すべては終わったことだから
次の日、荒井の死体が発見された。
検死が行われたが、見事に怪しい点は見つからず、心臓麻痺ということで、幕は引いた。
(悪く思うなよ、荒井・・)
荒井の代わりにチームリーダーになった、山森は、ただ淡々と仕事をしていた。
しかし、一週間後、警察から岸谷に連絡が入った。
出頭するようにしか、告げられず、岸谷は、血の気がひいた。
警察署に、出向いた岸谷は、ある部屋に通された。
そして、担当の警官が言った。
「これから、あるものを見てもらいたくて」
部屋のテレビに映像が写し出された。研究室にいる荒井が映し出された。
(岸谷が倒れる直前に、録っていたものだ!!俺が、どこかに映っていたのか!?)
画面に映像が流れて、荒井が話し出す。
「岸谷、いつも最近、キツいこと言ってすまないな。実は俺、今、開発中の風邪薬の新薬とは別に、以前から、ある難病の新薬に取り組んでいるんだ。それが、実は、お前の奥さんの病気を劇的に良くできると思われる薬なんだよ。それも昨今が、重要な段階なんだ。お前の結婚式に行けなかったことを、今でも悔やんでいるんだ。今から、その薬の重要なところを、ここで記録する。お前が、綾子さんと結婚する前に彼女の写真を嬉しそうに俺に見せて、会社を帰って行った姿が、いつも忘れらない。
この会社で俺たち、二人だけが同期だよな。俺が、綾子さんの病気、良くするのも、運命だったのさ!
では、まず基本的な説明から・・うっ、・・」
画面の中の荒井が、うずくまって倒れた。
岸谷は、震えて泣いていた。テーブルに顔を埋めた。
「岸谷さん、お気持ち、察します・・本当に・・・」
誰かが、何かを運命だと言う時がある。
イイことも、ワルイことも運命だとー。
でも、やっぱり、それを決めるのは・・・.
(終わり)




