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第88話 針金のような

イタチはじっと目をらした。



ピョーン、ピョーン と



影は体を横っ跳びに跳ねながら



少しづつ飯山との距離を縮めて行く。



飯山が歩くのを止めると影も動かない。



イタチが影に意識を向けると



急にせまって来るように拡大した。



「うわ」



思わず驚いて声が出てしまった。



目の前に拡大されたその影は



ガリガリにせこけ、



体は針金のように細くて、



異常に大きな頭には肉がなく、



骸骨がいこつに皮膚が張り付いている。



眼球は眼窩がんかの奥深くにくぼんで



ギョロギョロとずる賢く光っていた。



飯山が歩き出した。



影がだるそうに



腕をダランと下げたまま



横っ跳びに飯山との距離を



どんどん縮めて行ったとか思うと、



不意に飯山の耳元で



ガチャッと口を開けた。



口はあごが外れたかと思うほど



胸元近くまで拡がった。



頭からひと飲みにするつもりなのか。



それとも頭を食いちぎる気か。



その大きく開けた口で



飯山の頭めがけて



ガブッとみ付いた。



突然、



飯山が何かにつまづいて



前のめりによろめいたが、



異様な気配を感じたのか、



ハッと後ろを振り向いたのと、



「ガキッ」っと



頭スレスレで



とがった歯が噛み合わさったのが



同時だった。



「あっ」と驚愕の眼で飯山が叫んだ。



慌てて手に持っている拳銃を



手当たり次第にぶっ放した。



「ギャー」



針金のお化けが



悲鳴を上げてひっくり返ると



頭が地面にはずんで



ガラガラと音をたてて転がった。



飯山が撃った弾が



タイミングよく化け物の頭をつらぬいたのだ。



「危ねえ。危ねえ。



さっき俺の耳元に息を吹きかけたやつは



あいつだったのか。」



イタチの背中にひやりと



冷たいものが流れた。



たぶん



元気のいいイタチには食いつけないだろうと



あきらめて



弱っている飯山を狙ったのかも知れない。



それにしてもどうして



針金のようになってしまったのだろう。

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