぁこー見えてもボクは勉強家っスからね。普段からバリバリ読書してるっスよ。グレンさんもどんどん読書することをオススメするっス」


 器用にも読書をしながら会話をしている。アウラの本の虫具合はエルザに匹敵するのではなかろうか。見た目は軽そうなやつなのに思慮深いし、勤勉家というのはギャップの大セール。女性だったらかなりの優良物件だが、悲しいことに男だ。


 「読書ねぇ・・・」


 読書らしい読書をしたのは旅に出る前だ。魔界文字をエルザから教わって、幻想物語(ファンタジー)恋愛物語(ラブストーリー)を数冊———。


 人間族と魔族の言語体系は変わっていて、言葉は共通だが文字は別。文法は似ているので単語の意味を解ければある程度読むことができる。なのでアウラの言う通りたくさん読書をするのは単語の意味を覚えられるので理にかなっている。


 「文字を読むのは頭が痛くなるぜー。みたいな顔してるっスよ」


 「やかましいわ! その通りなのが余計に腹立つな」


 「どーどー。一旦休憩にしたほうがよさげっスね」


 ぐっと伸びをするアウラ。グレンの何倍ものペースで学術書と睨めっこしていたのだから休憩を挟むいい頃合いだろう。


 「そっちの成果はどうだ? 何かわかったか?」


 「んにゃ、全然っスねー。神界器(デュ・レムザス)自体が出てこないのでどの書物も空振りに終わりそうっス。神界器は諦めてダークエルフに絞って調べたほうが良さげっスね」


 「アウラでもダメか。この調子じゃ見つからなさそうだな」


 「調べごとは根気と根性っスよ! 当たりを引くまで本を漁り続けたら勝ちっス」


 「それって砂の中から砂金を探すのと同じじゃ・・・」


 グレンは大きく呼吸して気分をリセットした。


 アウラの言う通り、欲しい情報を探し当てるのは根気のいる作業だ。だがその集中力にも限界というものがある。座って作業をするのは性に合わないので、席を立ち館内を軽く散歩することにした。


 館内には学生や研究者っぽい人から主婦まで、様々な人々が溢れている。閲覧区画Bというのは比較的立ち入りやすいランクなのだろう。


 この国の在り方はどうも息苦しく感じる。国民が国に管理され、階級付けを明確にして生活している。慣れてしまえばどうということはないのだろうが、ジュデッカのある程度の自由な国民性を体験した後だと窮屈だ。


 ラ・ヴィレスの魔王はどんな人物なのだろうか。


 リスティア曰く、国民に姿を見せたことはないらしい。だが、この国の貧富の差は恐ろしく激しい。ラ・ヴィレスの魔王はジュデッカの魔王ニルスと違い、国民に関心が無いように思う。


 人間観察をしながら館内を歩いていると一冊の本に目が留まった。


 『長耳の使徒』


 長耳―――、確かにダークエルフは人間に比べて長耳だ。とはいえ他の魔族にも兎っぽい奴もいるしダークエルフとは限らないだろう。それでも不思議と、グレンはその本を手に取った。


 内容は神話をアレンジした幻想物語(ファンタジー)


 ―――白き長耳族は神に仕えし者。十二の神々は白き長耳族に権能を貸し与え、白き長耳族は世界の均衡を保っていた。


 ―――愚かな人間族は使徒を捕らえた。権能を我が物にせんと黒き長耳族を創り出した。


 もしかしてこの書物は当たりじゃないか? グレンは息を呑んで頁を捲る。


 ―――黒き長耳族は不完全だった。権能を神から預かることは無かった。


 ―――白き長耳族の使徒のひとりが愚かな人間族と手を組み、外なる神を呼び起こそうとした。


 ―――神の怒りに触れた使徒は愚かにも人間族とともに滅び去った。


 ―――白き長耳族「エルフ」。神に仕えし星に叛逆せし種族。


 これだ。エルフは人間族とともに滅んだ。黒き長耳族というのはダークエルフのことを指すのだろう。だが、黒き長耳族についての記述は他に見当たらなかった。


 そもそも、これは物語だ。誰かの創作であり史実ではない。


 信憑性は限りなくゼロに近いが、種をまかなければ実が生らないように元になった史実が必ず存在するはずだ。「エルフ」という存在を確認できたことは非常に大きい。


 グレンはすぐさまアウラに本を見つけたと報告した。


 「興奮気味で目が血走ってて怖いっスよ」などと言われたがスルーした。


 時間が許す限り歴史に関する書物を漁ったが結果は芳しくなかった。いっそのこと物知り顔の賢者が突然現れて答え合わせをしてくれないだろうか。そううまく物事が進まない現実に少しだけ嫌気がさした。


 結局わかったことは、過去にエルフが存在していたこと。嘘か誠か、エルフは神の使徒で世界のバランスをとっていた。そして神を裏切り、人間族とともに滅んだ。ダークエルフは人間によって生み出された。くらいだった。


 闘技大会の開催まで残り一週間と五日。イルザ達が動き出すまでまだ時間があることが救いだとグレンは感じた。



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