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第71話 尾行

荒谷が幹部四人と出て来て



事務所の前に止めてあった



高級外車のところまで行くと、



若い組員がサッとドアを開けた。



後部座席に荒谷と幹部二人、



前に一人と運転手役の一人が乗り込むと



車が走り出した。



「よし、行くぞ。」



薮金が促した。



四人は何食わぬ顔で



寺野組の前を通り抜けると



荒谷の外車の後ろを



見失わないようにつけて行く。



日が落ちてあたりは薄暗く、



ライトを点灯した車が



多くなっている。



追跡を赤信号がはばんでくる。 



前の外車が首都高速道路に沿った道を



渋滞に巻き込まれながら進んで行く。



見失わないように追って行くのは難しい。



間に他の車が割り込んで来る。



荒谷達は尾行されていることに



まだ気付いていない。



前の外車がウインカーを出すと



右折車線に入って行った。



尾行の車も間に数台の車が



入ったままついて行く。



信号を曲がって



しばらく行ったところで



前の外車が左に寄って止まった。



コンビニがあった。



運転している矢田が



止まろうとするのを



「止まるな。



そのまま通り過ぎて



少し先のところに止めろ。」



薮金が慌てて注意した。



車は少し先まで走って



駐車してある車の前へ



隠れるように止まった。



「いまりましょう。



このチャンスを逃したら



きょうもダメですよ。」



矢田が勢い込んで言った。



「いや、やつは車から出て来ないだろう。



車から出て来なければ



どうにもならないな。」



薮金が冷静な口調で言った。



コンビニへ買い物に行った



運転手の幹部が袋を持って



戻って来ると車を発進させた。



外車をやり過ごしてから



矢田もゆっくりと発進した。



金曜日の夜は人も車も往来が激しい。



すでに日は落ちて



暗くなっている。



「なんか変だ。」



運転している矢田が突然言った。



「どうしたんだ。」



三人がいっせいに矢田を見た。



「どうもさっきから気になっているんだが、



ずっと後ろをつけて来るやつがいるんだ。



何者だ。」



ルームミラーをちらっと見ながら



矢田が言った。



陰日と釣羽が後ろを振り向こうと



体をひねった。



「こっちが気付いたことを



相手に悟られるな。」



薮金が注意を促した。



「どんな車だ。



何人乗っているかわかるか。」



薮金が矢田に聞いた。



「たぶん黒のセダンですが



車の中まではわかりません。」



矢田がスモークを張った



リアウインドウを通して



ルームミラーで確認しようとしたが



暗闇の中、



後ろの車の色と車の中までは



よく確認することは出来なかった。



前を行く外車が



ネオンまたたく繁華街の中に入って行く。



道路の両脇に車が駐車してあって、



その間を人が横切っている。



外車はスピードを落とすと



十字路を左に曲がって、



その先を右に曲がったところで



左に寄せて停車した。



四人組の車は外車の脇を通り抜けて



少し行って左に止めてから、



矢田がルームミラーで



後ろの様子を探った。



「あれ、つけて来た車が消えた。」



全員がいっせいに後ろを振り向いた。



濃色のスモークを透して



荒谷達がビルの中へ



入って行くところが



見えているが、



後ろを付けて来た車は



どこにも見当たらなかった。



すぐさま、釣羽が通行人を装って



荒谷達の行き先を確認するために



車を降りてビルのほうへ



歩いて行った。 



陰日は意識の中から



声が聞こえて来るのを



不審に思っていた。



昨日からなんだか心の中が



ザワザワして落ち着かない。

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