12話 開眼(覚醒)
きのうは投稿できずにすいませんでした。そろそろ、毎日投稿はできそうにないです。
13話になってました。すいません
キュルキュルの断末魔が響いて何分が、いや、何秒が経っただろう?
全方向から攻めてくる魔物達を私はは魔術で捌き続けた。これではいつまで経っても限りがない。
「シャルロット! 大丈夫か!?」
「はい……。 なんとか……」
シャルロットは杖をハンマーのように振り回し、なんとか生き延びている。しかし、一つひとつの動作が大振りでスキが多く、“服に着せられる”という言葉のように“杖に振らされている”といった感じだ。彼女にも頼られる余裕は無い。
このままだと魔術具の魔力もすぐに尽きてしまう。そうなればシャルロットを守るどころか全滅だ。
「誰かもう一つの部隊に助けを求めるんだ!」
魔物の相手をしながら怒鳴った。しかし、返事はおろか自分とシャルロット以外の気配も感じない。……誰かの助けは見込めそうにない。こういう場面では、必ず誰かが助けに来て無双していくか、自分の命を犠牲にして仲間を守ると相場が決まってるものだが……。
抜くか? 私は自身の腰に付いた剣を確認する。私の剣術を持ってしても、これだけの数を倒すのは不可能かもしれない。しかし、剣ならば魔力の残量を気にしなくてもいい。疲労や油断の事を考えなければ理論上は永遠に戦える。でも……。
「きゃっ……!」
シャルロットの悲鳴が短くこだました。彼女を見ると、壁まで突き飛ばされ意識を失っていた。
これは悩んでる余裕なんて無さそうだ。剣の柄を握った瞬間、私の体が吹っ飛ばされ、壁に全身を叩き付けられた。あまりの衝撃に吐血する。私が元いた場所に目を向けると魔物が斧を振りかざしたまま、私のことをにやけながら見ていた。
魔物達は私がもう動け無いと思っているのか、ゆっくりと迫ってくる。
奴らの読みは正解だ。先程から立ち上がろうとしても足に力が入らない。しかし、まだ諦めるわけにはいかない。魔術具の魔物はまだ残っている。動けないとしても戦う事は……、時間を稼ぐことならできる。
その時、聞き覚えのない“音”がしている事に気づいた。強いて言うなら家にある魔力式ランプの起動音に似ている。その音の発信源がシャルロットの杖だと気づくのに時間は掛からなかった。次の瞬間、“音”は明確な“声”となる。
『シャルロット・ローブの生命的危機を感知しました。周囲の生命体及び全ての物質情報の所得を開始します』
すると、意識を失っているはずのシャルロットと無機質な杖が浮遊し、空中で腕を軽く広げて直立した体勢になった。杖も地面から少し浮き、 独りでに垂直立ちする。
彼女は両目をうっすらと開けたが、瞼の間から見える瞳は杖の先端にある眼球と同じ模様になっている。
「機械仕掛けの神託杖レベル2を起動します」
杖に付いた歯車が音をたてながらゆっくりと回転を始めた。
転生してからというもの、体の調整がうまくいかず、目的地に着く頃には肩で息をしていた。
「これはひどい有様だな……」
少し前まで白の部隊がいたはずの場所は見るも無残な光景となっていた。魔物、人間問わず死体が転がり、中には原形を留めていないものまであった。
シャルロットは!? と辺り一帯を駆けて回る。死体の原型が無くなっていたとしてもあの目立つ杖が近くに落ちているはずだ。
そうしていると見覚えのある男が倒れているのに気づいた。酒場ですれ違った天パだ。コイツがシャルロットを如何わしい目で観ていたのは気づいていた。触るとまだ暖かいし、柔らかい。気絶しているだけだろう。
「おい、起きろ。シャルロットがどこにいるか言え」
男の胸ぐらを掴み左右に動かしてみるが、首がグラグラ揺れるだけだ。しかし、その振動からか彼の懐から二つの球体が転がってきた。魔術具だ。
……どうせ気絶しているのだし、一つ貰っていこう。もう一つには充填をしておいた。
奥から轟音が響いたのはその時だ。奥にも誰かいるんだ。シャルロットがまだ生きていることを願いつつ、駆けていった。
その光景に驚愕すると共に一種の恐怖さえ覚えた。神秘的な模様の刻まれた瞳に、数多の魔術を唱え動き続ける口。
『範囲内の魔物を対象に雷の爆発種を行使します』
『範囲内の魔物を対象に網目状の氷柱を行使します』
『範囲内の魔物を―――』
シャルロットが機械的に魔術を行使し、その度に歯車の回転が加速していく。魔術は魔物のみに当たるよう調整されており、逃げ場のない彼らはなすすべなく、的のように攻撃を受けつづける。
何がどうなっているのかも理解出来ない。初級魔術すら使えなかった彼女が難無く魔術を行使しする姿に圧巻する。宙を浮いてる事や、杖の歯車が回る事など二の次だ。
魔物達は既に崩御し、本当の意味で的となっている。それでもシャルロットは止まらない。炎、水、雷、風、光に闇何でもありだ。そのうち天地創造でも始まりそうだ。
『範囲内の魔物の生命反応が消失しました……』
杖についた歯車は燃料が切れてしまったように徐々に減速していき、シャルロットが落下する。
急いでシャルロットを受け止める。
彼女は眠ったように安らかな表情をしていて、今さっきまで魔術を行使していたとは考えられなかった。シャルロットが寝言のように何か呟く。
『範囲内の全生命体を対象に転送魔術を行使します……』
その瞬間目の前がひかりにつつまれた。
読んでいただきありがとうございました。
土日は諸事情で東京の方に行くため投稿できるかまだ分かりません