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ダークエルフ姉妹と召喚人間  作者: 山鳥心士
第十一話 輝く星の魂
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乗船前


 「ふざけるなてめぇー! 俺様ひとりで優勝くらいできらぁ! とっとと船に乗せやがれ!」


 船着き場で怒声が響く。背の高いリーゼントの男と、小柄の少年が乗船の受付で揉め事を起こしている。これがいわゆる理不尽なクレームなのだろう。この手の揉め事は根気が必要だ。どちらかが折れない限りは決着はつかない。


 イルザとグレンとヴェンデの三人は大会の受付登録と乗船の手続きの為、受付に並んでいた。三人はその様子を遠巻きからみていた。


 「ですから、大会への参加条件として最低五人、最大十人のチームであることが条件なのです。どうかご理解を―」


 「んなことしらねぇよ! ここに書いてあんじゃねぇか『参加自由』ってよ!」


 「その下に注意事項として先程申し上げた条件も掲載しております」


 どれどれとイルザは地面に落ちているチラシを拾い目を通す。でかでかと参加自由と書かれているその下には少し小さめの文字で注意事項が書いてあった。別に見えない程ではないので単なるクレーマーの注意不足だ。


 「後がつっかえていますので、どうぞお引き取り下さい。次の方どうぞ!」


 リーゼントの男は反論する言葉を失い、仕方なく列を抜ける。小柄な男の方は機嫌が悪そうに舌打ちした。


 「クソったれ、せっかく大金を手に入れるチャンスだったのによぉ・・・」


 「字を最後まで読まないお前が悪い」


 「んだとこら!」


 「やるか」


 列を抜けた二人は口喧嘩から殴り合いの喧嘩を始める雰囲気を漂わせる。


 「うへー巻き込まれたら厄介そうだ、なぁイルザこの場からとっとと離れようぜ」


 「そうね、早い所受付を終わらせて船でのんびりしましょう。―――あれは」


 お互いに睨みあっている男をよく観察すると左側の首から頭にかけて入れ墨か入れてあることに気がついたイルザ。その入れ墨はよく見るとサボテンの花のようだった。


 神界器の所有者が刻まれている紋章には共通点がある。それは何かを象徴するように必ず花や植物の模様になっている。イルザの右手の甲と左腕には彼岸花と百合。ヴェンデの背中と右胸には菊と蘭といった具合だ。


 「ねぇグレンもしかしてあの二人、神界器の所有者なんじゃ・・・」


 「そうかもしれねぇが、関わるのは面倒くさそうだぞ・・・」


 周りには聞こえない程度の声で相談する。大会のルール上イルザのチームは残り二人加入させることが出来る。何が起こるか分からないので上限いっぱいの人数を揃えるのが安牌だが、寄せ集めで連携が出来なければ元も子もない。


 かといって偶然とはいえせっかく見つけた神界器の所有者をみすみす見逃すわけにもいかないが、今にも殴り合いを始めそうな男の第一印象は最悪である。出来れば見なかったことにしたいので、ひとまず受付の順番が回ってくるまで様子を見ることにした。


 「そもそもこのチラシを持ってきたのはおめーだろうが! ええ? ラウドよぉ!?」


 ラウドと呼ばれた小柄な少年は鋭い三白眼でリーゼントの男を見上げながらも睨み返す。


 「俺は持ってきただけだ、お前をそれをよく読まずバカの一つ覚えのように村から飛び出した。いい加減そのちんけな脳みそを取り換えて慎重に物事を進めるように考えることを学習するんだな」


