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4話 終焉訃告書(アメレット)


 エディン、賑やかな雰囲気の街で、門を超えると、そこにはレンガ張りの家々と規律良く並ぶ木が見えた。記憶が正しければ始めて訪れる街だが、俺が隠居暮しをしている間に文明が高度な発達をしたわけじゃなさそうだ。この街だけ遅れているなら話は別だが。

 俺から少し遅れて歩くシャルロットに、おいと呼びかける。

 「お前この街には来たことあるよな?」

 「小さい頃に来た事はあります」

 案内を頼もうとしたが無理がありそうだ。仕方ない歩いて探すか。

 「どこか行く宛でもあるんですか?」

 「こういうのは酒場に行くって相場が決ってるんだよ」

 

 

 

 街をしばらく歩くとジョッキのマークの看板を掲げる店を見つけた。

 扉を開けると鈴の音が鳴る。店内の人々が一瞬こちらに注目するが、すぐに視線はあるべき場所に戻る。店内も街の雰囲気と似ていてとても賑わっていた。

 「イデアちゃん不味いですよ……。私達にはまだ早い気がします」

 怯えるシャルロットを無視して奥へと進んでいく。客達は剣などの武器をしていて冒険者だと思うが、彼女の目には暴君にでも見えてるのかもしれない。

 カウンター席に腰を下ろすと、バーテンダーの女性が俺達に気付き近寄ってきた。

 「こんにちは、可愛らしいお嬢ちゃん達。大人ぶりたいのはわかるけど酒場に来るには早すぎない?」

 「ほら、まだ早いんですよ。また夜来ましょう」

 シャルロットは不安そうに俺の服の裾をつまんで呟いた。

 そういう意味で言ったんじゃないとおもうけど……。

 「面白い娘だね。いいよ、居ても。私が君達くらいの時もここに来たくて仕方なかったしね。でも、お酒はまだ出してあげないよ」

 バーテンダーは氷と水の入ったグラスを俺達に出す。まだ緊張の解けないシャルロットは小さく会釈をすると、両手でグラスを持って水を啜った。

 「そう言えば、お嬢ちゃん達見ない顔だね。君達も│終焉訃告書アメレットを探しに来たのかい?」

 「なんだそれは」

 「ありゃ? しらなかったのかい? この酒場にいる奴らもそれを探しに来てるんだ。何でも、読んだら死ぬらしい」

 絶句した。そんな物が存在するのかと。スタートを切った瞬間、ゴールテープが目の前に現れたような感覚。運命的な出会いだ。

 「読んだら死んじゃうんですか?そんなの欲しがる人いないでしょ」

 シャルロットが笑いながら言うと、女はあまいっ! と指摘する。

 「そういうのを好むコレクターなんてごまんといるんだよ。この街にもそういう貴族がいる。そいつらに高値で売り付けるのさ」

 シャルロットは、なるほどと頷き、再び水を飲んだ。

 「どこにあるんだ」

 「ん?」

 「その│終焉訃告書アメレットはどこにあるんだ!!」

 カウンターを叩きつけ、大声で怒鳴りながら立ち上がった。店内が一瞬静寂に包まれる。我に返ると無性に恥ずかしくなり席に戻る。

 「店を出て東門に行きな、そこの門番が教えてくれると思うよ」

 「行くぞ」

短くそう言って、扉まで進んでいく。ちょうど、男が入店したところだった。ボサボサの髪に、腕が隠れるほど長い袖をしたローブを着ている風変わりな奴だ。

 「まだお金を払ってませんよ」

 「いいよ、水くらい。早く追いかけてやりな」

 シャルロットは深く礼をして俺の元まで掛けて来る。

 

 

 

 「│終焉訃告書アメレット?それなら少し行った所の洞窟にあるらしいけど」

 「よし、行くぞ」

 「待つんだ」

 いざ、洞窟まで! と意気込んでいたところを門番が呼び止める。

 「残念だけど洞窟の中には入れないようになってるんだ…」

 門番は言いずらそうにしながらも洞窟の状況を説明してくれた。

 彼曰く洞窟の入口はサンバルという貴族の魔術で封鎖されたらしい。彼の許可が無くては入る事も不可能との事だ。

 「洞窟を封鎖するなんて中々大胆な人なんですね」

 「彼は街でも有名なコレクターでね、│終焉訃告書アメレットをどうしても手に入れたいらしい」

 そんな本手に入れてどうするつもりだろうか。貴族の考える事は昔から理解に苦しむ。……今の俺が言えたことではないか。

 「どうします? 洞窟に行っても無駄そうですけど」

 「うーん、今思いついてる案としては、無理やり魔術を解除する」

 しかし、どんな魔術か分からない以上十中八九無理だろう。

 「もう一つはその貴族の所に乗り込んで解除させる。腕の1本か2本折れば喜んで解除するさ」

 「中々、恐ろしい事を思いつく娘だな……」

 門番は苦笑混じりに言う。やはり、後者の方が現実的だな。

 「しかーし、洞窟に入る方法はあるんだなーこれが。サンバルは洞窟探索の為に人手を募集してるらしいんだよ」

 門番はチラシをシャルロットに渡した。チラシには簡易的な地図が載っている。

 「その紙に描いてある場所に行けば試験が受けられるらしい。行ってみるといいよ」

 「ありがとうございます」

 シャルロットは深く礼をして、地図を睨みながらゆっくりと進み始めた。門番が見えなくなった頃、シャルロットが地図から目を逸らさず呟く。

 「なんだかうまく乗せられた感じがしますね」

 「気のせいだろ」

 2人、歩幅を合わせて試験会場へと向かった。

読んでいただきありがとうございました。よろしければブックマークと感想等もよろしくお願いします。


終焉訃告書の話ではイデア以外にもう一人主人公がいます。そのキャラはこの話に出てきたのですが皆さん気づきましたかね。何の手がかりも無いので勘で予想してみてください

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