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神高争乱編Ⅶ

戦闘を得意とする先生が来た時には既に倒され、誰がやったのかと一時騒然となったが、誰が言い出したのか分からないが「謙虚な先生が目立たないようにオズを倒してくれた」ということになり、この件はその謙虚な先生の手柄と言う事で収拾した。


被害の大きかった学校校門前と2-Hから3-H付近は”対象の時間を最大1日前に戻し今の状態を無かったことにする”能力(蘇生も可)を持つ教員がそこの時間を戻し、完全な状態で修復された。


次の日、全校集会で昨日のオズの襲来に対する謝罪と、それに対する対策などが話された。

その内容は言うまでもなくシンプルで、前日オズが現れた時の校内放送と酷似していた。誰が悪いでもなく怒られていた全校生徒はあからさまに面白くないといった表情をしていた。


普段は先生の言っていることに耳を傾ける銅も、今回ばかりは流石にやれやれと呆けていた。


教室に戻った後、軽く担任から全校集会の演説内容を確認され、A4用紙に今回の件の感想を書かされた。

銅は、感想とはどういうことだ、『怖かった』とでも書けばいいのか。と、学校の意味不明な指示に笑止した。



+    +    +    +



朝。

登校し、机の中を確認した銅は、封筒が入っていることに気付く。

茶色の細長い封筒で、アンケート調査に使われるような、素朴な封筒だ。


開け口はちゃんと折れる。剃刀などが仕込まれてはいなさそうだ、と、古い考えをする。


中身を空けてみると、ぽわーん、なんてオノマトペが似合いそうな柄のメモ用紙が入っていた。可愛らしい絵柄のプリントされたそれに丸っこい字で4~5行程文字が書かれていた。


『銅君、こんにちは!実は私、銅君がオズを倒してた所を見ちゃいました・・・。お昼休みに、屋上まで来てくれませんか?そこで、少しお話がしたいです。来るまで待ってますから、ぜったい来てください!』


名前がなく、身元不明ではあるが、行った方が良いだろうと銅は思う。

何せ机に手紙、屋上で待ち合わせ、名前は内緒、なんて言うベッタベタな展開をしてしまう様な生徒だ。偏見ではあるが、きっと悪い奴ではないだろうと銅。律儀に挨拶まで書いているし。


昼休みになるまで銅は普段よりも濃い視線を浴びながら黙々と授業を受けていた。




授業が終わり、各自机を合わせたり購買部に行ったりと、自由に過ごしている。


昼休み。


銅は特にする事も無く、いつも一人の為予定は無い。

朝届いていた手紙の主に会うべく屋上へ向かった。


前述したが、屋上は普段から解放されている。だから人がいる事は珍しくない。

何故手紙の主は屋上を選択したのか、それは屋上へ繋がる階段を見てすぐに察しがついた。


――関係者以外立ち入り禁止――


賢い、銅はそう思った。

わざわざこんな大胆な真似をせずとも、とも思ったが。


普段立ち入りが制限されていない場所が突然立ち入りを禁止されれば中に入りづらい。

逆に普段から制限されている場所はそこそこ入りやすい(駄目だけど)。

普段から禁止されている場所は、その状況が分かる。危険でない事も人がいない事も知っている。

しかし今日から禁止、となると状況が分からない。何かあったのか?などと勘ぐってしまう。その為何も知らない人間はわざわざ危険を冒してまで入ろうとはしないだろう。


・・・まぁこんな理屈はいいとして、素直に感心した。


そのテープを跨り越え、階段を上っていく。

錆び付いた扉を開け、そこにいる人物に目をやった。


「ま、待ってました・・・」


手紙での明るい印象とは程遠い、人見知りのようにソワソワとした女の子が待っていた。


銅のクラスのクラス委員であり、二年生進級後、初めて話した同クラスの人間。

春夏冬あきなしかえでだ。


「すまない、待たせた」

思ってもいない謝罪を口にし、次の言葉を煽る。


「い、いえそんな。・・・それで、さっそく本題なんですけど」

申し訳なさそうに彼女。

「き、昨日、銅君が、オズを倒してるところ、見ちゃって、それで・・・」

続く言葉を躊躇しているのか、口ごもる。

「・・・」



「そうか。見られていたか。分かった。了解した」

少し待ったが話さない彼女にしびれをきらしたように話し、立ち去ろうとする銅。これ以上深く関わりたくない様だ。


「それで、かっこいいな、って思って」


「・・・は?」

呼び止めるための文句としてはかなり頓珍漢な言葉であった。


「あ、えと、そういうのじゃなくて、私、あまり戦闘とか得意じゃなくて」

いいながらもじもじと体を動かす彼女。それは言われなくてもきっと誰しもが分かるだろう。

そこで銅ははぁ、とため息し、続く。

「・・・結局、何が話したくて呼んだんだ」


彼女の意図が図れず、見たという報告だけならば手紙で了解した。しかし続く文に呼び出しがあり、呼び出されるだけの重要な話があるのかと思って来たが何もなく。

銅は少し呆れた。


「わ、私は銅君が強いって知って、訓練の時は能力を使わないでみんなに勝ってて、それで・・・」

「言いたいことが特にないならいい。俺は戻るぞ」


「かか、かっこいいなって・・・」


「・・・」

あほの子だ、これはもう末期だ。と銅は心の中で叫ぶ。

言った本人も目を泳がせ顔を赤らめ、自分の発言を悔いているようだ。

「ち、違います、そうじゃなくって、えと、その」

吐く言葉にあたふたし、何一つ会話が進まない。

それに銅は愛想を尽かし、無言で立ち去ることにした。

人差し指を遊ばせて言葉を考える彼女に踵を返し、仄白い扉のドアノブに手を掛けたところで


「私に、戦い方を・・・教えてくれない・・・ですか?」


と、ひねり出すように彼女は云った。

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