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第128話 飛んで火に入る夏の虫

飯山はこんな不利な状況で



形固岩平かたこがんぺいに会いたくなかった。



これではどうやっても反撃出来ない。



形固は前組長の命をねらった奴だ。



その傷によって組長は命を落とした。



飯山はすぐさま裏の情報網を駆使くしして形固を割り出し、



捕らえて我が組長殺害の指示を出した黒幕を



自白させようとしたが



形固は義理を通して口を割らなかった。



そのため飯山としては



何が何でも口を割らせようと



拷問がエスカレートしていって



結果的に死なせてしまった。



形固はそれを自分は飯山に



集団でリンチされて



なぶり殺しにされたと思い込んだ。



飯山としては



極道世界の決まりごととして、



当然親分殺害の黒幕に仕返しをしなければ



男としてこの世界を渡って行くことが



出来なかったのだが。



しかし形固からすれば



堂々と真正面から命を賭けた戦いで殺されたなら



相手のほうの力が勝っていたのだから



仕方ないと思うのだろうが、



身動きもできないほど縛られたうえ



黒幕の自白を執拗に強要され、



集団で暴行を受けて殺された辱めは



男として許すことが出来なかった。



身動き出来ない者を



集団リンチの末殺害するなどということは



立派な極道がすることではない。



もともと頑固で執念深い形固は



死んでからもズーッと飯山をうらみ続けていた。



何が何でも復讐ふくしゅうしてやる。



うらみに燃えているうちに



形固の形相は鬼になっていた。



そしてこのように飯山が抵抗出来ずに



形固が思う存分怨みを晴らせる状態を



一日千秋いちじつせんしゅうの想いで待っていたのだ。



それはまさに飛んで火に入る夏の虫、



千載一遇せんざいいちぐうのチャンスだった。



形固はいままで溜め込んでいた怨みを晴らすために



六角棒で飯山をめった打ちにした。



火のつくような殴打おうだ



飯山は激痛と恐怖に戦慄せんりつした。



こいつのことだ。



ありとあらゆる残酷ざんこく復讐ふくしゅうをして来るだろう。



やりたい放題になる。



まずいことになった。



飯山はやんでいた。



まさかこんなところで昔殺した奴に出会うとは



思ってもいなかったのだ。



それにここがこんなにむごい世界だとは



まったく知るよしもなかった。



わかっていたらむざむざやられて、



このような不様ぶざま醜態しゅうたい



さらすこともなかったにちがいない。



飯山は無念の想いで歯噛はがみした。



形固は飯山を六角棒ろっかくぼうで叩き続けている。



手加減などする様子はない。



飯山はすでに身体を動かすことも出来ないほど



衰弱して意識も失いかけた。



その上まだまだエスカレートして行くであろう



残虐行為ざんぎゃくこういを思うと



激痛の中、恐怖に追い詰められた。



そしてそこから追い詰められた末の怒りがこみ上げ、



怨みと怒りに満たされると容姿が変化してきた。



頭に三本のつのが生え、



体毛が全身をおおい始めた。



「飯山ー。覚悟は出来ているだろうな。



俺はやられたら必ず何倍にもして返す男だ。



まだまだこれからだ。



俺がやられたようにたっぷりやってやる。」



形固は手下に命じて



つるされている飯山のなわほどくと



地面にくいが打ち込んであるところに



うつ伏せにして大の字に手足をしばりつけさせた。



それは何か刑罰用にあらかじめ作ってある物のようだった。



形固は飯山が動けないように固定されると近づいて行った。



全身をおおっている生々しい傷から、



いまだに血が流れ落ちている。



それはなぶり殺しにされた時の惨状さんじょう



物語っているのだろう。



形固はそれを周囲に見せびらかして



威圧いあつするために、



わざと上半身をき出しにしていた。



確かに全身を体毛におおわれ、



頭に長い一本角が生え、



血だらけで大きな斬り傷と、めった打ちされて骨折し、



体が変形した形固を見ると



誰もがギョッと目を見張みはる。



形固は飯山がしばられてもがいている脇に立つと



冷たく見下みおろし、



大きなハンマーを持ち上げて唇をゆがませた。



「うおー。やめろー。」



飯山は思わず叫んだ。


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