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第134話 煤煙

形固は左右の袈裟斬りを続けながら



覚陰に迫って行く。



覚陰は形固の周辺を



上に下に旋回しながら



大薙刀おおなぎなたを右斜め上に構え、



ギリギリに間合いを見切って



距離を保ちながら、



隙があれば切り込む気配をみなぎらせている。



そのため形固は



体を覚陰に正対するように保ちながら



袈裟斬りを続けて



隙を与えないように



しなければならなかった。



ということは



かなりのエネルギーを使ってしまうことになる。



両者は空中を上に下に飛び回り、



入り乱れて激しく打ち合った。



はがねが火花を散らす。



形固に疲れが見え始め、



刀を振り下ろす速度が落ちてきた。



覚陰はそれを待っていたのだ。



形固が右上から斬り下げて、



すぐさま左上に振りかぶり、



刀を振り下げ始めた一瞬、



覚陰の体が



太刀先をギリギリ見切って踏み込んだ。



動作が始動してしまったとき、



相手の動きの変化に



体勢を変えようとしても、



重心が乗ってしまっているため



変えることが出来ない。



おまけに速度は落ちている。



覚陰はそこをついて来た。



一瞬だった。



刀が振り下ろされたと同時に



薙刀なぎなたが形固の肩口へ突き出された。



受けられない。



鮮血が噴いた。



「うっ」形固の動きが固まった。



そしてグラッと力が抜けると崩れ落ちて、



激戦真っただ中へ落下して行った。



覚陰はそれを見届けると



飯山がとらわれている方向へ一直線に飛んだ。



飯山は形固の軍勢に取り巻かれ、



後方へ後方へと移動していた。



「待て。止まれ。」



覚陰の鋭い声が響いた。



その声に振り向いた形固の軍勢の一部が



空中に舞い上がり、



覚陰めがけて襲いかかった。



するとそれを取り巻くように



僧兵隊が姿を現した。



その途端、



僧兵が形固の軍勢に襲いかかった。



下からそれぞれの援軍が舞い上がる。



総攻撃の法螺貝ほらがいが鳴る。



下から矢が飛んで来る。



しかし形固軍は指揮官が倒され、



士気が上がらない。



ドン、ドドン、ドン、ドドン、ドン、ドドン、



太鼓の音と読経がだんだん近づいて来た。



その太鼓のそばで呪詛じゅそを行う集団が



空飛ぶ祭壇で護摩ごまいて



形固軍にのろいをかけている。



呪いの真っ黒な煤煙ばいえん



はえの大群かと思うほどき出して



形固軍に襲いかかる。



と同時に



煤煙が呪詛を行なっている僧兵ひとりひとりにも巻き付いて、



どんどん濃くなっていく。



その煤煙は細かい粒子に見えるが



拡大すると鋭い毒矢が集まったものだった。



それらが次々刺さって、



体に毒がまわって行く。



煤煙に巻き付かれた



形固軍と呪詛集団の僧兵達は毒にやられて、



エネルギーがどんどん吸い取られ、



気持ちがひどく悪く、



気分が非常に厭世的えんせいてきで重苦しくなって、



すべての意欲が失せて行く。



形固軍に嫌な気分が蔓延まんえんし、



急速にエネルギーが落ちてしまった。



それをのがさず



僧兵達は一気に形固軍を攻めた。



形固軍は耐え切れず総崩れとなって



消えてしまった。

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