第64話 ワイドショー
どうなって行くのか。
思い通りに事態は
動いてくれるのか。
飯山は不安だった。
ここはしばらくは
鳴りを潜めて
様子を伺っておこうと思った。
連日テレビのワイドショーは
この事件の特集をやっている。
そして数週間が過ぎていった。
しばらくすると
警察の捜査も
飯山の身辺にまで及んできた。
警察は何らかの
確証を掴んでいるのか。
飯山からすると不気味だった。
一方、短絡的で
すぐ頭に血が上る荒谷は
現場に魔崎組のバッチが
落ちていたことで
魔崎組がやったと
断定してしまった。
「ただじゃおかねえ。
必ず仕返ししてやる。」
荒谷は怒りで
冷静な判断が出来なくなっていた。
それから、数日過ぎた。
荒谷は魔崎組に
報復する機会を
窺っていたが、
その間、
裏の情報網から
魔崎組の誰がやったのかを探っていた。
裏の情報網からは
様々なものが入って来ていたが、
その中で
特に引っかかるものがあった。
魔崎組の組員の幾人かの行方が
わからなくなっているというものだった。
「姿を眩ましやがったか。
それだ。
そいつらがやったに違いねえ。
やつらヤバくなったんで
高飛びしやがったんだ。
どっちにしても
矢場か田林がやらせたんだろう。
兵隊を集めろ。」
荒谷は完全に
魔崎組の幹部、
矢場か田林の仕業だと決めつけ
組員に召集をかけた。
警察も周辺の聞き込みを
シラミ潰しに行っている。
時限爆弾であることは
調べがついているが、
誰がどういう目的で
仕掛けたのかがわからない。
一方飯山は
この計画を島塚に担当させて
他の配下の者には知らせていない。
島塚はその手下を使って
解散した怒髪組の元組員を
大魔会と狂龍会に
以前から潜り込ませて使っていた。
これを仕切っているのが
熊虎組だと知っているのは
飯山、島塚とその配下二人の
四人だけだった。
潜り込こませた者には
高額の報酬を与えて
指示通りに仕事をさせていたが、
昔の仲間に会っても
自分がやっていることは
絶対に他言無用。
口外したら
命はないと言い渡してある。
飯山は一時的に
不安に襲われ気弱になっていたが、
考え直してみると、
証拠はバッチだけだから
関係者が口を割らないかぎり
絶対犯人はわかるはずがないと
飯山はふたたび確信を深め
安堵した。
しかし
人間はいつ心変わりするか
わからないものだ。
知っているやつは
最終的には
消すしかないと考えていた。