魔法のある学生の日常 その2
「それでは本日はここまで。上手く出来ていたかは魔法陣が記録していますから、結果次第では宿題が出ます。それでは」
「起立、礼!」
チャイムが鳴り、本日の魔法学の授業が終わり、軽い休み時間、シモンは机に頭を突っ伏した。
魔力というのは過剰に使うと疲労が飛んでくる。
本来魔法学の授業の後、生徒には数滴程度のポーションが配られ、次の授業に支障のないようになっているのだが単純に魔力を使いすぎているシモンにはそれでは足りないようだ。
一度に使用できる魔力と蓄えられている魔力自体は父親がかなりの「星力」を持っていたためか同年代に比べると多い方なのだが、魔法を使うと癖でオーバーワークになっているようだ。
そんなシモンを心配したのか、アルフ、ユズ、セイカのいつもの四人がシモンの机に集まっていた。
「うわぁぁ、疲れた……俺は親父はバリバリの重戦士、お袋は幻世人だけど戦士じゃないっていう魔法適正が低い格闘士だぞ?こんなちまちました魔法なんて鉄アレイ持ち上げるよりキツイぞ」
「シモン君、何度も失敗してましたもんね。これは宿題確定ですね」
「なんでお前らそんなにヘラヘラしていられるんだよ、アレか何か?裏ワザでもあんのか」
「シモンはいちいち魔力を込めすぎなんだよ、軽くジャブ打つ感覚でいいんだよ。それくらいならできてるじゃないか」
「なんかそれだと魔法が発動している気がしないんだよ、とりあえず次、歴史だしこのままだと寝ちゃいそうだから魔力補充してぇな」
「私の魔法弾でも飲む……?」
セイカの左腕に魔力が込められる。魔法というのは「結果の力」らしく、魔力を具体的な姿に変えることで魔法となる。
例えば「水集砲弾」などは空気中や目の前にある水分を意識して水塊という結果を想像することで発生させる魔法。更に呪文の詠唱などでイメージを作り出し結果を想定しやすくすることでスムーズに発動できるようになるという。
今のセイカの場合は自身の武器である魔法銃の弾を想定して魔力を練っている。
魔力の塊とはいえ、弾薬なのでそんなものを飲んだところで栄養にはならない。
つまりただの冗談である。実際、魔力を込めているだけで精製には取り掛かっていない。
「あー、それでいいか」
「いいわけないだろ。ほら、ポーションあるから飲んで」
そういってアルフは自分のカバンから水筒を取り出し、教室にあらかじめ置いてある紙コップに中身のポーションを注いで手渡した。
「すまねえな……こんなんでチーム試験大丈夫かよ……魔法は使わなきゃいいんだけどさ」
「物理攻撃を無効にしてくるかもしれないからね、でもその時は僕がフォローするよ、シモンの背中は僕にあずけてくれ」
「おう、魔法が効かない敵は任せろ!!」
「私達もい」
「ああ、いいですよぉ。男の友情ぉ~」
蚊帳の外に出されそうだったセイカを制止するように言葉を繰り出すユズ。
たまにユズはアルフやシモンが出す男の友情のオーラを見て目を輝かせている。
そういえば、ユズと知り合ったのもこんな感じの会話してた時だなとセイカは思い出していた。
始業五分前のチャイムがあり、三人はそれぞれ自分の席に戻った。
歴史教科担当の教師が教室に入ってきて授業が始まった。今日は現世側の歴史のようだ。