 リーゼントの男の頭の血管が切れる音がした。


 「んだとてめー! 今日という今日はどたまに来たぜ、今度こそブチのめすぞコラぁ!!」


 「ふん、お前のバカさ加減にはいい加減飽き飽きしていたところだ。シルヴィには申し訳ないが今日こそはその首刈りとってやる」


 啖呵を切った二人は間合いをとり、構えに入る。そして、左顔にある入れ墨は闇色に輝く。手には小型の鎌とその鎌の柄には錘がついた鎖が垂れている。鎖鎌の神界器。


 イルザの予測通り、二人の男は神界器の所有者だった。


 「やっぱり神界器!? ど、どうしよグレン!」


 「どうするっつったって、止めに入るしか。いやでも、どんな神界器か見てみたい気も――」


 などと言っている傍から二人の男の喧嘩に野次馬が次々と集まってくる。血の気がある喧嘩を肴に好き勝手煽りを入れる野次馬たちに囲まれる。


 「シルヴィさんを泣かせるわけにはいかねぇ、女を泣かせたとあっちゃあ漢が廃るってもんだろうが。この不肖バジル・ノア・クセル、てめぇとの因縁、晴らさせてもらうぜ」


 「ふん」


 バジルと名乗ったリーゼントの男は鎖を回す。同じように小柄な男ラウドも鎖を回す。


 二人の間に緊張が走る。野次馬の喧騒など全く耳に入っていない。時が止まるような集中力で空間を支配する。


 錘が空を鳴らす。


 鎖で攻撃するのか、相手に巻き付けて阻害するのか、あるいは鎖はブラフで、鎌での攻撃が本命なのか。


 イルザとグレンは静かに見ていた。この読みあいのなか、先に動くのが有利なのか不利なのか。もし自分があの鎖鎌を相手にした場合どう動くか。頭の中で同じ状況をつくりだし、シミュレートする。


 動いたのは。同時。


 鎖の錘を相手に投げての全く同じ攻撃。そして同じ動作でその錘を屈んで避け、相手の懐へ走り出す。


 走りながら二人は鎖を引き、投げた錘を引き戻し、背後からの攻撃を狙う。


 だがそれも二人同時に避け、錘は中央でぶつかり合う。


 鎌が届く位置まで来た二人は互いの首を狙って振りかさず。全く同じ動作。このままでは相討ちになる。


 「―――なっ!?」


 「―――!?」


 二人は驚愕した。首を刈り取っているはずの腕が途中で止まっている。いや、止められていた。


 「何もんだてめぇ!」


 バジルは喧嘩を強制的に止めた鎧の男に啖呵を切る。


 「お前さんたちよぉ、くだらねぇことで喧嘩してんじゃぁねぇよ。俺たちのチーム、ちょうどお前さんらの分が空いてるんだがぁどうだい?」


 喧嘩を止めたのはヴェンデだった。“軍神の武鎧(グラディウス)”を身に纏い、二人の動作よりも素早く間に潜り込んで腕をつかみ動きを止めた。


 「げっ! おいイルザ、勝手に仲間に引き入れようとしてるぞ」


 「きっとヴェンデのことだから何か考えがあるのでしょう。それにあの二人、強いわ」


 なにか感じるものがあったのだろう。見た目通りけんかっ早く短絡的だが、悪い雰囲気を感じさせない。特にリーゼントの男からは何か力強い信念のようなものを感じる。ヴェンデはそれを感じ取ったのだろう。


 「おい、鎧の。早くその手を離さねぇとてめぇのその汚ねぇ首から刈り取るぞ」


 「仕方がねぇなぁ、ほい」


 ヴェンデがそう呟くと同時にバジルとラウドはその場に倒れこんだ。


 掴んだ腕を引き寄せ、体勢を崩した一瞬でバジルの顎に掌底、ラウドの鳩尾に肘を入れ気絶させた。


 「おーい、イルザの嬢ちゃんよ。こいつらぁも一緒に参加登録してくれ」


 騒がしかった野次馬たちはヴェンデの見えない早業に言葉を失い、静まり返った。


 「もう・・・目を覚ましたらちゃんと面倒見てよ」


 呆れながらも渋々バジルとラウドを仲間にすることを承諾したイルザ。大会受付はイルザ・エルザ・グレン・スミレ・リスティア・ヴェンデ・アウラ・コルテ。そして急遽ヴェンデが拾ってきたバジルとラウドの計十人での登録を終わらせた。

 

 乗船切符を人数分受け取り、ラウンジでイルザ達を待つ仲間の元へ戻る。気絶した二人の男をみたアウラは頭を抱えていたが、事情を聴くと目覚めた後の二人のケアは自分に任せてほしいと遠い目でアウラは申し出た。


 向かうは東の国、ラ・ヴィレス魔王国。

 

 航路はまず初めに島国で交易都市として機能しているメルカトゥラ島で一旦船を降りる。その後、大会参加者用の送迎船に乗り換え、ラ・ヴィレス魔王国を目指す。


 

 


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