第47話 自称ライバル、そして武芸団体戦?
新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。
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同じくロボット物です!
「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」
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「姉ちゃん、今日は大変だったんだよ」
「また道場破り?」
「三人もいてさぁ。ちゃんと勝てたけど」
「感心感心。ゼノス兄とヨハンはボクの代理なのに、道場破りになんかに負けちゃったら、とんでもない罰ゲームを食らわすところだよ」
「……姉ちゃんが相手するって選択肢はないの?」
「強い道場破りがやって来たらね」
バウルブルクにあるバウマイスター辺境伯家魔闘流指南役家道場本部には、このところ道場破りたちが殺到していた。
ここは、バウマイスター辺境伯家魔闘流指南役家の実質当主である姉ちゃんが作った道場で、ネームバリューはバウマイスター辺境伯たるお館様のおかげで抜群だから、まあ次から次へと押し掛けてくること。
彼ら道場破りの目的は、僕たちに勝利してそれに取って変わろうとしているか、その実績をもってバウマイスター辺境伯家に仕官しようとしているんだと思う。
ただローデリヒさんによると、道場破りをやろうとする人は基本的に宮仕えに向いてない。
まともな人は、ほぼどこかの貴族から紹介状を貰ってくるからだ。
たまに、姉ちゃんが相手をしたバンみたいな人もいるけど、彼ですらバウマイスター辺境伯家には仕官できてないからなぁ。
ちなみに最初の出会いはアレだったけど、今ではバンも魔の森周辺の道場を統括する師範になっているから。
「とにかく、僕たちに勝てば仕官できるなんて思わないでほしいよなぁ……」
「ふげら!」
「そうだな。突然喧嘩を売る人が、貴族に仕官できるわけがない。どう考えても、ちょっとアレな人という評価を受けるからな」
「こいつら……強い!」
今日もゼノス兄貴と二人で道場破りたちを倒すことに成功したけど、ゼノス兄貴の言うとおりだ。
戦乱期でもあるまいし、道場破りで仕官なんてできるわけがない。
負けて取られた看板代は痛いけど、道場破りに負けても道場は続けられる。
確かに風聞は悪いけど、じゃあ普通の門下生たちが、道場破りに成功した道場の看板だけ持ってる怪しげな武道家に弟子入りするかって言うと……。
たまにそんな人もいるけど、道場破りは強くても素人を指導する能力がないケースも多いし、そもそも流れの武道家について行き、旅をしながら武芸を習いたい人なんてほとんどいないのだから。
みんな生活があるから当然だ。
結局、道場破りにそこまで意味があるのかって言われると……。
なにより僕もゼノス兄貴も他の門下生たちも、あの姉ちゃんに定期的に揉まれているから、それなりに強いんだよね。
「もし道場破りになんて負けでもしたら、あとで姉ちゃんになにを言われるか。むしろそっちの方が怖いんだから」
「だよな。ルイーゼは天才だから困ってしまう」
ゼノス兄貴と、ブライヒブルクの頃から一緒だった師範たちと共に、道場で倒れ伏す道場破りたちを見てそう思う。
姉ちゃんに比べたら、こいつらは全然弱い。
もしこんなのに負けたら、姉ちゃんに怒られるだけでは済まないに決まっているのだから。
「しかし、昨日は三名、今日は四名。急にどうしたんでしょうか?」
「これまでは、月に二~三名ってところだったからなぁ……」
僕とゼノス兄の戦いを見ていた師範に問われるが、急に道場破りが増えた理由はわからなかった。
でもちょっと気になったので調べてみようかな?
※※※※
「むっきぃーーー! ルイーゼのツルペタ娘が生意気な! また私がけしかけた道場破りをぉーーー!」
昔から少しばかり魔闘流の才能があるからといって、また私の邪魔をして!
この私ルリアは、幼少の頃から魔闘流の天才と呼ばれ、今ではジキ男爵家魔闘流指南役家の次期当主夫人となり、跡取り息子も生まれて順風満帆なはずなのに……。
ブライヒレーダー辺境伯家魔闘流指南役家の生まれとはいえ、冒険者になるしかなかったルイーゼと私では比較するだけ無駄な差が開いていた……はずだったのに、いつの間にか竜殺しの英雄であるバウマイスター辺境伯の妻となって、バウマイスター辺境伯家魔闘流指南役家の実質当主ですって!
