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第78話 侵入者

外に出ると夜もだいぶけて、



行き交う人々の中に



酔って騒いでいる若者や



ほろ酔いで次の店を探して



立ち止まっている会社員達などが



通行を妨げている。



二人は連絡を取り合うことを



再度確認して別れた。



発角はこれからの対応に



思案を巡らせながら歩いて行く。



酔ってはいるが



頭は妙に冴えて冷静だった。



雑踏にまみれて、



とあるマンションの入口の前に立つと、



つけられていないか確かめるように



辺りを確認してから



扉を開けて中に入ると



エレベーターを使わずに



階段を上って行った。



三階まで行くと



通路の奥まった部屋の前に立った。



怪しい者がいないのを確認すると



ドアの鍵を鍵穴に近づけながら



下のほうを見た。



「おやっ」



貼りつけてあったセロテープの



片方が剥がれている。



部屋を出るときには



必ずドアとドア枠の下のほうに



セロテープを貼って



誰かが開けたかどうか



わかるようにしておくのだが、



誰か部屋に入った者がいるのだろうか。



一瞬発角に緊張が走った。



どうすればいいのか。



しばらく躊躇していたが、



このまま思案していたところで



どうなるものでもない。



開けて中を確認するしかない。



サイレンサーを付けた拳銃を



バッグから取り出して構えると、



思い切ってドアノブに手をかけた。



そして音が出ないように回し



ドアをサッと引いて開けると



ドアに隠れた。



部屋の中はシーンと静まり返って



物音がしない。



発角は慎重に



ドアから顔を出して中を見た。



人がいる気配がない。



どこかに隠れているのか。



俺にこんな舐めたことをするやつは許せない。



怒りがふつふつと湧いてくる。



そのまま音を立てずに



部屋の中へ入り込んだ。



暗闇の中を油断なく身構えながら



バスルームを開けた。



誰もいない。



廊下の右側の扉が開いている部屋も



拳銃を構えて



中へ飛び込んだがいなかった。



そしてベランダのある



ダイニングルームの扉を開けた。



忍び足で中へ入ると



壁に体を沿わせながら進んで行った。



徐々に暗闇にも目が馴れてきて、



部屋の中の様子が



目をこらすと手に取るように



見えるようになった。



その部屋に



誰もいないことを確認すると



最後に残った部屋の



ふすまに手をかけて、



一つ深呼吸したあと



力まかせに一瞬で開けると



拳銃を向けた。



しかし部屋の中には



誰もいる気配はなかった。



発角はホッと息をつくと



電気のスイッチを入れて



明るくなった部屋を



あらためて見回した。



そして



ソファーにドサッと腰をおろすと



拳銃を前のテーブルの上に



そっと置いた。



「しかしどういうことだ。



何者かが侵入して



何かを持ち出したのか。



それはないだろう。



そのような重要な物は



ここには置いていない。



証拠につながるような物も



ないはずだ。」



発角は大丈夫だと思いながらも、



あれこれ考えて不安に駆られた。



「うまくいっているようだな。」



「へえ、細工はまかせてくだせえ。



ここで不安と恐怖を植えつけておけば、



後の仕事がやりやすいです。」



入口近くの



誰もいない真っ暗な部屋の中で



ヒソヒソと微かに声がした。

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