第108話 消えた敵
ミヤナの意識は危機感で一点に絞られた。
相手はどこから襲って来るかわからない。
地下に潜んでいる配下達も
今はただ下から
ミヤナの足を掴んでいるだけだが、
攻撃出来るタイミングを
謀っているに違いない。
ここで油断すれば殺られてしまう。
完全に不利な状況で緊張しているミヤナを尻目に、
目の奥で残忍な光りを滲ませ、
口を歪めたチャラムの姿が
スッとかき消えた。
二人の緊張の針は一気に限界を振り切った。
「どこから来る。」
相手に攻撃する意思が生ずれば
想念エネルギーの波動は必ず発信される。
それを感知すれば
機先を制することが出来るはずだ。
どのような微かな波動も逃すまいと
全神経を研ぎ澄ませ、
吸った息を微かに長く吐いて
気を充満させた。
呼吸を整えて行くに従い、
意識はより鮮明になり、
意識からはみ出して張り巡らされた触覚のセンサーが
周囲三百六十度の霊気の動きを探っている。
しかし反応がなく
襲って来る気配を感じなかった。
変だな。
ミヤナとバドグは
相手がどこから現れて来ても
対応出来るように全神経を研ぎ澄ませ、
隙を作らないように
油断なく武器を構え直したその途端、
二人の姿がアッと言う間もなく消えてしまった。