「チビでペタンコのくせに生意気なのよ!」
しかもバウマイスター辺境伯領内には、これから次々と新しい道場が完成する予定だそうで、それとは対照的にジキ男爵領内で将来道場が増える予定はなかった。
人口が増えていないジキ男爵領内に、これ以上の道場は必要ないから。
当然門下生の数も横ばいの状態だ。
私は常にルイーゼよりも上だったのに、あの子がバウマイスター辺境伯に嫁いでからというもの、なにもかも負け続けている。
「こんなに悔しいことはないわ!」
だから私は、門下生が集めてきた道場破りたちにバウルブルクの道場を襲わせていた。
上手く看板を奪ってきてくれたら買い取って、ルイーゼにこれ見よがしに見せてやるつもりだったんだけど、どいつもこいつもルイーゼの兄弟にすら勝てないってどういうことなの?
「ルリア様、もう送り出す道場破りがいません」
「まだ探せばいるはずよ!」
「いるにはいますが、バウルブルクの道場は嫌だそうです。絶対に勝てないからだそうで……」
「もう! 道場破りのくせに、選り好みしてんじゃないわよ!」
そんなんだから、どこの道場にも雇ってもらえないのよ!
うちの道場でも道場破りを雇うなんてゴメンだけど、せめて私の役に立ちなさいな。
「こうなったら、この私が直接ルイーゼと対決して、どちらが上かわからせてあげるわ!」
「ええっ! 大丈夫ですか?」
「まさかこの私が、ルイーゼごときに負けると思っているのかしら?」
「それは……」
「それは、なんです?」
「ルリア様が、ルイーゼに負けるわけがありません!」
でしょう。
この私が、ルイーゼになんて負けるわけがないのだから。
わざわざ道場破りなど使わなくても、この私が直接ルイーゼを倒せばいいだけのお話。
久々に腕が鳴るわね。
「ルイーゼ! 尋常に勝負!」
「……誰?」
「この私を忘れたのですか? ルリアよ! 一緒にブライヒブルクの道場で修行をした、あなたの永遠のライバルの!」
「そだっけ?」
「きぃーーー!」
「ルイーゼ、昔にちょくちょくあなたにちょっかいかけてきたルリアじゃない。覚えてないの?」
私のことを知っている?
ああ、いつもルイーゼと一緒にいた赤い髪の槍娘……確かイーナだったわね。
「覚えてるけど、ちょっとからかっただけ」
「きぃーーー! あなたは相変わらずね!」
「確かルリアって、どこかの貴族の魔闘流指南役家に嫁いだんだよね? 」
「ジキ男爵家魔闘流指南役家、イサルク家の次期当主に嫁ぎましたの」
「だからちょっとオバさんになったんだね」
「私は強く美しいままです! 逆にあなたは、どうしてまったく変化がないのです?」
あらためて顔を見ると、ルイーゼは以前とまったく変わっていないような……。
相変わらず背が低くて胸もありませんけど。
「さあ? これでもボクは子持ちなんだけどね。ルリアは出産したらちょっと太った?」
「太ってません!」
ルイーゼ、いつもこの私を小バカにして!
今日こそは 私が絶対に勝利するんだから!
※※※※
昔ブライヒブルクの道場に通っていて、いつもボクをライバル視していたルリアという同じ年の女性が、突然ボクを訪ねてきた。
友達じゃないけど、同じ道場に所属していた同門の仲間って感じの関係かな。
ルリアはどういうわけか、ボクをえらくライバル視していて、いちいち応対するのが面倒だったのを覚えている。
それにしてもイーナちゃんって、ちゃんとルリアのことを覚えていたんだ。
ボク、強すぎるからって理由でほとんど道場に通えなかったのに、たまに道場に顔を出すと、いつもルリアが絡んでくるから面倒な人だって思ってた。
ルリアは男爵家の魔闘流指南役家に嫁入りできたほどだから魔闘流の才能はあるんだけど、さすがにボクのライバルにはならないかな。
「ところで、ルリアはなにをしにここまで来たの?」
「ルイーゼ、私と勝負なさい!」
「えーーーっ、 面倒だからヤダ」
「なっ!」
「ルイーゼなら言うと思ったわ……」
勿論、面倒だって理由が一番大きいけど。
なにより今のボクとルリアじゃあ、強さが違いすぎて勝負にならないと思う。
かといって手を抜くと気がついちゃうんだから、本当に面倒な人なんだよ。
「(ルイーゼ、勝負しないと引き下がらないんじゃない?)」
「(そうかなぁ?)」
さすがにここで圧倒的な力の差を見せつければ、ルリアも理解してくれるかもしれないとか?
