第4話 花吹雪
買い出しが、終わって家に着く。
帰宅したところで出迎えてくれる人も居ない。何故か今日は寂しく感じている。
多分、おそらく、いや、確実に、ヒトに会ったからだろう。
久しぶりに僕以外の存在に会ったような気がする。
しばらくは出掛ける事も無い。会わなくて済むだろう。
結局正午近い時間になってしまった。
食事を取ろう。
何か胃に入れなければ吐いた時に辛い。
作り置きしていたお粥の残り最後を温める。
近頃は味の無いそのままで食べている。
昔は食事も楽しんでいたが、胃に入れば何でも同じだと思うようになってしまっていた。
食べ終わるまでに、時間はかからない。
そのままぼんやりと天井を見つめる。
なにが楽しくて、生きているのか。
『ソウダ、久しぶりにデンワでもしてみよう』
立ち上がった瞬間、こめかみに頭痛が飛び込んでくる。
『ぐぁ…あ…』
そのまま《目眩》まで襲ってくる。
そのまま僕は、倒れて気を失った。
『将来どんな人間になりたい?』
そんな言葉が耳に入って来て、意識が戻る。
僕はいつもの教室で授業を受けている。
教壇には、同じクラスの友人。
あの子の名前は確か、大嶋瑞希。
彼女は委員長だったと思う。
黒髪が綺麗な子。それだけ。なんの授業だろう。
そこでチャイムが鳴る。
授業が終わったのだろう。瑞希が席に戻っていく。
『今日は河川敷まで行こう』
忘れられないあの声。聞こえただけで緊張してしまう。
『わかった。一緒に行こう。』
アカリに向かってそう言う僕は少し震えていた。いつぶりだろうか。君に会うのは。
さあ、一緒に帰るんだ。
一緒にいれば大丈夫なはずだ。
『あれ?京介のスマホどこいった?』
そう言ってニコニコ笑っている郁弥。
まったくどうしようもなくクダラナイいつもの、イタズラか。
何故か不安になる。
スマホなんてどうでもいいのに。
見つけないといけない気がしてくる。
周りを見てもどこにも無い。
無い、無い無い無い。何処にも、何処にも無い。何故か見つけないといけないと思ってしまう。何故だ。何の為に。
もう近くにアカリは居ない。
また逸れてしまう。このままでは、また。
教室なのに置いてある、誰のモノかわからないPCの画面、テレビの画面、君が映っている。
美しい笑顔を向けられる。
嗚呼、嗚呼、何故なのか。
他の友人達に声をかけられる。
『ごめんごめん。スマホなら目の前の本棚だよ。』
振り返れば、さっきまで無かったはずの場所にスマホが置いてある。
あぁ、そうだ、ここは、夢の世界。
現実に起きないことが起こったって不思議なんかじゃない。
『ミツケてクれて、アリガトウ』
すでに僕の言葉さえおかしく聞こえてきている。
走れ、走れ走れ、走れ、走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ、走れ走れ走れ、走れ走れ。
やっと追いついた。
嗚呼、…の…な人アカリ。やっと追いついた。やっとだ。
『そろそろだよ。』
後ろに手を組んだアカリが楽しそうに言っている。
息の切れた状態で僕は言う『え?何が?』
そして、ふわっと
綺麗な黄色い葉と美しいピンク色の花弁が
2人を包む。
アカリが何かを言っている。
だが風の音で何も聞こえない。
口の動きは舞い踊る葉と花弁でうまく見えない。
ただ一言感情の無いような声だけがハッキリと聞こえた。
『オモイダシタ?』
そういえば、全編通してなんですが、句読点が多かったり無かったり、漢字使ったり使わなかったりは大体仕様です。
もう少し続きますので、お付き合い頂ければと…