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微睡む君の夢  作者: 名前はまだない
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第2話 忘れ物(後編)

日常の中にこそ非現実的な事がある。



まるで時間が止まったように動けなかった。

少しして彼女を追いかけてみたが姿は見えない。

考えていてもしょうがない。

そのまま教室に戻る事にした。


そうだ、あの子に、アカリに一つ聞いてみよう。僕と彼女の関係を。それだけ聞ければいい。それだけでいいのだ。

どうせここは夢の世界。

授業の事なんてどうだっていい。

自分の教室のドアに手を掛ける。良くあるスライド式のドア。ガラガラとうるさい音を立てていつもの教室の風景がそこには、無い。

真っ暗な闇。虚無。何も無かった。

ぽっかりと空いた穴のように、ドアの先はただの闇。見慣れた友人達も、アカリもいない。

瞬間的に思考が止まる。

『なんだよこれは』

一言だけ言ったところで世界の全てが崩れていった。


僕は意識を失っていた。(夢の中で意識を失うというのはおかしいが)


ここは何処だろうか。

例えるならば、深いプールの底に向かってゆっくりと沈んでいくような、そんな感覚。

一体何処まで沈んでいくのだろう。

どんどん沈んで、そのまま帰れなくなるんじゃ無いかとそう思ってしまう。

不安だ。恐怖も感じている。これは死ぬということなのかもしれない。

全身が痛みが感じるような気もしてきた。


『もう、ダメなのかも』

と、声にならない声で呟く。

色々な思い出のようなものがフラッシュバックしてくる。

これが走馬灯という現象なのか。

昔知り合いから、

[走馬灯は死ぬかもしれないと感じた時に、今までの経験からどうすれば死を回避できるのか。]

という事を脳が一瞬で考えている現象だと聞いた事がある。皮肉なモノだ夢の中で死にかけて走馬灯まで経験するなんて。

更に思考はぐちゃぐちゃになっていく。


そんな中で、僕が明らかに、経験した事の無い声が遠くから聞こえてくる。

記憶に無い声。

誰の声だろうか。

懐かしいような、新鮮なような。


そして、ぐちゃぐちゃになっている頭の中で、その声の言う事だけはハッキリと聞こえてきた。

『わかった。絶対に俺は…』

声は小さいが、それでいてしっかりと返事をした。



その瞬間目が覚めた。

何事も無くいつものように、自分の部屋のベッドの上で目覚める。

そしてすぐにベッドから降りていく。

向かうのは小さな机。

いつ買ったのかも覚えていない手帳を取り出し、ペンを握る。


なんとなく書いておかなければならない気がした。

メモになってもいい。わかりやすく書けばいい。そう思い、文を一つ書き込む。それは最後誰かが僕に言った言葉と同じ。



《この事を忘れるな》



最初の不思議な夢を見た時に書いたこの一言の文。

懐かしむように、撫でるように這わせた指を離す。

まさかここまで何度も見る事になるなんてその時は微塵も思っていなかった。


同じような内容だって見た。

全く違う内容だって見た。

なのに何一つ進んでいない。

彼女について知る事も出来ていない。


気がつけば洗面台の鏡の前に来ていた。

自分の顔をじっと見つめる。

鏡に映る自分に向かって、喋りかけている。

『お前は何をしている。何かを忘れている、気がする。思い出せ。思い出せ。思い出せ。』

それはまるで、何か忘れ物を探しているかのようだった。


鏡に映る自分っていう本当に自分なのか分からなくなる事がある…あるよね?

ないですね。私はあります。

あと忘れっぽい方ではないです。

前回と微妙な矛盾点を置いてるので、そこも見て頂けたのなら嬉しいです。

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