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第21話 総攻撃

編集済みました。

しゃがむようにして



潜んでんでいた



暗光大軍団が



ザーッ



と立ち上がったとき、



白狐軍は息を呑んだ。



思いもよらぬ兵士の数に加えて、



使い込んだ傷だらけの甲冑から



角の生えた



モジャモジャの頭、



耳まで裂けた



真っ赤な唇から牙、



痩せ細り目のくぼんだ



骸骨のような顔が出ている容姿が



目に入って来たからだ。



全員が満身創痍まんしんそういなのだが



ヘラヘラ笑っている。



どう見ても明らかな狂気だ。



れー」



誰かが叫ぶと、



一挙に殺気が噴出して、



すぐさま



敵の総攻撃が始まった。



ドドドドドド、



地響きと土埃を巻上げて、



今まで無言だった暗光軍から



ゴーッ



と地鳴りのような嬌声きょうせい



上がった。



「ウガー、



てめえら



一匹残らずわしらの餌にしてくれるわ。」



牙を光らせ



ガラガラした太い声で吠えると



武器を振りかざし、



突進して来た。



「うまそうじゃねえかー。」



「食いてえー。」



「待ってろー。



今すぐ食って差し上げましょう。」



口々に狐達をからかって



はずかしめると、



それが可笑しいのか、



興奮した加虐かぎゃくの馬鹿笑いが



ドッと上がった。



狐達はいやな気分を引きずりながらも



負けずに気持ちを立て直すと



受けて立った。



剣と剣の打ち合う音が激しくなる。



しかし、



暗光兵士が薄笑いを浮かべながら



剣を数合交わすだけで



白狐達の体は斬り倒されてしまう。



石器の兵士は



両手に持った棍棒こんぼう



ジャグラーのように



自由自在にあやつって



ガツン



ガツン



狐の頭を打ち砕いて行く。



八つ裂きにされ、



頭を砕かれ、



斬り殺されて、



白狐軍は



あっという間に



押し戻されてしまった。



暗光軍はかさにかかって



白狐軍に襲いかかる。



まずい状態になって来た。



いよいよ



軍団が総崩れになって



退却かと思ったとき、



ドン、ドドン、



ドン、ドドン、



ドン、ドドン、



あたりの空気をビリビリ振動させて



大太鼓の音が鳴り響いた。



っと、



白狐軍の後方に



黒い頭巾ずきん



すっぽり頭からかぶり、



黒い筒袖つつそで黒袴くろばかま



腕に籠手こて、足に臑当すねあて



全身鎖帷子くさりかたびらの集団が現れた。



どこから出て来たのか、



見ると



先ほど訓練していた



あの狐達だ。



隊列を組んで行進して来る。



十人一組になっていて、



それが百組ほどで構成されている。



黒ずくめの隊列が出揃ったところで



太鼓の音が止まった。



と思うと



サッと



周辺の樹木の中に散開した。



そして



それぞれが背負っている物を下ろした。



キビキビとした早い動きだ。



そのうちのいくつかの組が



何か筒状の物を



木々の幹につるでくくり付けた。



すると



他の組が袋から



中の物を取り出すと、



素早く



筒の中に放り込んで火をつけた。



ダダーン、



ダダーン、



ダダーン、



ダダーン、



立て続けに打ち出された玉は



味方の頭上を越えて



敵の中へ落下すると、



連続して炸裂し



暗光軍兵士達が



赤や青や黄色の星が広がる



花火と共に



空中へ飛ばされ



舞い上がって行く。



花火は次々撃ち込まれて、



不意を食らった敵は



大混乱になり



右往左往するばかりで



対処不能に陥ってしまった。



すると



今度は



花火と交互に



黒い玉が炸裂するようになった。



あたりは一面霞かすんで



見えなくなるほど



粉が舞った。



敵兵は目と鼻を押さえて



苦しそうに咳き込みながら



かろうじて戦っている。



辛子玉だ。



唐辛子や胡椒などの



細かい粉が飛び散る爆弾だ。



敵兵士の動きが鈍くなった。



頃合い良しと見たのか



「突撃」



鋭く短い号令がかかった。



瞬間、



鎖帷子の一団が



フッ



と消えたかと思うと、



突然、



敵中に現れた。



慌てた兵士が目をしょぼつかせ、



顔をしかめて



斬りかかって来る間をすり抜け、



剣を斜め上段にかまえた鎖帷子が



走り抜けながら



袈裟懸けさがけに



首を狙って斬り込んで行く。



辛子の刺激で目を押さえて



戦意を喪失している者に



勝ち目はない。



狐を馬鹿にして



あなどっていた暗光軍は



呆気なく



総崩れになってしまった。



「引けー、



引けー」



退却の命令が響き渡った。



その途端、



アメーバが



慌てて食手を引っ込めるように、



時空全体が



砦の穴に向かって



吸い込まれ始めた。



そして



勢いを増して行く。



みるみるアメーバの体は縮まって行って



最後の薄汚れた砦の大門が



ひっくり返るようにめり込んで



穴の中へ入り終わると



ぷつっと



閉じて消えた。



あとは



何事もなかったかのように



元の風景に戻っていた。



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