第107話 もがき
気づくと
二人の立っている地面の周辺には
剣山のように剣が突き出ていた。
「ぎゃーはははは、
逃げ場はないわ。これでお仕舞いよ。」
チャラムは思い通りに
形勢を逆転出来た快感に痺れた。
「どんなもんだ。これがあたしの力よ。
思い知ったか。
これで思う存分仕返し出来る。
まずは生皮剥いで、
それからいままでの怨みを
晴らしてやろう。」
チャラムはどうやったら
どれだけ苦痛を与えられるかと、
執念深く粘るような眼差しを
二人に向けた。
この状態ではあいつの思うままだ。
ミヤナとバドグは足に群がって
掴んでいる手を
斬り離そうとしたが、
刀が使えない。
斬ろうとすると
自分の足まで斬れてしまうだろう。
ここでチャラムの瞬間移動攻撃を受けたら
避けようがない。
足の自由をなんとか確保しなければ。
二人は掴んでいる手から
足を引き離そうともがいた。
「ふん、どうやったって無駄よ。
もっともがくがいい。
もがいて、もがいて、もがくのよ。」
チャラムは優位な状況に
すっかり有頂天になって狂喜したが、
急に真顔に戻ったかと思うと、
おもむろに剣の切っ先を
体の横方向に向け、
ゆっくり上げて行った。
意識の動きを読まれないように
想念を止めた無表情な瞳が
ミヤナにガッチリ固定されて動かない。
来るぞ。
ミヤナも刀を右八相に構えると、
どのような気配も逃すまいと
全身の予知感覚を全開にした。