第120話 半分づつ
一瞬沈黙が流れて全員がイタチを見た。
「あっ」イタチが立っている。
真っ二つのままだ。
そして中身がない。張り子なのか。
切り離された体がそれぞれ片足でピョンピョン跳ねながら、
片方の手に刀を持ち、もう片方の手にも刀を持っている。
そしてそれぞれ半分づつのままの体が
別々に腹を抱えながら馬鹿笑いしていて
酷く騒々(そうぞう)しい。
「こんな奴に俺は馬鹿にされているのか。」
鬼男はそれを見ると
自分より劣っていて、ちっぽけな弱い奴から嘲られた情けなさと
悔しさでカーッと逆上した。
「ちくしょー。このやろー。ばかやろー。」
鬼男は大声で怒鳴りながら
刀をブンブン振り回し、
半分づつのイタチに突進して斬りつけた。
「キャーハハハハハ。」
イタチはますます大笑いしながらクルクルと体を回転させ、
カキーン、カキーンと
刀を合わせて攻撃をかわしている。
鬼男が必死に刀を振り回してもイタチにはかすりもしない。
「俺様の力は皆が一目置くほど恐れられているんだが、
これじゃ馬鹿にされてしまう。
この世界は馬鹿にされたらおしまいだ。」
鬼男は焦っていた。
半分になったイタチのもう片方が
サホミを拘束している連中に襲いかかった。
「あーっ。」
茫然と見ていたところへ飛び込んで来た。
慌てて身構えたが、
イタチがピョンピョン跳ねながら
クルッ、クルッと鋭く体を回転させると
バタバタ斬り倒されてしまう。
「ばかやろー。何やってるんだ。
さっさとかたずけてしまえ。もたもたするな。」
サホミを掠って来た班長が
怒鳴りながら刀を抜いてイタチに斬り込んで行った。
常に弱肉強食の戦いを生き抜かなければならない世界で生活している者達だから
実戦で鍛えられた力は強い。
斬り込んで来る太刀はピュッ、ピュッと
鋭い音をたてて振り下ろされる。
鬼男は少し冷静さを取り戻して
イタチの様子を見ている。
隙だらけに見えるイタチだが
斬ろうとすると隙が感じられなくなってしまう。
どうやったら倒せるんだ。
「こいつは一体どういう奴なんだ。」
イタチは相変わらず脳天気に笑いながら
周囲からの総攻撃をかわしている。
「あっ」
短く声を上げたイタチが何かにつまづいたかと思うと、
体が宙に浮いて横倒しに地面へ落ちてしまった。
「やったー。今だ。やっちまえー。」
一斉に刀や槍がイタチめがけて突き出された。




