表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/136

第19話 ドーム

編集済みました。

必死に抵抗を試みている



ドーム型のバリヤーの振動が



益々激しくなって、



ちぎれそうになってきた。



「あー、限界だー。」



悲痛な叫びが



聞こえて来るような気がしたとき、



ビッ



と突然亀裂が入った。



途端、



パッシャーン、



巨大なシャボン玉のようなものが



真っ二つに割れて、



それがテッペンから



ボアッと両側に分かれ、



幕が下へ縮まるように



落ちて消えた。



「あーっ、」



一瞬



全員がそれに気を取られて



時間が止まったような感じになった。



何が起こったのか。



それと同時に、



いままで



バリヤーにはじかれていた



石と矢が



次々砦に届くようになった。



後ろへ下がらせなくさせていたものが



無くなったために、



戦っている暗光狐達は



どんどん押されて



大門のそばまで後退した。



しかし



門は開けられる様子もなく、



非情なまでに冷たく



閉ざされたままだ。



退却することは



許されていないのだろう。



結界は解けた。



「大門に火を掛けろ。」



大納言はここぞとばかりに



サンダ小隊長に命令した。



即座に



サンダ隊数十の隊列は



矢じりに油を含ませた



矢の束を積み込んだ雲に乗って



上空へ飛び立った。



そして



一列に連なった曲線を描いて



大門に急降下すると



油壷から火矢を引き出し



松明たいまつで点火すると



次々



射放って急上昇して行く。



そして



上空からまた急降下する。



まるで



火の玉を連射する



数十の龍が交錯して



襲いかかっているようにも見える。



炎が尾を引いて



大門に吸い込まれ、



タンタンタンタン、



と乾いた音をたてて



次々に矢が突き立って行く。



積み込んだ矢束を



すべて射尽くす勢いで



機関銃のように



連射している。



火がメラメラと板に燃え移って



広がって行く。



「あーっ、」



敵方から



どよめきが沸き上がった。



瞬く間に



火は勢いを増し



ゴーゴー



と音を立てて



炎を噴き出した。



煙と火炎が



天高く立ちのぼり、



けやき玉目たまもくの重厚な扉が



炎を噴き上げて



瓦葺かわらぶきの屋根にまで



火が回るのは



あっという間の出来事だった。



炎は情け容赦なく



勢いを増して行く。



突然、



ギギギーッ、



び付いた重い扉が



きしんだ音を立てて開いた。



いままで鳴りを潜めていた



砦の主だが、



門が燃え落ちそうな



火の勢いに観念したのか。



それとも



焼かれた門を破られて



受け身で応戦する惨めさを



避けるためか。



恐る恐る



細めに開いた観音開きの扉が



次の瞬間



勢いよくバーンと



木っ端微塵に吹き飛んだ。



残骸が宙を舞う中、



隔てるもののなくなった



むき出しの砦の内側に



無踏は緊張した面持ちで



目を凝らした。



どんな凄い奴らが



出て来るのだろうか。



しかし



真っ暗な闇が広がっているだけで



何もない。



砦の中は単なる闇だけだ。



本当に何もないのか。



結局



闇の兵士はこの外で戦っていた者達



だけだったのか。



なんとも気抜けした感じと同時に



疑心暗鬼で



敵の姿を巨大化していた愚かさに



可笑しさがこみ上げて、



思わず力が抜けたように感じた。



その瞬間、



ズドドドーン。



砦を囲っていた高い壁が



轟音と共に土煙を上げて崩れた。



土埃つちぼこりが一面に立ち込め



視界がさえぎられて、



暫くの間見通しが利かなかったが、



そのうち、



ぼーっと、



スモッグだかかすみだかわからないものが



現れてきた。



そして



その薄闇の中に



無踏は異様なものを見た。



何んだろう。



意識を集中した。



すると、



煤汚れた薄闇の中に



無数の影が片膝をついたまま



びっしりと



隙間無く詰まっているのが



はっきり見えてきた。



それも半端な数ではない。



薄暗い中に



真っ黒な頭が



隙間無く敷き詰められ、



そのひとつひとつの目から



めらめら



と憎しみの赤い炎が



燃え上がって光っている。



「出たーっ。」



全員が戦いを忘れて



茫然と固まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