お互いに結婚して子供もいる大人同士ではあるしね。
彼女が大人になったことに期待して。
「確かに、これまではルイーゼに負け続けていましたが、今の私は以前の私とはまったく違うのです。覚悟しなさいな」
そう言いながらルリアが身構えるけど、そんなに変わったようには思えないなぁ。
彼女にも子供がいるって噂で聞いたから、むしろ出産で体が鈍ってる?
「魔闘流の極意! 閃光飛燕拳を食らいなさい!」
極意といっても、同じ流派だからボクも知ってるという。
やっぱり同門同士の戦いは盛り上がらないよねぇ。
「えいや!」
閃光飛燕拳とは、閃光のような拳を、まるでハヤブサのように繰り出す必殺技なんだけど、ルリアの魔力量と身体能力ではあまり閃光には見えない。
ボクからしたら、スローすぎて欠伸が出る状態ってやつ?
「おっと」
ボクはルリアの必殺技を余裕を持ってかわすと、そのまま側頭部に一撃入れた。
脳みそを揺らされたルリアは、その場から立ち上がれなくなってしまった。
「わずかな魔力で敵の脳を揺らし、その場から立つこともできなくなってしまう。制圧用の奥義ってやつだね」
「卑怯よ! ルイーゼ!」
「勝負に、卑怯もへったくれもないと思うけど……」
「ええいっ! まだ私が負けたわけでは……」
「(出たぁ)」
ルリアの面倒臭いところは、いつも勝負はボクが勝つんだけど、絶対に負けを認めないところだ。
「そうだ! 私もルイーゼも門下生たちに魔闘流を教える立場になったので、勝負内容をそれに相応しいものに変更する必要があるのよ!」
「道場主や魔闘流の師範としての実力を計る勝負ってこと?」
「私たちが直接戦うのではなく、バウマイスター辺境伯家魔闘流指南役オーフェルヴェーク家の門下生と、ジキ男爵家魔闘流指南役家イサルク家の門下生たちが戦って、勝利数が多い方が勝ちという勝負をする! その方が指導者としての実力がわかるじゃない」
「……それでいいと思うよ」
どうせルリアのことだから、断っても絶対に諦めないはず。
それなら、もう一度勝負をした方がマシってものだ。
「では、急ぎ自慢の門下生たちを連れて来ましょう」
「期待しないで待ってるよ」
「必ず連れてくるから!」
本当はこれで諦めて二度と来なくなればラッキーなんだけど、絶対にまた来るだろうから、ちゃんと人を揃えておかないと。
「というわけで、ゼノス兄とヨハン。そしてバンも呼べば完璧かな? あとは……」
「ほほう、ルイーゼとそのライバルであるルリアとかいう武闘家が、選りすぐりの門下生たちを出し合って団体戦をするのか。これは熱い展開だ」
「ヴェル、もしかして楽しみにしてるの?」
「当たり前だ。なんか物語みたいでワクワクしないか? そうだ! この話を流用して『女武闘家リリーの修行旅』の新章に流用しよう」
「ヴェル、まだそのお話続いてたんだね」
「一応ルイーゼが作者ってことになっているんだから、俺とイーナが毎回新しいアイデアを捻り出すのに苦労していることに気がついてくれよ」
早速道場内で、ルリアが連れて来るであろう門下生たちとの団体戦に出場させるメンバーについて相談していたんだけど、いつの間にかヴェルも、とても楽しそうな表情を浮かべながらそれに加わっていた。
もしボクたちが負けるとバウマイスター辺境伯家に不都合があるから、 珍しくボクも真面目にやってるんだけどなぁ……。
「ところで、向こうは何人の門下生を連れて来るんだ?」
「五人だって。ボクは戦えないなら、あと二人だね」
「五対五……。先鋒、次鋒、中堅、副将、大将で戦う熱き戦い。以前敵対していた者も加えるよね?」
「バンがいるじゃん」
その昔、この道場に道場破りに来たバンだけど、今は魔の森周辺の道場を統轄する師範になっているし、強さで言えばゼノス兄とヨハンよりも上だから、当然出場させる予定だけど。
「ルイーゼ、このルリアの他にも、過去に死闘を繰り広げたライバルとか敵はいないのか? そういうキャラが味方として参戦すると、物語としては非常に盛り上がるんだ」
「……いないけど」
「いないの?」
「いるわけないじゃん!」
