本宮さんの「部活」
いつもの様に校門に向かって颯爽と歩いていく。
街行く奴らは俺にクギづけだ
『ねえねえ~、気づいてないの?』
校門待ちしている女子どもに、優しい笑みを向ける
すると、女子どもは恥ずかしげに走って行った
『ねえってば~』
教室に入ると、全員の視線が俺に集まる。まったく、罪な男だぜと呟いて席に着くと、机にはたくさんの落書き……もとい俺への甘酸っぱい思いがつづられていた。
『「うざい」、「ナル男」……?これを甘酸っぱい思いととらえているなら、君はもう手遅れだよ……』
そんな慈悲もない言葉に、おもわず俺はさけんだ。
「うっせーよっ!てか、誰のおかげでこうなってると思ってんだコラ!?」
教室中が鎮まる。アイツに怒号を浴びせたポーズのまま硬直し、冷や汗を流している俺を横目に女子の耳打ちが聞こえてきた。
「ねえ、『また』?」
「怖ーいw情緒不安定なんじゃない?」
やっちまった……という思いが駆け巡る。
事の発端となる「そいつ」は、俺の横でにやにやと笑っていた。
直後、俺は教室を飛び出した
『……ふっ、あはははははは!』
笑い声が響く。とっくにホームルームが始まっている時間だが、気づくものは一人としていなかった。
屋上にいる、ということもあるのだが……
『ね、何で返事したのさ?君はただでさえ教室で孤立してるんでしょ?』
容赦ない一言が浴びせられる。そうなった原因は自分だということに、こいつは気づいているのだろうか?
「ああ、おまえのおかげでな!いつもありがとうっ!」
精一杯の嫌みのつもりだったのだが、当人は満足そうに俺を見つめる。
『礼には及ばないさ!もっと崇めたまえ』
「何が言いたいんだよ……」
ふふん、と胸を張るそいつを見ていると、なぜか疲れてくる。
こいつとの対応にすっかり疲れてしまった俺は、寝転がると即寝してしまった……
目が覚めると、校庭では下校している生徒が数名いた。
早朝から午後まで寝てしまっていたことに、愕然とする
すると、横から声がした。
『お、やっと起きた』
目をやると、つまらなさそうに服をひっぱったり、つまんだりしているそいつが居た。
「おー、……しかしだるいな、なんでこんなに寝ちまったんだろ……」
すると、なぜかそいつは嬉しそうに笑う。
『やっぱりあれが効いたんだ……』
なにか盛ったらしい。やっぱりか。
「おまえ、食事に睡眠薬盛るなっていっただろ!?」
『だって君が寝不足だって言ってたから』
「おまえが事あるごとに起こすからだろ!」
ちろっと舌をだすと、そいつは立ち上がり、歩きながら言った。
『そんなことよりさ!部活いこーよ!ぶ・か・つ!』
いままでの事を、そんなことよりで片づけられてしまったことが若干気に入らないが、とりあえずそいつについていく。
後ろ姿をみていると、あらためてこいつは誰だろうという思いが強くなる。
こいつの名前は、本宮遥。俺に付きまとっている「大天使」さま、らしい
大天使と言っている割には、こいつが来てから悪いことしか起きていないし、むしろ悪霊なのだが。
ていうか、大天使ってなんだよ、ルシファーかよ
まあ、そんなことは置いといて、こいつと会ってから、実はある部活に入った。
『ズバリ、オカ研!』
「は!?」
かってに入部届けを出され、生まれて初めて入る部活に緊張しながら部室に足を踏み入れたあの日は忘れられない。
いや、忘れろ、といわれても忘れられないと思う。
何故なら……
『ねーえーっ!!!』
突如大きい声を至近距離で受けた俺は、やっと我に返った。
「なに?なんだよ」
あわてて言葉を返すが、そいつは不機嫌に頬を膨らませている
『開けてって言ったの』
目の前には部室のドア。いつの間にここまで来ていたのか。
意外と長い時間我を忘れていたらしい。そいつは『何回も言ったのに』と愚痴をこぼしている。
俺は立てつけの悪いドアに手をかけた……