時の流れの中で・・
岸谷は、順調に交際して、綾子と結婚することになった。
そんな時、会社から辞令が出た。
岸谷が、研究チームのリーダーに、抜擢されたのだ。
それを見た他の社員達が、荒井を取り囲んだ。
「荒井、やったな!」
「一緒に頑張っていこうぜ!」
そんな掛け声が飛び交う中で、岸谷は、少し遠くで、それを見ていた。
(同期だが、先を越されな・・あいつ、頑張ってたし、俺は、仕事よりプライベートだから、まぁ、いいか・・結婚するしな・・・!!)
岸谷は、そう思いながら、その場を去った。
岸谷は、結婚式を挙げる運びとなった。荒井にも招待状を出した。
しかし、荒井は、予定では出席するはずだったが、学会に急遽、出なくてはならなくなり、ドタキャンして結婚式には出席しなかった。
それでも、岸谷と綾子の結婚式は、盛大に行われた。
時が過ぎた。
研究室で、岸谷と薬指に指輪をしている山森が、言い争っていた。
「それじゃ、だめだ!もっと他のやり方を考えてくれ!!」
岸谷が言う。二人は、新しい風邪薬を作っていた。
荒井は、リーダーに抜擢されてから頭角を表し、皆に様々なことを指示するようになっていた。
岸谷は、しぶしぶ応じることなった。
帰宅時間になった。まだ残る荒井に何も声を掛けずに、帰る岸谷。
しかし、行き先は、家ではなく、病院だった。
綾子が入院していた。綾子は、岸谷と結婚後に、脳に病気を発病した。
突然のことだった。現代の医学では、まだ治すことが難しい病気だった。
入院は、長期化していた。しかし、綾子は、岸谷が見舞いに行くと元気な素振りをした。
岸谷も、明るく振る舞うが、そんな綾子の優しさが益々、岸谷を苦しくさせていた。




