神高争乱編Ⅱ
吐いている。気絶している。血が溢れている。
死んでいる。
状況は酷かった。
『たかが授業』と高を括っていた普通科生徒には見るに堪えない惨状だ。
戦闘科の人間は『これが普通』といった振舞いをしており、それこそ談笑すらしている。
「全員終わったか。お疲れ様。それでは次に」
「まま、まって下さい!」
普通科生徒の一人が震えた声でストップをかける。
「なんだ」
「これは・・・なん・・・ですか」
分かり切った答えを改めて質問する生徒。そんな事に意味はない。
「授業だ。お前は今まで何を学び何を聞いてきた」
「だって・・・だって人が、生徒が死んでるんですよ!?」
そう叫んだ生徒の周りにいた他の普通科生徒は膝から崩れ落ちたり、顔を伏せ泣いてみたり。完全に正気を失いかけている。
「それがどうした。戦場で人が死なないとでも思っているのか。甘いな。人は死ぬぞ。たった数秒で。それを生き抜くには死に物狂いになれ。それが今の日本、世界での唯一の生き残り方だ」
正論だ。反論の余地すらない。先生は確かに言っていた。殺し合いとは、こういう事だと。
「そ・・・んな・・・」
叫んだ生徒も勢いを失う。
これだから普通科は戦闘科に舐められるのだな。と銅は呆れる。
「安心しろ。そいつらは生き返る。能力によって。覚えておけ、ここは学校だ。安全は保障される」
そういうと倒れている生徒の体が宙に浮き、光を放つ。
どんどん傷が癒え、ボロボロになった服すらも元通りになっていく。
数秒経ち、生徒はゆっくりと地に近づいていく。
その生徒は徐に立ち上がり、辺りをせわしなく見たり頭を撫でてみたり、自分に何が起こったのか分からない状態の様だ。
その様子を見ていた先程の叫んだ生徒は絶句している。
「気を取り直して第二試合。最後にもう一度だけ忠告する。これは殺し合いだ。相手を全力で殺しに行け」
プツン・・・とマイクが切れる。
そして二度目の静寂が訪れる。
ようやくわかったようだ。この授業の根底を。
+ + + +
第二十試合目終了。
現時点で戦闘科と戦い勝ち残った普通科の生徒は0。
銅はまだ戦っていない。
「次、第二十一試合・・・。これが最後か。まだ呼ばれていない生徒は自分の配属されたブロックに移動して準備」
先生も飽きてきたのか、十試合目以降からだんだんと言葉に覇気が無くなっていっている。
銅はBブロックに名前を連ねていた。
相手は当然
「待たせたなあ銅」
佐藤だ。
「わざわざ最終戦にしたのか」
銅自体戦う事はそれほど重く考えていない。
しかし厄介なのは普通科生徒の目だ。
あの最後の希望に縋り付くかのような視線は流石にまずい。
「ああそうだよ。最後の試合は一番注目が集まる。お前を見せしめにするにはもってこいだろ」
なんて面倒な事をしてくれたんだと少し腹が立つ銅。
「文字通りお前を”ぶっ殺してやる”よ」
3・・・2・・・1・・・。
ブー!
佐藤の戦闘タイプは接近戦だ。
以前校舎裏で能力を使った事がある。その時拳周りに光が集まっていた事を考慮すると、対象を殴るか触るかすると”殺せる”だけの火力が出せる能力であることは間違いない。
だとすれば交わし続け、隙を見て攻撃するのが一番無難で安全だろう。
「死ねぇ!」
その言葉が聞こえた頃には佐藤は銅の正面に入っていた。
到底常人では目に映え切らない速度。
銅に向かい一直線に伸びる拳。
銅はそれを交わし、手の甲で腕を弾き脇腹を触る。
「ぐあああぁぁ!」
触られただけの脇腹を抑え、言葉にならない悲鳴を上げながら倒れ悶える。
「・・・」
これで佐藤は戦闘不能だ。
銅は残念だった。少し期待していたがやはり弱かった。
銅は目を瞑る。
「戦闘終了。Bブロック、よくやった」
注目が集まる。
最悪だ、素直にやられておくべきだったか?と銅は考えるがもう遅い。
歓声を上げるでも無くただ視線が刺さる。
これは嫌な予感しかしないな・・・と放課後が憂鬱になる銅。
痛みに泣き叫ぶ佐藤。
啞然する生徒。
そこで、授業は終了した。
新たな因縁を残して。
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