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プロローグ 終わり(始まり)

 花の咲き乱れる広い丘で俺達5人が晩酌をしていた。

 「なあ、みんなはこれからどうするつもりなんだ?」

 酒樽も空になった頃、1人が問いかける。

  「世界中を観て回るよ。やっと平和になったんだからな」

 「帰郷して魔術の研究でもしようかな」

 「私は戦い続けます。諸悪の根源を倒したからって魔族がいなくなるわけじゃないですから」

 「お前はどうするんだメリック?」

 皆がそれぞれの未来を語った後で俺が語るのだ。

 「俺? …………俺は山の中で静かに暮らすよ」

 「なら、こうやってお酒を飲むのも最後だね……」

 誰かがそう呟くと皆黙った。全員が内心気づいていたが今まで誰も口にしなかったことだ。

 魔王を倒し、平和になった世界。俺達5人が一緒にいる理由も必要もなくなった。

 「そんなことないですよ。ほら、誰もが行く場所があるでしょ? そこでまた会いましょう」

 「こんな広い世界で誰もが行く場所なんてあるわけないでしょ」

 「ありますよ。正確にはこの世界では無いのかもしれません。“天国”ですよ」

 天国? と他の4人は首をかしげる。天国は勿論知っているが、彼からその単語が出てくるとは思いもしなかった。

 「悪くないんじゃない? 皆のやりたい事が終わってから、死んでからまた会うっていうのも」 

 「ねえ、最後に乾杯しようよ」

 「いいけど何にするんだよ。「平和な世界に」みたいな有りきたりなやつか?」

 「それも悪くないけど僕らだから言えることがあるだろ? ほら、みんな立って」

 言われた通りに立ち上がりグラスを前に出す。 

 「じゃあ、世界を救った僕達と再開を祈って乾杯!」

 「「「「乾杯!」」」」

 

 

 

 〜現在〜

 今のが走馬灯か。確かに俺の一番の思い出だ。

 あれから何年経っただろう? 途中で数えるのもやめたっけ。とりあえずこうして衰弱死するまでは生きた。

 皆はまだ生きてるかな……。いや、きっと俺が最後だ。図々しくも長生きしたものだ。もしも最後じゃなかったら極上の酒を用意してやろう。……天国にあればの話だが。

 こうしている時にも自身の瞼が重くなってくのを感じる。多分、次目を閉じたらそれが最後だ。

 「じゃあ皆今行くよ……」

 絞り出すように呟き、そっと、目を閉じた。

 

 

 

 目を開けると何も無い真っ白な空間だった。ここが天国だろうか?それにしては貧相なものだ。

 「おはようございます」

 声のした方を向くと腰まである長い白髪の女がこちらを見据えていた。いや、正確には顔にモヤがかかっているようにボヤけていてそんな気がしているだけだ。

 「君が所謂天使ってやつなのか?」

 「まあ、そんなところでしょうか」

 彼女は曖昧に返事をすると俺の近くへと寄ってきて首元に触れた。

 「あなたはイデア・メリック。人間離れした巨体と魔力で、世界を救った5人のうちの1人。この首元の傷も闘いの最中に負ったもの……。違いますか?」

 俺の個人情報をすらすらと述べて傷の事も知ってるとは流石天使だ。

 「そこまで知ってるなら話は早い。皆の所まで連れてってくれないか?」

 「残念ながらそれは出来ません」

 「なら、場所を教えてくれるだけでもいい。北にいるとか、そういうの」

 「それもできません」

 何ならできるんだよと呆れる俺。それを察してか彼女は凛と語り始める。

 「あなたにはもう1度世界を救ってもらいます」

 「は?」

 なんだそのゴール手前で振り出しに戻るみたいな発言は。

 「世界は再び悪の手に堕ちようとしています。それをあなたの力で阻止してください」

 「いや、俺仲間との約束があるんだけど……」

 「さあ! 今こそ復活の時です」

 「今さっき死んだばっかりなんだよ!」

 全く聞く耳を持たれていない…。

 「悪の手に堕ちる事がわかってるなら自分でなんとかすればいいじゃないか」

 「…………」

 「え!? そこで黙るの?」

 「とりあえず生きなさい」

 彼女が大きく指を降ると無数の腕が俺の体に絡みつき地面へと引きずり込んでいく。

 「やめろ! 皆が待ってるんだよ!」

 喚くように言った瞬間、自分の声が妙に高くなっているのを感じた。

 「その見た目は私の趣味です。あちらに着いたら鏡を見てみなさい。きっと気に入りますよ」

 「ちくしょう! 覚えてろよ! 生き返ってもすぐ自殺してやる! 子供に見せられないくらいグロい死に方してやる!」

 どれだけ喚き散らしても彼女は嘲笑するように微笑むだけだ。

 「心配しなくても簡単には死ねないようになってますよ。それと―――」

 「あなたを忘れたことなんて1度もありません」

 彼女は最後にそう呟くと俺の意識は闇の中に溶けていった。

読んでいただきありがとうございました。よろしければブックマークと感想の方もお願いします





1週間位までは毎日投稿する予定です。それからはボチボチやっていきます。

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