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第8話 羽音

編集済みました。

霊子線を



半分近くにまで



切られてしまった



若い男の意識が



朦朧もうろうとしてきた。



恐怖に気が動転して



何が何だか



まったくわからない。



まわりは



けたたましい笑い声と



はやしたてる嬌声きょうせい



騒然としている。



霊子線は



切られてゆく。



「あーっ」



悲鳴を上げたが



声にならない。



どうなってしまうのか。



固唾かたずを飲んで



見ていることしか



出来ないのだ。



とそのとき



バサッ



と羽音がした



かと思うと



凶暴男の姿が



忽然と消えた。



見ると



真っ黒で



大きな



(からす)のような鳥が



ふわっと、



寝ている男の



足元の空間に



浮いていた。



大烏は



頭を斜めにかしげて



キョト、



キョトと



あたりを



見回している。



そして



そのくちばしに



凶暴男が



くわえられていた。



大声で



わめきながら



手足をバタつかせているが



離してもらえない。



「俺を誰だと思ってるんだ。



放せ、



この馬鹿鳥が。



くそー、



放さねーかー。」



大烏(おおからす)



凶暴男を



からかうような



とぼけた顔で



すましていたが、



突然



パクン



とくちばしを開けた。



「あー」



凶暴男は



叫びながら



下に落ちて



(ゆか)ではずんだ。



「くっそー、



ふざけやがって、



なめんなよー。



俺の本当の力を



知らねえなー。



わからせてやる。」



手下達の前で



恥をかかされ、



逆上のあまり



体を包んでいるオーラが



怒りの炎と化して



激しく燃え上がった。



異常なほどの興奮で



肩で息をしながら、



ゆっくり



立ち上がると、



大烏に向かって



身構(みがまえ)えた。



すると



凶暴男の背中から



ズルズルーッ



と黒く短い毛におおわれた



羽がはえてきた。



「あ、



こうもりの羽だ。」



私は驚いて



息を飲んだ。



激しい怒りが



体を変身させるのだろう。



そして



その男の体が



みるみる



ふくらんで、



大烏と



同じ大きさになった。



筋骨(きんこつ)隆々(りゅうりゅう)、



着けている



真っ赤な甲冑(かっちゅう)



肩から背中にかけて、



ズラリ



とがった



長い角が



とび出ている。



手と足にも



鋭い鉤爪(かぎつめ)



はえて



光っていた。



口は大きく



横に()けて、



目は狂気をはらんで



真っ赤に燃えている。



「ギャー、



ギャー、



ギャー」



人間とは思えない



不気味(ぶきみ)な声で



大がらすを



威嚇(いかく)していたが、



剣を右斜め上段に構えて



ジリッ、



ジリッと、



間合いを()めて行った



かと思うと、



ビュッ



と振り下ろした。



ザッと



()(さき)



大烏の胸に



()り込まれた。



鋭い一撃に



バラバラッ



と斬られた羽根が



あたりいちめんに



舞い散って、



まわりを



取り巻いている



手下達の上に



舞い落ちた。



「ウギャー、



やっちまえー、



殺せー」



手下達が



かさにかかって



一斉(いっせい)



()えかかる。



こうもり男は



すっかり



気をよくして、



自信満々



グッ



と腰を落として



剣を斜め下段に



身構えた。



しかし



大烏は



何を考えているのだろう。



顔を



よく見てみよう



とでも思ったのか、



首を伸ばして



頭を



ヌーッ



と、こうもり男に近づけた。



「しめた。」



こうもり男の真っ赤な目が



思いもよらないチャンスに



狂喜して



キラッっ



と光った



その一瞬、



下から斜め上に



剣を突き上げた。



ビュッ、



鋭い音が



空間を斬り裂いた。



「やった。」



誰もがそう思った。



次の瞬間、



強烈な衝撃を



脳天に受けて



こうもり男の体が



グラッ



と、崩れ落ちた。



それは



一瞬の出来事だった。



大烏は



くちばしの先に



剣をかすめさせながら



かわした



瞬間、



体勢が崩れた



こうもり男の脳天に



電光石火の



強烈な



くちばしの一撃を



炸裂(さくれつ)させたのだ。



ウオーッ、



手下達は恐れおののき



(あわ)てて



後ろへ下がった。



あなどれない相手だ。



大烏から距離を離して



様子をうかがっている。



いつのまにか



死神の手に



鎌は戻っていて、



手下達が



大烏とこうもり男の戦いに



気を取られているうちに



姿を消していた。



鎌は常に



死神を探して、



鎌のほうから



戻って行くのだ。



ふわっ、



と大烏が



寝袋の上に



浮いて止まった。



「あ、



足が三本ある。



こんな(からす)がいたのか。」



私が不思議に思いながら



見ていると、



大烏は



自分の背中の羽根の間に



くちばしを入れた。



そして



何かをくわえて



そっと



取り出した。



金色に光る



小さな粒だ。



それを



寝袋の中の



男の真上から



落とした。



金色の粒は



スーッ



と落ちて行って、



心臓の上に



着地すると



少しの間



うずくまって



じっ



としていたが、



すっ、



と長い足が出たかと思うと、



切られた霊子線のところへ



一直線に



近寄って行った。



そして



セッセ、



セッセ、



と一心不乱に



幅の広い



金色の糸を出して



傷口を



貼り合わせ始めた。



みるみる



傷口はふさがって、



徐々に



体に活力が



よみがえってくる。



よく見ると



女郎(じょろう)蜘蛛(くも)のような



足の長い



金色の蜘蛛だった。

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