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神高入学編Ⅰ

戦場に立っている者は既に一人のみ。

辺りには無数の殲滅兵器【オズ】が起動不能状態で静止している。


「使用可能なユニットはゼロ!・・・我々の敗北です」

苦虫を嚙み潰したようにノイズがかった声が響き渡る。


「・・・ええい、やむを得ん。撤退だ」


敵の中枢であろう、上官らしき人からの命令が入り、複数体のオズが自らの拠点へ向け走り出す。


「・・・対象が逃走。どうしますか、しろがね大佐」


『逃すな。殺れ』


「・・・承知」


「対象を捕捉。直ちに排除します」

彼は何ら変哲の無い片手銃をオズに向け構える。

「な・・・!狙われています!奴から・・・朱の悪魔から!」

敵兵の荒げる声は幾重にも破壊されたオズを目の当たりにしたが為の恐怖からくる、死を目前とした断末魔の叫びだろう。

「今は黙って逃げるんだ。我々に勝ち目はない・・・」

その言葉を最後に、鉛の弾かれる鈍い音が鳴る。


同時、オズの装甲の一部が赤色、そして白になりやがて、爆発音とともに分厚い装甲がはだけ、木端になる。

続く他数機も同様にただの鉛弾で爆砕する。


「・・・任務完了」





「奴は・・・朱の悪魔は何者なんだ」

「きっと人間の皮を被ったバケモノだ。奴と遭遇した小隊は例外なく壊滅している」

「今の我々で朱の悪魔・・・いや、日本に勝てるだろうか」

「・・・さあな。だが、人間である事を捨てた者達の末路など知れたことだ」

「そうだな。全ては『B日』の為に」




+    +    +    +




2042年。世界各国の反政府勢力が勢いを増し、全世界的に戦争が始まる。

第三次世界大戦の幕開けとなった決定打は、とある権力国家の化学兵器研究部である「ピュリファイ」が大型機動兵器【オズ】の開発に成功してしまったが故だった。


2046年、日本政府は新たな兵器【ビュレチヒト】(種の希望)と言う対オズ用の「人間兵器」を開発した。

ビュレチヒトを投与された人間は三者三様の能力を得る。

それは、過去のSF映画やアニメなどで言われる、フィクションのような産物だ。

日本が倫理概念を真っ向から否定する兵器を創り出した為、世界の崩壊は加速させた。世界は様々な核兵器など、殲滅武器の制作に取り掛かった。


42年、第一世代のオズが大暴走を起こし、日本の自衛隊は状態維持の困難に、病院などの福祉施設は資材不足による経営持続の出来ない状態に陥った。

2043年5月。とうとう戦力確保の為に学徒出陣が行われた。

その際、身体増強薬として造られたはずの「ビュレチヒト」であったが、18歳以下の子供に服用すると5.82%の確率で何かしらの特異体質を持つことが確認された。


そして46年。


今まで自衛隊の中からビュレチヒトを投与する人間を選出していたが、43年に生まれた特異体質の子供の研究を行い、ビュレチヒトは進化を遂げた。

数多の実験や観察を経て、18歳以下にビュレチヒトを投与した場合、不思議な力を持つ子供の割合は99.2%にまで上昇した。これによって日本は戦力を大いに飛躍させた。

これがビュレチヒト始まりの「オーゼワン」、人間兵器第一世代だった。





「・・・であるからして・・・。おいあかがね、聞いているのか」

歴史担当の真壁先生がこれまでの事象の説明を中断し、銅という生徒に向かい注意を投げかける。

「・・・」

その問いに対し、彼は無言で首を縦に動かした。

「そうか。なら『ヴェルヴァ―ナ』について説明してみろ」

話を聞いていなかった生徒を咎めるが如く真壁先生は彼に質問を投げかける。

「・・・」

ここでも彼は無言で頷き、席を立つ。

窓際後方二番目に位置する彼は先生の目をしかと見つめながらゆっくり教壇の方へと歩いていく。

「・・・っな、なんだ」

表情を見せない生徒に内心恐怖感を覚えつつ真壁先生は尚も威厳を保とうと腕を組み佇む。

彼はそんな先生の横を通り黒板にチョークを走らせ、数秒後。

「・・・」

教室全体に向かい軽いお辞儀をした後教壇から降りる。

「せい・・・かい」

真壁は黒板を見たのちしぶしぶ正解のコールを上げる。

彼、銅 白也は淡々と席に着いた。


「ん、んん。では今年度最後の授業を終える。来年度、今年の4月からお前らも2年生だという事を忘れるな」

軽い咳払いをし、真壁は挨拶を始める。

「そして忘れちゃいないだろうが、二年からは普通科生徒も戦闘科と混じり実践訓練に入る。くれぐれも忘れないように。号令」

「起立」



真壁の言っていた戦闘科や実践というのは冒頭に説明した【オズ】に関わる事である。

即ち、いずれ死地に赴く為の修行である。それを高校生で身につける意味。言うまでもない。

お国の為に。だ。


銅白也は首に付く傷を擦る。


「・・・」


思い出したくない記憶。しかし思い出さなければならない事実。

彼はきつく拳を握り締め、学校の門をくぐった。



全てはB日の、『復讐』の為に。


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