第102話 強奪
突如、ドカンと飯山の頭に
痛みと衝撃が炸裂し、
体が弾き飛ばされ、
何かにぶつかって身動き出来なくなった。
そして意識が無くなった。
飯山の頭に槍が突き通たまま、
その槍が後ろに生えている木の幹に
刺さってしまっていた。
串刺しの状態だ。
槍男はもう一発弾丸を胸に受けて倒れていて、
あたりは静かになった。
二人が倒れたのを知ってか、
今まで息を殺して潜んでいた村人が
恐る恐る現れて来た。
どこに隠れていたのか、
数え切れないほどの人数だ。
それらの村人は二人が動かないのを確認すると、
我も我もと走り寄って
奪い合いを始めた。
途端に怒りと憎しみが渦巻き、
瞬く間にそれぞれのオーラが
炎となって燃え上がった。
飯山と槍男の持ち物や衣服は剥ぎ取られ、
刺さっている槍や拳銃も
村人達の死に物狂いの奪い合いの対象になっている。
強い者しか欲しい物を手に入れることは出来ないのだ。
奪ったり奪われたりしていたが、
そのうち殺し合いになってきた。
相手を殺さなければ自分の物に出来ない。
奪ったり奪われたりするたびに
怒りと怨みがますます増大して、
その場が熔鉱炉のように
真っ赤な炎の中ですべてが焼かれ、
焦げだした。
しかし
焼かれるのは自分自身の発した炎によって
自分自身が焼かれるもので
他人の炎に寄ってではないのだが、
人々は焼かれる苦痛に、
のたうち回りながらも、
この機会を逃せば
何も手に入れることが出来ないために、
奪うことをやめるわけには行かなかった。
見ていると一人で動きまわっている者と、
いくつかの集団に属している者とがあることに気付いたが、
それらの集団は非常に統制がとれていて、
上からの命令には絶対服従で
逆らうことは出来ないようになっている。
飯山も槍男も裸にされてしまったが、
その裸の体までも奪い合いになっている。
そのうちに弱い者は倒されて
強い者だけが残った。
しかし皆奪い合いで
エネルギーを使いはたしてしまったのか、
炎に焼かれて戦意を失ってしまったのか、
後はしばらく睨み合っただけで
勝負はついたようだった。
奪おうとして倒された村人も
当然すべてを奪われ、
自分の炎で炭のように黒く焼け焦げて、
裸で転がっている。
そのうち勝ち残った者達が
戦利品をまとめ始めた。
やはり徒党を組んでいる者が
ほとんど奪い取ってしまっている。
この状態では徒党を組まなければ、
とても欲しいものを手に入れることは
出来ないだろう。
それでも例えその集団の中で
手に入れたとしても、
それはすべて支配者のもので
自分の物になることはないが、
たまに手柄をたて、
集団に貢献したということで
支配者から与えられることはある。
しかしこの世界の住民は
奪う意識に支配されているために
自発的に仲間のために働こうとはしない。
そこで、
それらの集団の支配者達は
その中を組で分割し、
それをまた班で分けて、
厳しい掟と暴力で、
配下の者達をがんじがらめにして、
掟に反した者が出ると
連帯責任でそれぞれの班全員に
過酷な処罰を科すのだ。
要するに一人の失策はその班全員に責任をとらせ、
恫喝と暴力の恐怖で
言うことを聞かざるを得ないように操作している。
怒鳴る声と体罰の音が
あちこちに響き渡っている。
その班ごとに大声で怒鳴りつけられながら
組員が動き回って、
裸で倒れている者達の手足を縛ると、
それに木の棒を通して
それを前後で担いで
どこかへ運んで行く。
手足を縛られた者はブラーンと吊り下がって
歩くたびに左右に揺れている。
飯山と槍男も同様に
左右に揺れながら
運ばれて行こうとしていた。