第28話 攻撃
「邪魔立てすると
為にならぬぞ。
王宮の
祭祀省の者だ。
無礼はゆるさぬ。
そなたらは何者だ。」
アデルコは
精一杯虚勢を張って
威嚇した。
祭祀省の名前を出せば、
これで
相手は恐れ入って
引き下がるだろうと思った。
しかし
恐れ入るどころか
全員が
鼻で笑うような様子で
お互い目配せした。
その途端
正面の男が
態勢低く
飛び込んで
剣を突き出した。
「あっ」
剣を抜く間もなく、
かろうじて
体をひねって
かわしたが
それを合図に
相手の攻撃が始まった。
アデルコの
護衛の部下達も
いっせいに
剣を抜いて応戦した。
「何をする。
私をアデルコと
知っての振舞いか。」
アデルコは
護衛に守られながら
叫んだ。
瓦礫を片付けていたと
思っていた者達が
このような狼藉を
働くとは
思いもよらなかった。
何者なのだ。
単なる
物取りでもなさそうだが。
まさか
あの男の
仕業か。
我等を
抹殺するために
わざわざ
土木作業者の中に
刺客を
紛れ込ませて、
網にかかるのを
待っていたというのか。
せっかく
ここまで苦労して、
宮殿の前まで
辿り着いたというのに、
こんなことで
挫折して
しまうとは。
悔しさが
込み上げて来た。
むざむざここで
命を落とすのでは
あまりにも
無念だった。
アデルコは
何かこの場を
脱出する方法はないか、
と意識の中を探っていた。
死ぬわけには
いかなかった。
だが護衛の部下が
次々負傷して、
人数が少なくなっていく。
私の運命も
これまでか。
死を覚悟した。
そのとき、
一瞬
ぱっと目の前が
開けたように
閃いた。
スイッチを
切り替えるんだ。
そうだ。
それだ。
操られるように
アデルコは
すぐに頭に取り付けてある
照明灯のスイッチを
切り替えた。
その瞬間、
暗闇に馴れていた目の中に
電圧の上がった
強烈な閃光が炸裂した。
「あっ」
強い光線に
照射された
方向にいた者達が
目を押さえて
動きが止まってしまった。
それに気づいた部下達が
それぞれ
照明灯のスイッチを
切り替えた。
強烈な光りが
一度に錯綜した。
刺客達は
目が眩んで
誰も
攻撃出来なくなってしまった。
「今だ。走れ。」
アデルコ達は
全速力で
刺客の囲いを抜けて、
地震で壊れた
宮殿の大門の中へ
一気に走り込んだ。