ヴェルって、ボクの人生についてなにか盛大な勘違いをしているのかな。
ブライヒレーダー辺境伯家魔闘流指南役家の娘が他の武道家と勝手に戦ったり、ブライヒブルクを出て修行の旅に出るなんてあり得ないんだけど……。
「あと二人は、師範の誰かでいいかな?」
三人が負けるとは思わないから、残り二人は強い師範でいいよね。
バウマイスター辺境伯領とジキ男爵領の人口と門下生の数を考えたら、ボクたちが負けるわけないし。
「それが油断なのである!」
残り二人のメンバーを決めて呼び出し、団体戦に参加するように頼もうとしたその時、まるでタイミングを計ったかのようにその人物が現れた。
「導師、道場に来るなんて珍しいね」
「楽しそうな戦いの匂いがしたので、本能に従ったのである! ルイーゼ嬢、某も参加するのである!」
「えーーーっ! 導師が? だって導師は……」
「某、王都でルイーゼ嬢に魔闘流を習ったのである! だから某も門下生なのである!」
「そうなの?」
導師がうちの道場の門下生?
確かに王都にいた頃、魔力で身体能力を強化して戦う導師は強かったけど、魔力を無駄遣いしすぎてすぐに魔力切れになってしまうから、ボクが効率のいい魔力の使い方を教えたのは事実だ。
でも、それでうちの門下生という理屈がわからない。
「導師、ただ単純に戦ってみたいだけでしょう?」
「正解なのである!」
「あの……。もし導師が団体戦に参加したら向こうが驚いちゃうから」
それにルリアのことだから、『ズルい!』とか言うに決まっている。
なにより、『そんな勝ちは無効だ!』とか言い出して、二幕があると面倒だから。
「ならば、これを被るのである!」
「なにそれ?」
「バウマイスター辺境伯が用意してくれた『マスク』である」
「なるほど。そのマスクで顔を隠してしまえば、導師だってバレない……いや、バレるでしょう!」
導師を他の人間に間違える人はいないと思うけど。
「導師、マスクだけじゃ駄目ですよ。当日は服装も特注の道着にします。キャンディーさんにお願いしたらすぐに作ってくれるそうですから」
「バウマイスター辺境伯、 ありがたいのである!」
導師の参戦は、ヴェルが計画したことだったんだ!
自分が原作をやっている物語のネタに使おうとしてるよね、確実に。
「ヴェルさぁ」
「これもルイーゼが、女武闘家リリーの修行旅の執筆を放り投げてしまうのが悪いんだ。続きを楽しみにしてくれている読者のために、ルイーゼは協力する義務がある」
「そうね。私は自分の連載もあるのに、ルイーゼのお話を考えるのは大変なのよ」
導師の参加は突っぱねてもよかったんだけど、女武闘家リリーの修行旅の執筆を放置している件で責められると辛い。
ボクはもう書きたくないし、どうせとゼノス兄とヨハン、バンで三勝するから、もう一勝増えても問題ないよね。
もしかしたら三人の中の誰かが負けるかもしれないから、導師なら確実に一勝をあげられる…… 万が一に備えておこうかな。
対戦相手はちょっと可哀想だけど。
「マスクと道着でちゃんと変装するのが条件だね」
「『謎のマスクマスター』という名前にして、極力正体を隠すから大丈夫だよ。武闘家の世界なら、導師くらいの体格の人は珍しくないでしょう?」
「 そうでもないんだけどなぁ……」
武闘家って、割と細身の人が多いから。
導師みたいに魔力で身体能力を強化できないとスピードが落ちちゃうから、鍛えても筋肉量を増やし過ぎないようにするんだよねぇ。
「で、五人目なんだけど」
「ヴェル、また誰かにマスクをつけて割り込ませるの?」
「正解でーーーす! 見てよ、この仮面。実はキャンディーさんに特注で作ってもらったんだ。『死の仮面』参戦!」
そう言うと、ヴェルは魔法の袋から取り出した仮面を自分の顔に装着した。
「えーーーっ! ヴェルも出るの?」
「俺も王都で導師と修行していた時、ルイーゼから魔闘流の基礎を教えてもらったじゃないか。 つまり俺も門下生のはずだ」
「……ヴェルって、こういうの嫌いじゃないの?」
王都で開催された武芸大会だってヴェルは嫌々出てたのに、どうして急にやる気を出したんだろう?
