ある計画
岸谷には、それに加えて不安があった。綾子の入院費用が莫大だった。今の収入でギリギリな状態だった。
岸谷の焦りと不安から、ある考えが次第に頭を過るようになった。
(新しい風邪薬の完成の功績が、俺だけのものになれば、かなりの金が会社から入るはずだ・・)
荒井チームで開発中の新しい風邪薬の完成は、間近と見なされていた。
荒井は、皆が帰った後に、いつも遅くまで一人で研究を続けていた。
そんな荒井には、一つの習慣があった。それは、栄養ドリンクを毎日、一本、必ず会社で飲むのだ。
岸谷は、それを利用して、荒井を殺そうと考えた。
巧妙に、栄養ドリンクに毒を盛り込み、飲ませるのだ。
岸谷は、そういった致死性のある毒を、警察に検死にも、引っ掛からないものを作れる力が、あった。
そして、今日、岸谷は、それを実行した。
いつも飲む、荒井の栄養ドリンクを、毒入りのものと、すり替えたのだ。
それを、飲んだ荒井を、岸谷は、見届けた。
帰宅時間になった。
まだ荒井には、何の変化もない。荒井は、そのまま、いつものように自分の研究室で残るようだった。
すると、おもむろに、ビデオカメラを設置して何かを、話し始めた。
それを物陰から、そっと見ている岸谷。
その時、荒井は、苦しみ出し倒れた。
それを見た、岸谷は、震え出した。そして、ソソクサと、その場を去って行く。
(これで、風邪薬の功績は、俺だけのものだ。今、あの薬の重要な情報を知っているのは、俺と荒井だけだからな・・)
会社の玄関を出ると息を荒くして、岸谷は、走り去って行った。