「王都の武芸大会は魔力使用禁止だったけど、この団体戦は全力で戦えるじゃん。つまり、俺でも勝てるってことじゃないか」
「……まあヴェルなら負けないよね」
ヴェルの魔闘流の腕前というか武芸全般微妙だけど、魔力量が膨大だから、それで 身体能力を強化すれば ゴリ押しで勝ててしまうんだよねぇ。
それになんだかんだいってヴェルも実戦経験豊富だから、ルリアが集めた普通の武道家じゃあ勝てないと思う。
「女武闘家のリリーが、以前倒した女性武道家の逆襲を受けるのだが、なんと向こうは卑怯にも多くの仲間を引き連れていた。五対一という不利な状況に追い込まれたリリーだが、そこに以前戦ったライバルたちが助っ人に現れるんだ。こうして五対五の戦いが始まるわけなんだけど……」
ヴェルは今回の団体戦を、女武闘家リリーの修行旅、最新刊のネタ作りに利用する気満々なんだね。
ほぼ負けることはないし、ルリアってあまり可哀想に思えないから別にいいけど。
「それじゃあ、先鋒がバンね」
「ルイーゼ様、最初の勝利はお任せください」
「次鋒がゼノス兄」
「ルイーゼ、俺がこういうことを言っていいのかわからないけど、向こうがあまりにも哀れなんだが……」
「ボクもそう思わなくもないけど、最初に勝負をふっかけてきたのは向こうだから。中堅はヨハンね」
「僕が一番負けそうだから、負けないようにしないと」
「ヨハンが負けても、ボクたちの勝ちは揺るがないと思うけど。副将は導師ね」
「謎のマスク武闘家として頑張るのである!」
「導師、ほどほどに手加減して、大怪我させないようにしてくださいね」
「もしそうなったとて、エリーゼがいるから問題ないのである!」
「導師、 対戦相手を大怪我させることが前提なんだね……」
ボクたちが不必要に怖がられるから、絶対にやめてほしいんだけど……。
「大将はヴェルね」
「……任せるがいい、借りは必ず返す」
「……」
借りってなに?
そういうキャラクター設定なの?
気にすると負けだからスルーすることにしたけど、こんなふざけた人に負ける対戦相手が不幸というか。
でもヴェルはバウマイスター辺境伯でとても偉いから、ボクも参戦を断れなかったんだ。
だからもし全敗しても、ルリアはボクを恨まないでね。
「一秒に十発の突きを繰り出せる『神速のアルタ』が、ルリア様に勝利を捧げましょう」
「バウマイスター辺境伯家は大物とはいえ、魔闘流指南役オーフェルヴェーク家は創設されたばかりで門下生の層は薄い。岩を砕く鉄の足を持つ『鉄脚のサゼン』に挑む奴は不運ですな。肋骨数本程度で済めばいいのですが……」
「ルリア様、バウマイスター辺境伯家の連中に勝利できれば、ジキ男爵家と、イサルク家の名も大いに広まり、多くの門下生たちが集まってくるはずだ。可哀想だが、派手に負けてもらわないとな」
「しかし、ルリア様は策士ですな。強いルイーゼを戦わせることなく、我らが勝利する策を思いついたのですから」
「我らジキ男爵家魔闘流指南役家イサルク家の門下生が、バウマイスター辺境伯家の田舎武道家たちに負けるわけがない。向こうはどのような山猿どもを出してくるか。楽しみではないですか」
さすがはこの私が選んだ精鋭たちね。
彼らがルイーゼの目の前でその門下生たちを完膚なきまでに打ち破り、大いに悔しがるところを見るのが今から楽しみだわ。
そしてこの私ルリアこそが、ルイーゼよりも優れた魔闘流指導者としてヘルムート王国中で評価されるようになるはずなのだから。




